2018/01/28 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にスフィアさんが現れました。
スフィア > 歓楽街の片隅、安酒場が犇めき合うように並ぶ通りの裏手の方で女の悲鳴が鳴り響いた。
それはさして珍しい事ではない、むしろ貧民街では日常茶飯事といっていい。
日常を彩りすらしない、ごく有り触れた一場面を切り取ったに過ぎない事だ。

「………っ…、……」

薄暗い路地。
叫び声をあげた張本人である女は、座り込んでいる。
チュニックの胸元を開いていた誰かが、獣のような敏捷さで逃げていってしまってからも、暫くの間動けずにいた。
驚きに浅くなった息を深い呼吸で整えてから、下着から零れた白い胸を掬い、着衣を整える。

「パンツ…は、はいてる。…未遂かぁ、よかった…ええと、何だっけ。
 ……そっか、酔っ払って寝てたんだ……バカすぎる…」

そして、誰かが酔い潰れたか確認している所で目覚めたという顛末を理解し、長い息を吐く。
自業自得の四文字が重くのしかかるのを感じながら、カシュクールの胸元を何度も直して立ち上がった。
もう整っているのに、ショールをきつく巻き直す。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にアリルネージュさんが現れました。
アリルネージュ > こつんこつんと裏路地を歩いていく。
大通りを歩いてもよかったが、そういう気分でもなかった。
ついでに食事…淫魔のソレにありつければ尚よしと思っていたものの、響いてきたのは悲鳴である。
何にせよ貧民地区。別に目立った事でもないのだが…。

「…。」

脇を脱兎のごとく逃げていった人影を横目で見送る。
別に興味はない。
ただまぁ…逃げるくらいなら襲うなどしなければよいとは思った。

わずかに足を止めた後に、根性無しのたどってきた道を無造作に歩いていく。
誰かと興味を持ったわけではなく、単に通り道だっただけの事。
どうやらそれらしき女性を認めれば、近くまでやってくるとじっと視線を送り。

「災難だったわね。」

と甘やかな声が、短く社交辞令的に言葉を投げかける。

スフィア > 水中を揺蕩うような酩酊による浮遊感は消えていた。
かわりに深酒をした後の茫洋とした、五感が冴えてるような鈍化したような奇妙な心地に強く支配されているのを感じる。
嗅覚と聴覚は冴えているのに、思ったほど目が働かない。夜、薄暗い場所にいる事を差し引いたにしても。
だから、硬質な靴音にはすぐ気付いたが、柔らかいシルエットが視認できるようになるまでには少々のタイムラグがあった。
かけられた言葉に、生白い頬に紅葉が散る。含羞を隠すように、あわただしく笑みを浮かべて。

「……飲みすぎちゃって。バカすぎまして……」

猛省の勢いのままオーバーになった表現。
輪をかけて雑な言葉は、適切な距離を保った相手に返すには不適切ではなかったかと、それが口から放たれてしまってから思った。
着衣を整えたことを、襟元に動く手で無意識に確認しながら、知らない顔をひと呼吸おいて見つめ返す。

アリルネージュ > 目の前の女性が襲われたのは間違いはない。
ただあまり衣服に乱れは見られない事から、未遂で終わったのだろうと考える。
羞恥に頬を染めつつも、女性がこちらを見て来れば、
フードの下から覗く白銀色の唇がうっすらを笑みを浮かべているのが見えるだろう。

「そんな時もあるでしょう。…次からは気を付ければいいと思うわ。」

大雑把な返答だとは思ったが、特に気にした風もなく。
心配、というにはあまり気持ちの入っていない様子で答えを返す。
ただもう一歩近づき、立てる?、と手を差し出した。
フードの下の視線は女性を見つめつつ…酒に呑まれているのなら好都合かしら?と考えながらだったが。

