2017/06/18 のログ
ご案内:「王都貧民地区」にホウセンさんが現れました。
■ホウセン > 妖仙の王都滞在は続く。
日中は、何処ぞの貴族の祝宴に顔を出していたけれど、日暮れを少し過ぎた頃には辞して。
出立の時とは異なり、己の店に立ち寄ることはせず、富裕地区に定宿としている宿泊先を経由してから貧民地区へ。
上品な味付けで舌を楽しませると、どうしても粗野な味が恋しくなるという揺り戻しの為せる業だ。
それは酒食でも、女でも変わらない。
そうして街中をぶらついた後、一軒の酒場に入ったのが彼是数時間前。
顔見知りの店ではないが故に、子供が何の用だと怪訝そうな視線と問答に曝されるのはいつものこと。
しかし、人好きのする顔でニコニコと笑い続けると、大部分の店では客として扱われるようになる。
客として認知されて以降、現在はといえば…
「えぇい、厚意はわからぬでもないが、そうそう全てを世話しようとするでない。
悪趣味な貴族のボンボンがするような真似を踏襲しとうない。」
その店の常連と思しき冒険者やら、娼婦やらの膝の上を転々としながら餌付けされている真っ最中。
当然のように子供用の椅子なんて備え付けている筈もないけれど、彼らの太腿がテーブルとの高低差を埋めてくれるのだ。
不平の欠片を零しながらも、妖仙の小さな口のサイズに合うよう切り分けられた鶏肉のローストがフォークに刺されて差し出されると、パクリと。
小柄な体の何処に収まるのか不思議なぐらいの健啖ぶりを発揮する。
■ホウセン > 口に収まった料理は、しっかりと咀嚼する。
王城で出される料理であっても、こういった手頃な価格で品物を提供する店であっても、食が遊興の一つである以上、無駄に真摯なのだ。
赤ワイン、ザラメ、オレンジの皮を土台にしたらしいソースが唇の端に付着しようものなら、自らの手を動かすまでもなく、脇あいからナプキンが口元を拭う。
如何にもお子様扱いという風情だが、例によって脱走するまでの気概が湧かないらしい。
「いや、儂にとっては、儂の矜持にとってはそれなりに影響の大きな話なのじゃが…
お主らの奉仕を無碍にするのも狭量かと思うて大人しくしておるからというて、人が口に物を入れている最中に頬を突くでないっ。」
ふにふに、ぷにり。
見目を裏切らぬ、時奪いの逸品っぷりは健在で、膝の上に抱きかかえる誰も彼も、のべつ幕なしに右頬なり左頬を指先で突っつく。
心地としては、商品の梱包財のショック吸収用の小さな気泡を一つ一つ潰していくとか、アイロン掛けに慣れない人間がアイロンと霧吹きの二刀流でワイシャツから一本も残さず皺を駆逐できるかとか、没頭の深度は近しいものがあるようで。
「というか、そろそろ酒精をじゃな…
えぇい、何故そこだけ頑なに拒絶しおるっ!?」
色々緩い店のようだが、その一線だけは譲れないだとか。
妙な所で真面目で律儀で常識的な店ルールに直面すると、不平を訴えるように背を後に倒して、現在の世話役たる娼婦らしき女の胸の谷間に後頭部を預ける。
預けた上で首を振って駄々をこねるようにしてみるが、駄目なものは駄目と、寧ろ言い聞かせるように窘められ、黒髪の頭をあやすべく撫でられる始末。
■ホウセン > 妙な所で律儀な店主や常連客に囲まれての四面楚歌。
如何に妖仙とはいえ、それを打破できる筈もない。
唇を尖らせた不貞腐れ気味の表情を晒しつつも、コロリと表情を変えて甘ったれた声色。
曰く、”良い寝床はないか”と。
初対面でありながら、図々しい事この上ないが、人の隙に滑り込むのは手馴れたもの。
今日も今日とて、誰ぞやの褥に同衾する筈で――
ご案内:「王都貧民地区」からホウセンさんが去りました。