2017/11/28 のログ
ご案内:「貧民地区 路地裏」にツァリエルさんが現れました。
■ツァリエル > 日が傾き始め、夕闇が迫る頃。
今日は貧民地区で近隣の教会が催した炊き出しと衣類の無料配布の
手伝いを終えたツァリエルは一人城に戻る途中であった。
いつものようにこっそり城を抜け出し、顔なじみの修道士たちに混じって
貧民地区で奉仕活動に勤しむのはいい気分転換になった。
子供から老人まで、多種多様の事情を持った人々が集い
ツァリエルたちに感謝しながら温かい食事と冬物を受け取る。
特に婦人会で作られたマフラーや手袋などが大変喜ばれた。
それを思い出しながらにこにこと路地裏を歩いていると
ふいに前方を柄が悪い男たちに塞がれる。
にやついた笑いを浮かべた男たちはツァリエルを見るなり声をかけ
『そんなにご機嫌でどこに行くんだ?』
『おじさんたち暇なんだよ。遊んでくれないか』
などと下卑た声でツァリエルの腕を取ろうとする。
「や、止めてください!」
慌てて身を引いてそれを躱すと逃げるために転身し
もと来た道を引き返そうとした。
が、男たちに回り込まれてしまった。
■ツァリエル > 『堅いこと言うなよ』
『ちょっとぐらいいいじゃないか』
そうあざ笑いながら男たちがツァリエルに詰め寄ってくる。
青い顔をしたツァリエルは後じさり、なんとか逃げられないかと周囲を見渡す。
が、面倒はごめんだとばかりにこの騒ぎに気づいた少数の人々は
ボロ屋に立てこもり無視することに決めたらしい。
助けの手はない。
もう少し用心すべきだったと自分の迂闊さを後悔する。
ついに男たちの太い手がツァリエルの細腕を捉えると
無理やり引っ張り上げようとする。
痛みにツァリエルは悲鳴を上げた。
ご案内:「貧民地区 路地裏」にタマモさんが現れました。
■タマモ > なにやら、面白そうな事が起こってる気がする。
それに反応した少女が、屋根の上からひょっこりと顔を出し、眺めだしたのがつい先ほど。
まぁ、男共も、絡まれてる相手も、お互いに意識が向いててこちらには気付いてないだろう。
それを確かめれば、その手から、ばさぁっといくつもの白い何かが下へと投げ込まれた。
それはひらりひらりと緩やかに落下し、広がってゆくと、男達に…ついでに、絡まれている相手にも、覆うように被さっていった。
別に大したものじゃない、前に悪戯に使っていた人型にくり抜いた布である。
が、それだけえは終わらない。
まるで、それは布の感触を与えてはいるのに、生きているように蠢いていた。
特に、絡んできていた男達を包んだ布は、いくら引き剥がそうと暴れても、それが離れる事はない。
自由を奪ったりはしないが、体中に絡み付き、なんとも言えない感触を与えていくだろう。
ちなみに、絡まれていた相手の布は、ちょっと払えば簡単に剥がせるものである。
■ツァリエル > 男たちもツァリエルも目の前の相手のことで精一杯で当然屋根の上などに気を遣っている余裕はなかった。
突如降ってきた白い何かが男たちとツァリエルを包み込んでしまえば当然大騒ぎになる。
『くそ、なんだこれ!』『離れねぇぞ!ちくしょうめ!』
男たちは無様に布を引き剥がそうと試みるがまるで張り付いてしまったかのように手足に絡みついて離れない。
勿論ツァリエルも悲鳴を上げた後で突如降ってきたものを払いのけようとする。
するとあっさりと布は払い落ちた。
驚きに目を見張って、藻掻く男たちと屋根の上を交互に見れば
そこに狐耳と尻尾のついた不思議な少女の姿を確認できるだろうか。
掴まれた腕を振りほどき、さっとその場から離れると一目散に駆け出した。
とにかくここを離れなければ。
未だもがき続けている男たちを尻目にツァリエルは別の路地裏へと駆けていく。
■タマモ > あぁ、この無様な必死さを眺める事の、何と楽しい事か。
もちろん、絡まれていた者も布を被り、びっくりする様子を見るのも楽しいものだったりするが。
少女は屋根から顔を覗かせたままだ、見上げれば、確かに狐耳と尻尾を持ったその姿が見える事だろう。
男共に掴まれていた手を振り解き、その場から逃げる姿に目を向け…ふっと姿が消える。
さて、逃した相手がどこまで頑張って駆けて行くだろうか?
