2017/07/31 のログ
ノア > 「 .....違、う.. 」

もう、触らないで。もう、優しい言葉を掛けないで。視覚も聴覚も失って、今すぐ此処から逃げ出してしまいたくなる程、女の抑え込んだ感情はいとも容易く溢れ出し。一度溢れた感情は塞き止める事が出来なくなって、涙となって頬を濡らし

「 失くして ない、 っ... 外し た、 だけ.. 」

頭を撫でられては首を横に振って払い、本来より随分と小さくなってしまった手から逃れる。聞こえてくるのは少女の声色、言葉遣い。感じるのは柔らかな少女の手のひらの感触だけれど.. 目の前にいるのは紛れもなく、 いつからかこれほどまでに女が愛してしまった相手で

「 .........フェゴールさん に、 会 った... 」

何処からか聞こえる愉しげな男女の笑い声に、掻き消されてしまいそうな程.. 小さな、小さな声で、白状した。

セイン=ディバン > 「……? 違う、って?」

弱々しい言葉。涙する相手。少女は、また何かをしくじったか、と不安に思いつつも。
それでも、手を伸ばし、相手の頭を優しく撫でた。そうしなくてはいけない気がしたからだ。

「……そう。それなら、良かった。
 あれはあれで、多少の値はつくだろうから。無くしたらもったいないもの。
 ……不要になったら、何処かの店に売り払えば、まぁ小遣い程度には……」

触れた手を、首の動きで払われる。そのまま、相手の言葉になんと答えていいか。
少女は悩んだ挙句、あまり深刻ではない、という声色でそう囁いた。
無論、本心はといえば、多少なりともショックもあるし、その理由も聞きたかった。
だが、それをしては余計に追い込んでしまう。そう考え、どこか冗談めかして言うつもりだったのだが。

「……そう。それは……。
 あぁ、こういう場合なんて言うのが正しいんだろう。
 ……何もされなかったか? ウチの妻は、その。時折凄く怖いから。
 根は、いい子なんだけど」

その言葉を遮ったのは、相手の一言。まさか、と思いながら。上手く働かない頭で、そう尋ねてみる。
あまりのことに、少女の口調は元に戻っており。少女は、動揺したまま、その場に座り込み、相手の顔を覗き込もうとする。

ノア > 言ってしまった情けなさと、泣いてしまった悔しさに、顔は反らしたまま貴方を見ようとはせず。妻帯者と知っていた癖に何とみっともない有り様だ と、自分自身に苛立ちすら覚えていて

「 ......... 」

なおも優しい口調で女を慰めようとする貴方に、どんな顔で向かい合えばいいのか。相手が貴方ではこれまで培ってきた演技力もまるで発揮せず、巧く誤魔化す事など出来なくて。しゃがみ込んだ貴方が此方を覗き込んだなら、泣きながら不服そうな表情を浮かべる女の顔が見えるだろうか

「 何も......... てゆーか、寧ろ.. すごく可愛くて、すごく... 素敵な人 だった。とんっでもなく憎たらしいクソゲス女だったら良かった、のに..... っ、超イイ女じゃん.. ばか。」

泣き出してしまったせいで、途切れ途切れ。偶然遭遇した貴方の正妻について、女は感じたままを話した。いつの間にか口調が戻った貴方より、言葉遣いが汚い気がするけれど.. 色々溢れてしまっている為、無意識で。

「 てゆーか、娘現れたり呪われてみたり魔王な奥様引っ越してきたり、色々起きすぎっ.. 」

セイン=ディバン > 周りの雑音が遠くなっていく感覚。目の前の女性を悲しませたくない、という思いが、必死に頭を回転させていくのだが。

「えっと。なんていうか。
 ……その、ゴメン」

語りかけても、反応は無く。いよいよ困り果てた少女。覗き込めば、相手は見事に泣いていて。
少女は、もうお手上げ、というかの様に。ただ、謝罪をするのみだった。

「……えっと、その。うん。可愛い。し、愛してる。
 ちょっとねぼすけで、最近はSっ気出してくるけど。
 でも……うん。イイ女なんだ、アイツ」

惚気るつもりはなかった。しかし、ここで『お前の方がイイ女だよ』だとか『いやぁ、そんなことないよ』だとか。
そんなウソを吐いても、恐らく相手は簡単に看破するだろうから。
少女は。困ったようにそう、素直に返事をした。