スフィア > 形の良い唇が、煌めくような色をしてる事に、そして雰囲気のある女性だと今更ながらに気付く。
厚手の外套に隠してはいても、隠しきれない滲み出る色香に気圧されたよう、少し黙る。
意外にザックリとした言葉は淡々として聞こえ、逆に気が楽になったように思えて肩から力が抜けた。
通りから聞こえる酔漢の濁声も、さっきまでほどは気にならない。

「大丈夫、ありがとう」

差し出された手を、少し迷ってから取った。
あまり体重をかけないよう注意しながら立ち上がる。
よく観察したならわかったかもしれないが、左右で微妙に色味の違う青い目は何処か茫洋としてはいるものの正気の光が宿っていた。
相手の薄紫の、宝石のような相貌が此方を見ているのに気付き、少し首を傾げて笑う。

「私が言う事じゃないけど、ええと、あなたも気を付けて。なんか、すごいきれいだし。
 フードかぶってても、そんな感じる。」

アリルネージュ > 女性が手をとれば、軽く持ち上げるように。
しかし、思ったよりは体重がかかった風でもない。
立ち上がった姿は酒を飲んだにしてはしゃんとしている。
泥酔、酩酊というには少し遠いかしらと認識する。

「ふふ。そう? 心配してくれてありがとう。
大丈夫よ、慣れているから。」

通り道に慣れているのか、男に襲われるのに慣れているのかわかりづらい言葉。
注視しなければわかりづらいが可愛らしいオッドアイ。
その視線がこちらと合えば、笑みは深く。
はら、とマントの裾から褐色の肌がわずかに覗き、かすかに纏う香りは甘く。
女性が感じた色香は、わずかな磁力のように人を惹き付け、惑わすように理性に訴えかけるようで。
可愛らしい子ね、と思えば自然と仕草で視線を惹いてしまう。そういう女だった。

スフィア > 推察通り、酒は残っているが酔いは何処かにすっ飛んで行ってしまった状態。
立位を取る事は難しくない。歩けば若干斜め進行になるのだろうが。

「……えっと、…」

あいまいに笑っての返答に、根ほり葉ほり詳細を聞きたくなる気持ちを押さえる。
『どっちの意味!?』と聞きたそうな顔をしてるが口に出すことは出来なかった。
取った手を放した後、どこかで鐘の鳴る音を聞いた気がしたが――それは錯覚に過ぎない。自分の心臓の音がそういう風に聞こえただけだった。

「とりあえず、けっこんしよう
 …
 ……
 ………
 ん?

 …いや、ごめん。なんかやっぱり酔ってるっぽい…その、チラッと見える褐色の肌とか、肌の香りとか、なんか、いや、ちょっと、やばい。
 めっちゃやばい。すごいいい匂いだし、せくしーっていうか……」

口が自分の支配から離れてしまったように、ダラダラと冗長に思い浮かんだ事を喋くる。
砂浜に立っているかのようだった。寄せては返す波が、気づかない内に足元の砂を削っていき、ふと気づいた時にはもう動けなくなってしまっている。
そういう時のように、ジワジワと何かに浸食されつつあることを自覚する。奇妙に乱れる胸の鼓動に首を捻り、視線を合わせないように注意を払う。
肩だとか、足元だとかへ微妙に視線を外しているのだが、それでも耳をくすぐる柔らかい声や、思考力を奪うような香りは感じている。

「わ。た、し…か、かえ、る。」

アリルネージュ > 曖昧な返答をすれば若干困惑している様子。
表情がころころと変わり、可愛らしい事この上ない。
むくり、と淫魔の本能が鎌首をもたげてくる。

「ふふ。結婚しないの?」

思わず口走ってしまった、という様子にくすっと笑う。
その後口走る言葉もすでに惑わされている事がわかる言葉で。
まだ本格的に魔術の行使などはしていないのだけれど、と考えるも、
これだけ惹く事ができるのならば、と内心で舌なめずり。