己は屋根伝いにそれを追い、疲れて足を止めるのを待っている。
そうなったところで、静かに近付く為だ。
どうしてそうするのか…もちろん、後ろから驚かせる為である。
余計な事をするな?知った事ではない。
■ツァリエル > 5分ほども走った頃だろうか。
先程の現場より大分離れた路地裏に出るとあがった息を整えるべく足を止める。
走ったせいもあるだろうが怖い思いをしたせいでドキドキと心臓が痛い。
民家の壁に持たれると盛大に息を吐き出した。
それにしてもあの少女は一体誰だったのだろう。
見慣れない姿をしていたが、まさか自分を助けてくれたのだろうか。
逃げることに精一杯でお礼を言えなかったことが心残りだが……。
息を整え、落ち着いたころに辺りを見回しそっと壁から体を離す。
先程のような目に合うのはもう懲り懲りだ。
さっさと城に戻ろうと帰路に向けて歩き出す。
その姿は油断しきっていて、いたずらを仕掛けるなら絶好のタイミングだろう。
■タマモ > 「ふむ…」
思った以上に、足を止めるのが早かった気がする。
まぁ、襲われそうになって、必死に逃げれば普段よりも疲れるものだろうか?
そんな事はどうでもいいかと、壁に凭れ、一息ついている様子までも、少女は屋根の上から眺めていた。
向かっている方角から考え、そちらへと向かうに死角となる、その後方へと屋根からふわりと音も無く飛び降りる。
こそこそと物陰に隠れながら、すぐ側にまで接近しておく。
少しすれば、ある程度息も整ったのだろう、その相手は壁から離れた。
そして、思った通りの方向へと歩き出す、そのタイミングを見計らい…
「………わっ!」
すぐ背後から、声を上げると共に、がばーっと抱き付いてみようか。
そうした時の反応も、楽しみにしながら。
■ツァリエル > 「ひゃあっ!?」
突如背後から大声を出され、その上がばっと抱きつかれれば
ぴょんと小柄なツァリエルの体が跳ねた。
さっと一瞬考えたのはまたしても先程のように変な相手に絡まれてしまったのだろうかということ。
思わず必死にもがいて相手から離れようとする。
「や、やだっ! 離してください! きゃあああ!」
少女もかくやと思うような悲鳴を上げながら手足をブンブン振り回し逃げようと藻掻く。
■タマモ > 声を上げ、抱き付いてみれば、明らかに驚いたかのように体が跳ねたのが分かる。
そう、これが面白いのである。
必死にもがき、悲鳴を上げ、もがく姿も…なかなかに、楽しい。
しかし、この抱き付いている感触…はて?と首を傾げる。
振り回される手足を難無く避けながら、ぺたりぺたりと、無遠慮に手が体に触れて。
嫌がる相手に這わされる厭らしい動きをする手…ではない。
相手が気付くか気付かないかは分からないが、何かを確かめるような手の動きだった。
まぁ、手足の肉付き、胸、腰回り、お尻と触れてるから、気にならない訳でもないだろうが。
さすがに、股間だけは触れないでおいた。
「おぉ…何じゃ、女子かと思うたら、男子であったようじゃのぅ?
………おっと、そろそろ暴れるのは止めたらどうじゃ?疲れるだけじゃぞ?」
確かめれば、今のところはそれで手が止まる。
後ろから、何事も無かったかのように言葉を掛けて。
■ツァリエル > 暴れながら相手が無遠慮に自分の体に触れてくるとさすがにびっくりする。
何かを確かめるような手つきであることなどパニック状態のツァリエルにはわからず
ただぺたぺたと体を這い回る両腕の動きにぞわわっと身震いした。
が、声を駆けられればハッと気づいたように後ろを振り向く。
すると驚かした相手は先程の狐耳の少女ではないか。
「わひゃああぁぁ…………? ……っあ」
一体どういうことなのか頭が追いついていかずパクパクと口を開いたり開けたり。
とりあえず、一旦相手の腕から逃れようと距離を取ろうとする。
自分の体を守るように両腕で抱きしめ、上から下まで相手を眺めてから
「!? ……お、男ですよ! なんなんですか!もうっ!」
思わず相手に向かって声を荒げてしまう。
■タマモ > 驚く相手に楽しみながら、体を触れていた。
確認を終えてから、やっと手が止まり声を掛ければ…そこで、やっと相手は気付いたらしい。
相手は…その少年は、こちらへと振り向く。
こちらの姿は、先ほど少年も見ていたはず…さて、どんな反応をしてくれるだろうか?
