2018/06/27 のログ
ジェルヴェ > (自然と口元に薄い笑みが浮かんだ。
特集を組まれているわけでもなく、連なる他の店や娼婦の名のうちの一つに過ぎないが、良く知る常連客の努力の証だ。なにか喜ばしいことがあって、それを抱え楽しく呑んで帰ってくれたのも有り難い。
この通り一見開いているのか分かり難い、名もない看板を背負った空き家のような店である。

カウンターに半身を軽く預け、薄く表情を和ませながら何気なくそのまま次のページをめくった。
引き続き話題は娼館らしい。過去に巷の男達を賑わせた娼婦達の逸話と思い出が綴られている。
筆者は間違いなくおっさんだ。そんな風に想像しながら、記事へ斜めに視線を走らせてゆき)

ジェルヴェ > 「――――…、…」

(不意に目が留まる。誌面のどこか、開いたページを押える指先が見止めた瞬間に僅かに動いた。
数秒間、もしかしたらもう少し長かったかもしれない。文章を追う視線が似顔絵のカットへ移り、伏せられた瞼に覆われる。
幾らか遅い瞬きに合わせ、翻すように閉じた冊子はカウンターの奥、作業の邪魔にならない場所へ追いやった。

読書に耽っている場合ではない。うっかり飲みに繰り出したくなる前に中断させていた片付けを進めなくては。
いつの間にか緩みのなくなった顔を壁の掛け時計へ。時刻を確認し、それから店主は淡々と仕事に就いた。

今夜は充分賑やかだったので、もう客は来なくてもいい気がする。若干抱えていたそんな怠惰な思いを反転させて、差し当たり今すぐ賑わえばいいと。
身勝手な店主の願いは叶ったか否か―――)

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からジェルヴェさんが去りました。