2018/07/16 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区闇市場」にディールさんが現れました。
■ディール > 「………………。」
『眠り粉をくれ。』
「200ゴルドだ。」
貧民地区は隠れ蓑としては便利だ。何故なら治安が悪く、いかがわしい取引等数多く溢れている。
堂々と闇市場が開かれても騎士や自治兵が介入してくる事は少ない。
その市場の一角に店を構えているのは半端な魔族が開く薬物専門の店。
毒物、媚薬、劇物と言った類から、それらを塗布し、あるいは浸み込ませた縄や刃物まで販売している。
表向きは薬草販売所を装っているが、貧乏な貧民が多い地区で薬草に割ける金など殆ど無い為、気がつく人間は気がつく。
これは裏の店であり、全うな道を踏み外したくないなら近寄るべきではないのだと。
「人間相手なら水に溶かして服用させれば良い。人間よりも厄介な相手なら、粘膜に吸わせろ。良い夢は見れるだろうさ。」
薬としては厄介な睡眠薬。即効性が強く無味無臭。難点を上げるなら粉末の粒子が軽いために、風で容易く飛び散ってしまう事か。
水に溶かして飲ませれば人間なら数時間。粉のまま服用させれば龍だろうが大型魔獣であろうが1日は昏倒させる程に効果が強い。白い粉が包まれた紙を手渡し、引換えに代金を受け取っていた。
薬物を使った安易な犯罪が増えれば増えるほど。自分の様な悪人は動き易くなり、更に人が人を憎む好ましい循環も生まれやすくなる。
■ディール > 金にはならない。だが、金など幾らでも入手が出来る。
ある者は媚薬を求めてきた。ある者は劇毒を。
裏稼業に身を置いていると思わせない為の、貧民地区に馴染んだ服装ではない。明らかに高貴な身分から命令を受けたのだろう、従者と思しき者は痺れ薬を刃先に塗りこませたナイフや鋲を。
購入した人物に興味は余り持つ事が無い。そして販売した薬物がどう使われるかなど更に興味の外だ。
「媚薬は耐性と中毒に気を付けろ。」
「皮膚に触れれば劇毒は肌を焼くぞ」
購入した相手がヘタを打って捕まってもかまわないが、それでは憎しみの連鎖は生まれない。
だから最低限の注意だけは告げる。確実に自分の販売したものが自分の望みを満たす為にだ。優しさや気遣い等といったものは無い。
其処にあるのは性欲とも違った自らの欲望を満たす為だけの意識だった。
■ディール > 自分の店は粗末な天幕のついたバラックの様な物。
棚の上には届出通りに薬草が数種類並ぶ。但し、訪れる客は皆それらではない物を注文していく。
その度にマントの内側から。棚の下から。或いは足元から。
種々様々な毒物媚薬劇物を取り出し、気軽に売り渡していく。
自分自身はこれらの毒物には耐性が多少なりと出来ている為に、気楽に懐に入れて持ち歩くことも出来る。
子供が相手だろうと。子供が親を殺した相手を殺す為のものを欲しがるなら気楽に売り渡すだろう。
「おい、ガキ。ナイフには刃先を掠めさせるだけで十分な毒がある。無理に刺そうとするな。皮膚を軽く傷つけるだけで良い。お前が心を傷めることはない。相手が先にお前の心を踏みにじった事。幸せな家族を破壊したこと。親を殺し、二度と会えなくした事を忘れるな。」
稀にある復讐の心が萎む事を回避させる為の諫言だ。
そう、相手が悪いのであって犯罪を犯す少年が悪い訳ではない。
復習と言うのは当然の権利ではないか。親殺しをするような相手に情けをかけても親は戻らない事を言い聞かせた。
本来の売値の1割以下で子供に二度と戻れぬ道を歩ませる為のモノを売り渡す。良い目をしていた子供だ。アレは先があるなら、それなりに良い裏稼業の人間になるだろう。
■ディール > 注文を受けていた分は捌いた。後は自らの正体がバレない内に逃げるべきだろう。
変にかんぐられても疑われても面倒だ。
薬草は棚の上に残したままでバラックの奥に姿を消していく。
そのまま店主が戻る事無くその日の闇市の営業は終了を迎えていた。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区闇市場」からディールさんが去りました。