2018/06/05 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にジェルヴェさんが現れました。
ジェルヴェ > (半ば無理やりに馴染み客を追い出して、今夜は普段より早めの閉店作業。
はっきりと営業時間が決まっているわけではないが、客入りがあれば通常は明け方か、まっとうな人間が起床し行動を始める時間まで開けている日もある。

Bar『 』。掲げた看板に店名はない。メニューもない。店員はイマイチやる気を感じない男一人だけ。つまり華もない。
場末感が過ぎる酒場だが、それでも意外と利用客は多かった。内訳はほぼ全員が固定客、昔馴染みの連中ばかりだとしても。)

「………あー…」

(一昨日は娼婦の友人が昼前まで滞在していた。思えばそこから雲行きが怪しくなった気がする。
酒を煽っては吐き出されてゆく愚痴を聞き、なだめ、やっと家路に着かせたその日の夜には別の常連。
長い付き合いのある知人で、彼もまた一度飲み始めると長い。
寡黙にちびちびと酒を楽しむ類のひとだから、珍しく気を遣いすぎたのだろう。大いに疲れた。

―――そんなわけで。たった一人の店員はただいま絶賛寝不足中だった。
手にしたモップの柄の先に額を預け、項垂れながら呻いた声が静まった店内に響く。
今夜は早く寝よう。そう決めて昔馴染みを閉め出したまではいいが、気が回っていないらしい。扉に掛かるプレートは、営業中を示す案内のままだ。)

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にノアさんが現れました。
ノア > 読心術 ? 千里眼 ? 何処かで耳にした事くらいはあるけれど、当然そんなモノ会得していない。だから店内の様子は勿論、店主がどんな状況でどんな精神状態かなど知ったこっちゃなく

「 ただいまぁー♡ 」

営業中を示すプレートが掛けられた扉を、いつも通りのテンションで ── 否、既に何処かで引っ掛けて来たのか ほんのり酔っている分、いつもより高めのテンションで扉を開け放ち

「 ………ん、誰か粗相でもしたの ? 」

嵐、入店。つかつかと華奢なヒールで歩み寄ると、店主の手にしたモップを見て不思議そうに小首を傾げる。そう、悪気なんて微塵も無い。至って無邪気に。

ジェルヴェ > (なぜ子供の頃に、立ったまま寝るという技を習得なかったのだろう。今自分にとって必要なのは鍵開けのスキルでもスリの手法でもなく、この姿勢のままで眠れる特技だ。
きっと修練度が足りていない。寝てしまいたい思いは充分だったが、体を握り締めたモップの柄と、そこへ当てた額とだけで支えるには無理がある。

ならば出来ることはただ一つ。簡単に掃除を済ませ、早々に自室のベッドへ沈み込もうと決意を新たに)

「………ああぁー」

(―――したが、一瞬で遠い彼方に消し飛んだ。
ドアベルと共に入り込んできた声が、ある人物の入店を知らせる。
更にがくりと肩を落とし、殆ど腰を追った姿勢で男は立てたモップにすがり付いていた。悲嘆に暮れた声を絞りながら。)

「すみませんーお客様ー、今日はもー閉店なんですー。
クローズって書いてあったろお客様の目は飾りか何かですか!」

(天真爛漫な問いかけが寝不足の体に突き刺さる。男は顔を上げないままだった。確認せずとも、誰かは分かる。
わざとらしい敬語で矢継ぎ早に言い放つあたり、まだ気付いていない。案内を裏返し忘れた、致命的ミスを犯していることに。)

ノア > 「 ん ? 」

何だか、死にそうな声が聞こえる。彼をこれほど弱らせてしまう程、今夜の客は "派手な粗相" をかましたのだろうか… とにかく、

「 何言っちゃってんです、 思いっきり "営業中" になってますけど店主様ー ? それとも宝玉の装飾品みたいに綺麗な瞳だね、的な新手の口説き文句のおつもりですかー ? 」

目には目を、態とらしい敬語には態とらしい敬語を。つらつらと生意気な言葉を言い放ちつつも、こんなにくたびれた姿を見せられては流石に心配。それくらいの良心ってやつはある、つもり。まさか原因が自分だなんて、少っっっしも気付かぬままに

