2019/05/03 のログ
テリス > 「うるせー。何かあったら寝ざめ悪ぃだけだよ。」

善人、との批評に照れ隠しなのが口をとがらせるようにそう言った。
隣に並ばれても、見上げる事はなくぷいっとしたものだ。

「…ガラの悪い連中は俺みたいなのは屁とも思っちゃいねぇよ。
本気になったら、だけどな。」

絡むと面倒なヤツ、くらいの認識はあるだろう。
妙な情報を流されるとか、要らん情報を仕入れてくるとか。
肉体面はともかく、暮らす上で面倒、というレベルだ。

「やめろって。そういうのいいからよ…。」

身を寄せられれば内心ドキリとする。
なんかいい匂いするし。ちょっとくらっときた。
しかし、自分のようなものとは違うのだ。関わるのは最低限…と考える。
顔が赤くなっているのだが、照れ隠しに少し速足で半歩先を行くように歩き始める。

ミラ > 「そこで、寝覚めが悪いと感じる感性が善人だと思うのだが」

自分と係りのない事だと切って捨てるなら俗人。むしろ、何か起こそうとするなら悪人。
そのどちらでもなく、気にしてしまう時点で善人だろうにと、どこか初心な少年の反応に口元をにやつかせる。

「ふむ? その気になればどうとでも、ではあるがと」

本気になったらと、但し書きをつけた時点で少しばかり興味を引かれた様子で少年を眺める。
何も考えずにぷちっと潰せる羽虫レベルよりは上の扱い。そうさせるだけの何があるのだろうと、観察する目線を送るが、人外の気配を特に感じるでもなく。そういう方面でなければ、何であろうかと小さく首を傾げ。
バックが面倒なのか、何かしらの特技があるのか。本腰を入れればすぐに潰されるレベルなら、それも特筆するレベルではないのであろうと思えば、向ける興味も問いたてるまでには至らず。

「……かわいいな」

普段、身の回りに居るのが王国の腐った連中ばかり。少年の初心な反応が新鮮味を感じさせて、口元が緩むのが抑えられず。ぽつりと呟き。
こういうのを自分の色に染めたり。色に狂わせたりするのはひとつの愉悦ではあるのだが。ここまで初心だと、あんまり色仕掛けで押して、からかうと引かれてしまいそうである。

「せっかくだから、名乗っておこう。わたしはミラだ。少年の名は?」

これもひとつの機会。縁のひとつでも結んでおくかと、名を名乗り。

テリス > 「………。…そうかもしんねぇけど。あんま言いふらすなよ。」

少しの間。ちょっと考えたらしい。
自分で善人というつもりはないが、そういうならばそうなのかもしれない。
利用しようとか放置しようとか思わないのは確かだからだ。
まぁ、それを広められるとそれはそれで困るわけだが。情報屋として。

「…こんなトコに住んでんだ。色々あるさそりゃー。」

内容が気になっているような女性の言葉に、
はぐらかすような言葉を添えて返した。ついでに、指をさす。

「ここからちょっとだけ真っ直ぐいけば平民区だ。
そこから王城までは道は広いし一本道だよ。」

凱旋とか遠征とかパレードとか色々あるしな、とぼやく。
自分にはあまり関係のない事なのだ、という風情。
そんな事を言っていたから、女性の呟きは聞こえていなかった様子だ。
…一応、初体験は済ませているのだが、だからと言って女性慣れしている風でもなく。

「……ん。忘れなきゃ覚えとくよ。
……俺はテリスだよ。でも、名前なんてどうでもいいだろ。」

名前を聞かれたので、返しておく。
向こうから名乗ったのだから、ちゃんと応えるのが礼儀だろう。
ただ、これ以上の関係になるとは思ってはいなくて。

ミラ > 「箔付け……は違うか。恰好つけとか、そういうのだろう。わかってる」

善人名乗って貧民地区に住んでもよい事はない。悪党なくらいでちょうどだろうと思えば、わかってるとばかりに頷き応え。
そもそも、言いふらすほどに相手が。貧民地区の知り合いがいるわけでもないし、大丈夫だと安心させにかかり。

「その色々に興味を引かれるところではあるが。それを訊くのはまたの機会とするか」

指さす方向を眺めて、なるほどなと頷き。改めて少年へと向き直り。
自分を意識させるために、軽く意識を揺らす程度に己の権能でもって魅了を仕掛けつつ言葉をかける。

「道案内をありがとう。これでも、借りは返す方だからして、わたしの名を出せばそれなりに対応するように根回ししておこう」

名を出せば、自分のところまで通すぐらいには話を通しておくと。今回の礼に何かしら求めるのなら、コネなり金銭的な何かなり。用意立てしようじゃないかと、次に繋がるネタ振りをし。
それでは、道案内ありがとうと少年の指さした方向へと歩み出す。

テリス > 「…。」

情報屋としてナメられたくないんだけどな、と内心思った。
まぁ、それでいいやとも思ったので訂正はしないでおく事にする。

「運よく…悪くか? まぁ、また会ったら…………。」

また会ったらな、と言おうとした。
言おうとして彼女を見た瞬間。ふうっと何か吸い込まれるような感覚があった。
ぼうっと女性を見つめながら、ミラ、という名前が深く意識に刻まれていき……。

「…っ。…や、別に。礼なんかいらねーよ。」

はっ、と気づいた折にはいつものぶっきらぼうな言葉遣いが出てきていた。

そして、去って行く女性の背中を見送り、少年も貧民区へと戻っていく。
…何故だか、女性の名や姿がよく浮かぶようになった自分を不思議に思いながら…。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からミラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からテリスさんが去りました。