うん、まぁ、さすがに色々とあり過ぎたのか、呆気に取られていたようだ。
それも少しの間で、気を取り直したか、一度身を離し、己が身を抱き締めながらこちらを改めて見遣る。
「むむむ…もう少し、体を鍛えた方が良いじゃろう。
これでは、女子と勘違いされても仕方ないぞ?
まぁ、妾もてっきり女子と思うて、驚かせて楽しもうとしたのじゃ。
………女子も男子も関係なく、面白い反応を見せてくれたがのぅ?」
声を荒げる少年だが、対して少女は気にした風もない涼しい表情で、そう答える。
「まぁ、そう悪気は無いのじゃ、快く許してくれるとありがたいのじゃが…どうじゃろう?」
どう聞いても前の台詞は悪気があるように聞こえるが、さらりと言いのける。
少年が下がった分、こちらがすっと近付き、身を屈ませながら上目使いで見上げて。
■ツァリエル > 「そ、そんなこと言われても……!」
自分も体格が細いことは気にしている事ゆえ、指摘されれば多少ショックを受ける。
古風な喋り方をする少女を相手になんだか相手のペースにとらわれてしまっていつものように落ち着いて話ができない。
とりあえず深呼吸を二度三度すると、改めて少女をまじまじと見つめる。
ミレー族だろうか、見慣れない衣服を纏っている彼女は貧民街の住人には見えない。
「えっと……あのう、許します……。というかこっちこそびっくりしてごめんなさい。
さっき、助けてくださった……? んですよね? あの、ありがとうございました」
そう言ってぺこりと頭を下げる。
が、すすっと近づいてこちらを覗き込んでくる相手にはまだ少し警戒をしていて
また一歩、後ろに下がる。
■タマモ > 「ふふ…これはこれで、可愛らしくて良いのじゃろうが、な?
少しでも気にしておるならば、少しは何かしてみると良いのではないか?」
くすくすと笑い、自らのペースを乱しているのだろう少年を楽し気に見る。
深呼吸をし、改めて己を見遣る少年。
その視線に気付けば、見るか?みたいな感じに、耳をぴこぴこと、尻尾をゆらゆらと揺らしてみせた。
まぁ、どちらかと言えば、着物の方が珍しいというのは、初見の相手はいつもの事なのだが…
「おぉ、それはありがたい…と、びっくりしたのは謝らずとも良い、妾としては喜んでおるからな?
………もしかしたら、屋根の上で事の成り行きを見ていただけやもしれんのにのぅ…まぁ、間違っておらんが…
後、礼はいらん、驚かさせて貰ったのが礼代わりと考えておくが良い」
うんうんと、許しが出た事で頷いて。
と、逆に礼を言われれば、悪戯に少年を言葉で錯乱させようとか何とか。
単に、真っ向から礼を言われるのが苦手なだけだが、それは秘密だ。
「おや…触れられた事、気にしておるか?
仕方がないのぅ…ほれ、ならば、代わりに今度はお主が触れてみるか?ん?」
近付けば、警戒する少年に、にまにまと悪戯っ子の笑み。
言葉を紡ぎながら、更にずずぃっと近付いたり…こう、ゆっくりと壁際に追い詰めるように。
■ツァリエル > 可愛らしい、と言われれば頬を朱に染めて俯いてしまう。
彼女の言うとおり、何かしてみれば良いのだろうが体力に自信はなく
鍛えてもあまり効果はでないタイプらしい。
と、それは置いておいて今は礼を言うのが先立った。
「びっくりしたことがお礼になるのですか……?
変わった……、あ、いえ不思議な趣味ですね……。
でも、助けてもらったのは事実ですし、本当にありがとうございました」
一体全体この少女は何をしたかったのだろう……。
ツァリエルにはさっぱり思考が読めない相手である。
だが、彼女のお陰で助かったのだしその点では悪い人ではないのだろう。
と、意地の悪い笑みを浮かべながらこちらを追い込んでくる相手に冷や汗をかく。
だんだんと後ずさり、壁際に追い込まれればそこから先は逃げることも出来ず
「そ、その……あんまり人に急に触られたことが無くて……。
僕は結構です! そんな、女性にみだりに触れるなどと……」
体に巻き付けていた両腕を更にきつくする。
これはもしかして自分はからかわれているのだろうか。
相手は自分の困惑する顔を見て楽しんでいるのだろうか。
そうであるならば、ちょっと意地が悪い。が、どうやって切り抜ければいいのか検討もつかなかった。
■タマモ > 「お主…そこで、そんな反応をしておるから、余計に勘違いされそうではないか?