「 そんなに疲れてんなら、早めに店閉めて休めばいいじゃない。もしかして… 今月赤字とか ? 」

溜め息混じりにそんな台詞を、まるで小姑のような口振りで言ってみせる。寝る前にもう一杯… なんて思い脚を運んだけれど、いつものカウンター席に腰を下ろすのはやめて。くるりと踵返せば、プレートを裏返しに扉へと向かった。

ジェルヴェ > 「おいおいチビちゃん笑わすなよ、お前口説くほど俺は落ちぶれて……うっそマジで?」

(額へ木の棒を擦り付けながらせせら笑って、いつも通りの臨戦態勢。が、軽口の応酬は始まる手前で突如終息した。
聞き流した彼女の言葉の前半を、時差を経て理解に至る。同時に上げた頭を振り向かせると、見慣れた顔と目を合わせた。
目を丸くさせ、訝しげに眉を寄せる。無意味に彼女を見詰めながら、必死でおぼろげな記憶を辿った。

まず、追い返した。えらく文句を垂れていたが気にせず、むさくるしい男三人を店の外に押しやって、見送りもそこそこに踵を返す。
そして店に入って、掃除を始めようとモップを手に取りなぜ立ったまま眠れないのかと馬鹿げた自問自答を―――プレートは、営業中のままで。

移動する彼女の後に続いて出入口まで歩いていく。
彼女が扉を開ければ、すぐ後ろに立ち彼女の後ろから覗き込むようにして、表の板切れを確認しようと)

「…あー、本当だ。忘れてた。やだうっかり。
 ちょ、くるっとしといて。もうこれ以上うるせぇの増えたら俺泣いちゃう」

ノア > 「 …………… 」

今夜もまた、 "チビちゃん" 呼ばわり。かれこれ10数年呼ばれ続け、正直言い返す気も起きないくらいに呼ばれ慣れてしまったけれど… 一体、あと何年続くのだろう なんて。不服そうに目を細め、ジトリと見詰め返すくらいはしよう。

とにかく、今日のあたしは優しさで満ち溢れているわけで。これだけ疲労困憊といった様子の彼を相手に、キャンキャン噛み付いたりもしない。うん、大人。扉を開けて、言われた通りにプレートを裏返す。大人。

「 はい、 くる… っと。何だかよくわかんないけど、よっぽど疲れてるみたいね……… ん ? 」

"これ以上増えたら" とか聞こえた気がしたけれど、きっと気のせいだろう。ほんの少しの違和感を感じつつ店内に戻り、再び貴方へと歩み寄れば

「 ………ん。」

決して柔らかな笑みを浮かべる訳でも労りの言葉を掛ける訳でもなく、ただ "そのモップを寄越せ" と手を差し出した。

ジェルヴェ > (頭一つ分以上の身長差。彼女の頭上から覗き見たプレートがしっかりと裏返しになるのを確認し、自覚する。相当眠かったらしい。
しかしそれもさっきまでの話に、たった今、なった。不意の驚嘆は下手な眠気覚ましより効果を発揮する。持続性は怪しい所だが。)

「いや、疲れてるっつーか。昨日と一昨日寝てねェんだ。
 だから元々今日は早く閉めるつもりでいたんだけど」

(扉が閉まるのに合わせて身を引き、欠伸をしながら男は壁沿いへ。
一緒に引き摺ってきたモップの柄に片腕を乗せ彼女の言葉に答えつつ、幾らか眠気の遠のいた頭で考える。
凡ミスが招いた予期せぬ客、ではあるものの。前向きに捉え続けようとした言葉は、差し伸ばされた彼女の手により切り上げられて)

「まァでも、お前ならテキトーな扱いでも許されるし、不幸中の幸いってことで……、…なに。
 …これ?ハイ」

(白い手を怪訝そうに見詰め、次に相手の顔へ。意図が汲めず疑問符を浮かべ眉を寄せるが、深く考えずそのまま彼女へとモップを手渡した。)