「そう、帰るの?……でも酔っているのだし…近くまでなら送るわ。」

人の好さそうな言葉を吐きながら、すうっと手が動く。
胸元をかすめるようにして女性の視線を惹き、そのまま上方へ。
褐色の中に目立つ銀の唇へと視線を誘い…それが動く様子を見せつける。
こつりと一歩近づけば、ふわり漂う香りは更に甘く。
マントの中からチラチラと覗く褐色で、女性の頭の中を一杯にしてあげよう。
自然な仕草のまま誘惑し、女性を魅了していく為に。

スフィア > 「あ、わるいおんなの回答だ…もぉ、からかわないでよう。
 なんかわかんないけど、今、おかしいんだもん。なんていうか、私じゃないみたいっていうか…
 …思ったよりよっぱらってるのかな」

余裕綽綽の相手の態度が面白くなくて、悪い女等という。
当然、相手をよく知るわけではないので適当な言いがかりだ。
歩き出して止まる。送るという言葉を訝る気持ちが露骨に出た、戸惑うような眼差しをチラリと向ける。
しかし、先ほどの事を思い出すと心強い、有難い申し出であることは間違いに事で。

「んっとね、少し外れた所にある古い家なんだけど…、っ」

胸元を掠めるような手の動きに小さく震えて、手から唇へと揺れ動き、移る視線は彼女の光る唇へと固定される。
手を伸ばせば届く場所に立つ彼女から、花のように漂う甘い芳香に、自身の肌とは違う褐色に頭の芯が痺れたように茫とする。
体が熱く、胸が高鳴る。

「……や、やっぱり…だ、めぇ……」

変に切ないような声が出てしまい、恥ずかしい。青い目が潤むのを隠すように下を向いて、ふらつくように二三歩離れようとする。

アリルネージュ > 「ふふ、酔いが抜けきっていないのでしょう。
…やっぱり一人では危ないと思うけれど…。」

戸惑うような視線。
それすれば絡めとるように白銀の唇から紅い舌がちらりと覗く。
目を射るようなコントラストで思考をさらに痺れさせるように。

「そう…。ふふ。近くならすぐじゃない。」

家の場所を聞けば、笑みをわずかに深める。
しかし視線を反らす彼女を見つめながら、もう一歩近づく。

「…私。踊り子をしているの。酒場で雇われてね。
それで日銭を稼いで、生活しているのだけど…。」

蜜を含んだような言葉が漏れる。
ゆっくりと、彼女の頭の中で褐色の踊りを想像させるように。
すでに術中にはまりつつある女性に、とどめとばかりにそっと…。

「…たまに、ベッドの上でも踊ったりするの。…どう?」

蕩けるような声で囁きかけた。

スフィア > 「で、も、……なんか、わたし、へん…」

欲情しているにしても、自分が普段するような反応ではなかった。
強制的に導かれているような感覚、まさか相手が原因とは思い至らず。
さりとて自然なことと受け入れるには、半端に強い精神力が邪魔をして納得できず。
けれど、色香を通り越して淫気にも等しい空気を備える女の動作や容貌に、だんだんと目が離せなくなる。
頬は紅潮し、泣きそうに濡れた目には欲情の色を湛え、また一歩踏み込んだ位置へと距離を縮めた彼女に、細い喉を震わせゴクリと音を鳴らした。

「そう、なんだけど………、…………ねぇ。誘ってるの?」

余裕綽綽な態度を崩さず、とろけるような声で誘いかけてくる相手に、喉がひどく渇いたような錯覚。
奇妙な飢餓感に、彼女の手を取る。力のこもった手は震えていた。
惚けたような目で、銀に光る唇を。その薄紫の宝石のような双眸を見つめて、吸い寄せられるように顔を近づける。
拒まれなければそのまま、顔を少し傾けて、欲情し薄っすらと充血した自身の唇を――彼女の白銀の唇へ重ねようとする。
それが答えだった。帰り道は分かれる事なく、自身の借りた古い家の中で夢のような一夜を過ごした筈。