気にしておるならば、少しは反論をせんとのぅ…?
まぁ、得手不得手は誰でもある、それが不得手であるならば、他のところで男子らしさを見せねばならんじゃろう。
不得手であろうと、努力で道を抉じ開ける、くらいは言って欲しかったが…」
触れてみて、体の線の細さ、その感触で、多少はその手の事が分かる。
鍛えろとは言ってはいるが、効果は微妙であろうと…だが、やるとやらないでは、やはり少しの違いは出るものなのだ。
はふん、と溜息を一つ。
「まぁ…色々とあるのじゃ、うん。
………むぅ…要らんと言うに、言わねば気が済まぬか…仕方あるまい」
正確には、驚かせた事による、焦りや恐怖が僅かとも己の糧となる、という理由だが…さすがに、それは言えない。
不要と言っても伝えてくる謝礼の言葉、頬を膨らませて軽く怒ったような表情を作ってみた。
まぁ、怖くはないだろうが。
「うん…?…ふむ…あんな風にしか、触れられた事がないか?
それならば、ちと悪かったやもしれんのぅ。
誰かとの触れ合いは、悪いものではないし、先を考えれば慣れは必要じゃろう。
まぁ、急いては事を仕損じる、とも言うが…」
見掛けた、あの状況を思い出し、首を傾げながら呟く。
が、それは分かっていても、少年を壁際に追い詰めるのは止めない。
壁に手を付き、鼻先が触れる程に顔を寄せ…
そこまではするが、それ以上はしなかった。
ぽん、と頭に手を置いて、軽く撫でる。
「さて、先に進むのも面白そうじゃが…冗談はこれくらいにしておこう。
お主、帰る途中だったんじゃろう?また面倒事が起こらぬよう、妾が送ってやろう。
………気紛れじゃ、素直に受けた方が良いぞ?」
少女は気分屋だ、どこまでも突き進む時もあれば、こうして急に踏み止まる事もある。
相手にしてみれば、なんとも対処に悩む事かもしれないが…性格だ、仕方ない。
まぁ、素直に驚かせた詫びに送ると言えば良いのだが、それが出来ない。
結果、こんな物言いとなってしまう。
■ツァリエル > 「か、勘違い……。反論と言っても何を言えばいいのか……。
努力は、するつもりです……もちろん。
でもそれが実るかどうかはわからないし……」
少し後ろ向きなことを言ってしまっただろうか。
ため息をつかれたということは自分に呆れられてしまったのだろうか。
と、彼女の表情が軽く怒ったような顔になると慌ててごめんなさい、と謝った。
ツァリエルが触られるときと言えば大抵性的なニュアンスの強い乱暴なことだったりすることが多い。
それは城でも、ここでもどちらもあまり変わらない。
彼女の言う正しい意味での触れ合いもわからなくは無いのだが
そうできる相手は少ないのである。
と、思っている間に壁際に追い詰められみるみるうちに顔が近づいてゆく。
まさかこの少女もまたその手合なのだろうかと体を強張らせた途端
ぽんと優しく頭を撫でられた。
本来の意味での正しい触れ合いが行われたのだ。
ぽかんとしながら彼女に頭を撫でられる。
「……じょ、冗談、だったんですか。はぁ……。
ええっと、はい……王城へ戻る途中だったのですが……。
えっ、そんな悪いですよ……。むしろあなたのほうは大丈夫なのですか?
こんな時間まで女の子が外に居ては危ないですよ」
などとタマモのことを心配してみる。
まぁ彼女の身のこなしなら、先程の暴漢だって切り抜けられるだろうし
自分の余計なお節介でまた機嫌を悪くさせても仕方ないのだろうか。
そう考えれば、ちょっと困ったような顔をしつつ微笑んだ。
「わかりました、では途中の道まで一緒に行きましょう」
■タマモ > 「あー…まぁ、世の中は可愛いと思われたい男子も居るか…その類であるならば、何も言わぬが?
むむむ…それがいかん、やってやろうと、そんな気構えを持つくらいはせねばのぅ?
心がまず折れておっては、何をやっても無意味となろう」
…妾は、面倒な心構えなんぞ持ちたくないがな、心の中でそう呟いた。
自分を棚に上げた発言だが、ばれなければ良いのだ。
良い事を言っていても台無しである。
怒ったような表情を作ってみせ、また謝れば、ほれ、また謝る…じと目でそう伝えた。
「半分は本気じゃったぞ?…さて、それはさておき…
ふふ…そんなところだけは、男子をしておるな?