「そ、それは、オレのせいじゃないっていうか。
 ……いや、ゴメン。でも……。
 アイツもイイ女だけど。オレは、お前のことも本気で愛してるんだ。
 そこだけは、信じて欲しい。都合のいい言葉にしか聞こえないだろうけど」

ノア > 指輪を贈られた日。二人が、これから先を語り合った日。あの瞬間は、こんな事になるなど思ってもいなかった。まさか遭遇する日が来ようとは予測していなかったけれど.. 正妻がいる事、正妻は魔王であるという事は知っていた。女好きも勿論わかってはいたし、何処かに子供の一人や二人居てもおかしくはなかった。危険に飛び込みがちな貴方の事、百歩譲って何処ぞの魔王に呪われるのも.. まぁ、わからなくもない。けれど ──

「 ねぼすけとかSっ毛とか、そんなの知らないけど... 怖いどころか、すごく優しくて..... セインの事、すごく.. すごく、愛してるの わかった。」

何より、こんな事になるなど思ってもいなかったのは.. 女自身の、貴方への想い。こんなに容易く泣き出してしまう程、貴方を愛してしまったのだと思い知る。そうでなければ平気な顔して、今も左手には緑色の宝玉が輝いていただろうか。自身を買い取った男の元を逃げ出した日から、ただ、自由でいたいと望んできた女は.. そんな自分を認められずに、眉間には皺を寄せたまま

「 ............誰にのろけてんの、ばか。ずっと呪われてればいい、この女ったらし。別に... 知ってた事 だし、こんな女好きが子供一人しか居ないって方が奇跡だし、別 に..... 気にして ない、し.. 関係 ない し... 」

貴方に対しても、無論正妻や娘に対する怒りも憎しみもなく。喋れば喋る程みっともない自分に、ただただ苛立ち。こんな姿見せたくなかった、と.. 今すぐ此処から逃げ出したくて、脚に力を込めるも..

「 .........っ、 」

不覚にも此方を覗き込むと視貴方と視線がぶつかり、身動きが取れなくなって。また一筋、頬を大粒の滴が伝い落ちた

セイン=ディバン > 少女自身もまた、今現在の自分の状況など、考えもしなければ思いつきもしなかった。
ただ、実際今はこうして呪われてしまっている訳で……。

「……え~。マジかぁ……。
 となると、マジでオレにだけ怖いんだなぁアイツ」

優しいと、言われれば。不満と疑問の混じった声を上げてしまう少女。
でも、まずは相手に怪我とかがなくてなにより、と安心するも。
続けて罵倒されてしまえば……。

「ん……それは、困るなぁ。ノアのこと、男の状態で抱いてやれなくなるし。
 ……その態度は、気にして無い、なんて態度じゃなさそうだけど」

まるで拗ねた子供のように。言葉と様子がちぐはぐな相手。
その様子に、はてさて、どうしたものかな、と思っていれば。
視線がぶつかり。また、目の前の女性の瞳から涙が零れ。

「……ごめん。ノア。愛してる。好きだ」

少女は、短くそう言うと、相手を真正面から、優しく抱きしめた。
そして……その唇に、自身の唇を重ね……。

ノア > 貴方は騙した訳でもない、一番質が悪いのは自分だと.. わかっている、わかっているけれど

「 .....きらい、っ.. 」

貴方の言葉を受け止め切れる程、寛大に出来ていない。さくっと割り切れる程 大人にも、なりきれていない。謝罪やら甘い言葉やらに対して いちいち噛み付いてしまう様は、みっともない事だろう。目の前の貴方と、貴方を愛し過ぎてしまった自分自身から逃れるように、否定的な言葉を何度も吐き捨てるも

「 だい きらぃ... 」

其の声は、何とも弱々しく。いつの間にか貴方に抱き締められては、余計に其の声も聞こえなくなってしまう。可愛いげのない言葉を吐き捨てる唇は、唐突に塞がれて

「 セイン なんて、きら  ─────
  .........っ、」

漸く、女は黙り込んだ。認めたくなくても、もう、認めざるを得ない。本当に、愛してしまったのだ と..



其の後もみっともない姿を晒してしまうのか、はたまた逃げ帰ったか.. とことん貴方に弱い女の事、どうなるかは、貴方次第で。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からセイン=ディバンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からノアさんが去りました。