ノア > 「 そんなに寝ないで何してたの ? 」

まぁ彼の事だから、自らの欲の為に寝不足になったとは考えづらい。大方断り切れない何かに付き合わされていたのだろうと推測しては、大して問いただそうともせず モップを受け取って

「 テキトーな扱いでも許されるか許されないかは、ソッチじゃなくてコッチが決めんのっ ! もう… 今日は出血大サービス、手伝ってあげる。お陰様でこーゆー下働きは仕込まれてるしねー 」

可愛いげのない口振りはそのままに、貴方の手から半ば奪い取ったモップで手際良く床掃除を始める。酔いはとっくに覚めていた。現在の見た目ではあまり似合わない清掃作業も、かつての経験のお陰でいくらか様になっているかもしれない。フロアの隅から隅まで、四隅もしっかりと、腰を入れて磨いてゆくと

「 ………ふ 、ぅ… 」

数十分後には、床掃除の他 テーブルやカウンターの拭き掃除などの簡単な清掃を終える。その他の業務は専門外だから、下手に伝票など手を付ければ返ってややこしい事になりかねない為

「 サービスはここまで、 ここから先は有料になります♡ もう "若くないんだから" ちゃんと休んでよねー 」

そんな皮肉を折り混ぜながら、 手を洗い 髪を手ぐしで整え、 さっさと帰り支度を。

ジェルヴェ > 「……あれ。
 えー…?」

(引っ手繰られたモップ―相棒―は、彼女の手によりやっと本来の存在意義である清掃に使用され始めた。
その様を見て深く横へ傾いていく頭。随分と意外だったらしい。よもや、来たる嵐が恵みの雨だったとは。
彼女の厚意をただただ「解せない」といった具合にその場で眺める男は、それでも数分後、作業が本当に手際よく進められていくのを見ると、カウンターのスツール席に傍観の場所を移し、呑気に相手の動きを目で追った。
彼女の靴のヒールの音が店に響く。てきぱきとした所作に合わせ、あちらからこちらへ移動していくそのたびに。

途中、ただ眺めているだけでは暇なので、下らない軽口で邪魔をしたかもしれない。「お前何しにきたの」とか、「家政婦さんかな?」とか、「ちょっとここまだ汚れてるじゃない」とか。姑ぶったコメントも混ぜておいた。

手伝う素振りを見せる前に掃除が終わってしまうと、本当にただ野次を飛ばしていただけになってしまった。使った道具を片付け手洗いまで済ませ、帰ろうとする様子の彼女に眉を寄せて小さく笑う。
肩を揺らし声を弾ませて―――向かってきた揶揄は多少聞き捨てならないが、ひとまず受け流すことにして)

「馬鹿。マジで何しに来たの。
 いーよ、ここ座れ」

(指したのは自分が座っていた席。代わりに男はスツールから腰を上げ、カウンターの中へと向かう。
―――適当な扱いで許されるかどうかは、確かにこちらが決めることではないのかも知れない。
まあ、一杯くらいなら。幾らか冷めた眠気の礼に。そんな心地で。
今日最後の客へ酒を用意する素振りは―――やはりやる気を伺わせない適当なものだっただろう。)

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からジェルヴェさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からノアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2・繁華街の片隅」にブレイドさんが現れました。
ブレイド > 繁華街の片隅。設えられた長椅子に座る少年は屋台で買った串焼きを貪りつつ
楽士の奏でる曲を聞いていた。
楽士の前に置いてあるおひねり入れに小銭をぽいっと投げ入れて
次の曲をまつ。

「できりゃ明るい曲で頼む」

流石にこんな陰気な場所で湿っぽい曲を聞く趣味はない…
というか、そういう気分でもない。
人混みを避けたかっただけなのだし。

ブレイド > 曲がやや穏やかになる。
明るい曲…というわけではないが、耳に心地いいというやつだ。
食べ終わった串を咥えながら、町並みを眺める。
繁華街というだけあって、賑やかかつ明るい。
貧民地区にしてはだが。

「まったく…」

人波を眺めながら、ぼーっとしている。
時間が流れるのが遅く感じる。
まったく、退屈は人も殺すしネコも殺す。