2018/06/26 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にジェルヴェさんが現れました。
ジェルヴェ > 「あー、ハイハイ。気ィつけて帰れよー」

(夜道へ消えてゆく三人組の女。両脇で千鳥足を支える二人と真ん中の酔っ払いの背が遠退いてゆくのを見送って、店主の男は押えていたドアを潜り店内へ戻っていった。
つい先程まで騒々しかった店はしんと静まり返り、訪れた平和の代償として使用されたジョッキグラスと食器が三人分、カウンター席に並んで残されている。

―――これを、片付けるのか。一人で。

頭の中でそう呟いた途端、漏れそうになった溜息が店の外から聞こえる遠い騒ぎ声によって塞がれる。見送った三人娘の愉快で珍妙な奇声だった。
釣られて溜息の変わりに声もなく笑う。何事か叫ぶように会話しているらしかったが、もう店の中では内容は聞き取れない。
カウンターからトレイを持ち出すと、後に残された食器類を引き始めた。今夜は客が引くのも早い。)

ジェルヴェ > (硝子や陶器が雑に合わさる耳障りな音も気にせず、グラス三つは広げた指に取っ手を絡めてトレイの上へ。灰皿と食器は、もう面倒臭いので一つに重ねて詰み上げ、それも一緒に。
トレイをカウンター席の隅に追いやり、汚れた卓上をクロスで拭いてゆき)

「………ばさ?」

(ばさ。足元から唐突に、紙の束が落ちたような軽い音がした。
首を捻り下を向く。
あちらこちらを自由に向いた三つのスツールのうち一つの脚の上に、見慣れない冊子が落ちているのが見えた。
湿ったクロスを滑らせる手を止め拾い上げると、表紙で持ち主と内容を把握する。
王都内。夜の街に輝き犇く数多の店の紹介を載せた、大衆向け情報誌。帰っていった三人娘の忘れ物だろう。)

ジェルヴェ > (何となく、仕事の手を休めたまま拾い上げた冊子のページをめくる。ぱらぱらと安い質の紙を送っていくと、厚みのない冊子の中程あたりに差し掛かったところで、見知った字面が目に飛び込んで来た。
先程の三人娘のうち、一番泥酔していた女と所属する娼館の名前だ。

ああ、それでか。普段にも増したハジけ具合を思い出し、店主は一人納得する。
評判にしても店側から金を積んだにしても、こうした案内に紹介記事が載るのはそれなりに名誉なことだ。添えられたコメントを読んでみれば、容姿やら接客態度やら、中々褒められてもいる。)

「…あー。これは、
 嬉しかったんだろうなぁ」

(しっかり誌面を広げて眺めぽつりと呟く。今思えばあの泥酔っぷりも微笑ましい。騒ぐ絡む揺れる歌い出す、酔っ払いの奇行見本市のようだったが。)