2019/04/12 のログ
ジナイダ >  ――衝撃が突き抜けていく。
 馬車にでも轢かれたかのように大柄な男が水平に吹き飛んでいくと、扉をぶち抜いて廃屋の中に飛び込まされた。

「ふぃー………これで最後かぁ?」

 背中を向け体重をぶつける変則的な体当たりをした人物は、額から伝う汗を手袋で拭いながら息を吐いた。
 貧民地区は治安が悪い。平民地区もそれはそれで治安が悪いご時勢だが、貧民地区と比べたら雲泥の差であろう。
 小柄で、観光客よろしく辺りをうろうろしていたのが悪かったのか、絡まれたのだ。
 片っ端千切っては投げ、千切っては投げしているうちに目標はあと一人となった。
 そしてその一人も、廃屋に叩き込まれ気を失ってしまっているようだった。

「起きてっかー? 起きてねぇか。じゃ、貰っておくぜ」

 床で伸びている大男に寄っていくと、懐を探り始める。
 財布を抜くと中身を数え始める様はまるで強盗だが、むしろ逆なのだった。

ジナイダ > 「しけてんなー……気の毒になるわお前。こんなんじゃ酒買ったら終わりじゃねーかよオラァ!」

 財布の中身は、荒地に生える枯れ木のようなものだった。植生が完全に死んでいる。一本もといコイン一枚抜いただけで、財布ではなくなってしまう。
 苛立ち隠せず男の膨れた腹をぱしんぱしんと叩いてから、あたりを見回す。丁度良いところに木箱があったので、男を背後から引っ張っていくと、中に叩き込んだ。

「次はもうちょい気張れや」

 煽るのも忘れずに。

ジナイダ > 「何人ぶん殴った? 覚えてねーけど報酬ナシってつれーな……はぁぁぁぁぁ! くそくそ!」

 貧乏人ばっかだと、現在硬貨一枚も所持していない貧乏人が吠える。
 廃屋を後にすると、歩いていく。

「おら!」

 意識を取り戻したらしい一人が後ろから殴りかかってくるのに合わせて回し蹴りをぶち込みながら。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からジナイダさんが去りました。