こういった時に、自分が守ってやる、とでも言えれば尚良いが…無理は言うまい」
最初の部分になにやら怪しいものが含まれていたが、少年の言葉に、見詰めていた目を細める。
むしろ、襲われるよりも、襲う方の立場の方が多いのは…黙っておこう。
「では、道案内は任せよう。よろしく頼むぞ?
………そうそう、妾はタマモじゃ、お主は?」
するりと少年の前から、横へと身を滑らせるように道を空ける。
そのまま、少年の腕に、己の腕を絡め…後は任せる考えだ。
己が先に行けば、間違いなく道に迷うからだが…気にしない。
■ツァリエル > 「いえ、可愛いとは思われたくはあまり……。
そ、そうですよね。心が折れていたら何も出来ませんよね。
ありがとうございます、励ましてくださって」
どんな気持ちで言葉を投げかけているかは知る由もなし、
タマモに励まされたのだと思ったまま微笑して礼を言う。
ジト目で睨まれれば、慌ててまたしても謝罪の言葉がついてでそうになった。
思わず手のひらで口を塞いでしまう。
そう、ツァリエルだってこんな見た目ながら男子である。
少女がいかなるものでもやはりこんな路地裏で別れるのは
あまりに無情というものだ。
まるで当然かのようにするりと己の腕に少女の腕が絡められる。
それにはやはり照れというか焦りが浮かんでしまうがこほんと咳払いして誤魔化した。
「僕は……ツァリエルです。よろしく、タマモさん」
困ったような微笑を浮かべたままじゃあ行きましょうかと声をかけ歩き出す。
途中で先程のような事件に出くわすこともなくさして時間もかからず貧民地区から抜け出せば
あとは王城への道は大通りを残すだけとなる。
大通りなら人気はまだ完全には絶えていない。一応の安全はあるだろう。
「それじゃあタマモさん、ここまで送ってくださってありがとうございました
タマモさんも気をつけて帰ってくださいね」
そう言ってそうっと絡めた腕を離す。少しだけ名残惜しかった。
離した手を上げて、さよならの意味を込めてタマモに振る。
そうしてツァリエルは踵を返すと王城の入り口へと立ち去っていった。
果たしてまたいつかあの不思議な少女に出会えることがあるのだろうかなどと
心の何処かで期待しながら帰り道を歩いていった。
■タマモ > 「………うむ、分かれば良い。
い、いや、だから礼は要らぬと…感謝する気持ちがあるならば、それは姿勢で妾に示せば良いのじゃ」
掛ける言葉に込められた気持ちはどうあれ、やはり、褒められる、感謝されるのは苦手な少女。
それだけ言うと、ひらひらと手を振って。
更に謝罪の言葉が出そうになったのだろう、口を塞いだ少年の姿に…ぽん、とまた頭に手を置いた。
さて、腕に絡まるのは良いが、また逃げそうになるか…?そう思っていた。
が、どうやら、今度は逃げには走らなかったらしい、安心だ。
そのまま身を寄せれば、無自覚に胸が押し付けられるようになるが、さてはて、相手は?
「なん…じゃと…!?うぐっ…つ…つわ…つりえ………
………のぅ、つーちゃんで良いか?」
己に次いで、名前を伝える少年。
それを聞き…少女の表情が引き攣った。久々に来た、言葉にし難い名前だったのだ。
例が如く、愛称を付ける事にした。
なんだかんだで、何事も無く安全な大通りに。
ここならば、自分も分かっている。
「ふふ…案内、助かったぞ?
気を付けるのは互いにな、では、また会う日までじゃ」
するりと、絡めた時のように腕が離れる。
次に会う時に、少しは成果が聞けるかを期待しながら、去っていく姿を、手を振り返して見送った。
その後は…また適当な散歩の後、式の邸宅へと戻るのであった。
■ツァリエル > 無自覚に身を寄せられ胸を当てられれば気にはするものの
なんとかそっちに意識を集中することはなかった。
言いにくそうな自分の名前にくすくすと笑って
「ツァリとかツァーリでもいいですよ。
でもタマモさんの言葉遣いでしたらつーちゃんのほうがいいでしょうね」
意外に可愛いところもあるのだなぁと知ると
ちょっと距離が縮まったような気分になる。
「ええ、また合う日まで、さようなら」
タマモも手を振り返してくれたのなら嬉しそうに笑って
だんだんと距離が離れてもう後は後ろ姿が豆粒のように小さくなってゆくだけだった。
ご案内:「貧民地区 路地裏」からツァリエルさんが去りました。