2017/05/31 のログ
セイン=ディバン > 少女はしばらく路地裏で聞き込みをしていたが、収穫は無かったのか。
やがて姿を消していった。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区 路地裏」からセイン=ディバンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2/安酒場」にティエラさんが現れました。
ティエラ > 水で薄めた質の悪い酒、紫煙燻らせ賭け事に興じるゴロツキ。
 絵に書いた様な、記号とも言って良いぐらいの酒場には、悪酔いした上で、イカサマしただのしないだのいちゃもん付けあって、殴り合いの喧嘩などは日常茶飯事。
 誰も止めはせず、誰も関心を向けず、自分の都合で酒を飲み、自分の都合で怒鳴り合う。
 そんな奴らのたまり場となっている酒場に現れるのは、肌も顕な衣装の女。
 ちょくちょく来ているからか、誰も気にした様子がなくて、女は無愛想なマスターに何時もの用にお願いをする。
 ハン、と鼻息で返答を受ければヴェールの下で小さく笑んでお礼の言葉。

 そこから、彼女の仕事が始まる。

 酒場の席と席の合間を縫うように、滑るように移動し乍、ゆるりと手を挙げましょう。
 腕輪がしゃらんと金属の音を響かせて、そこから女は腰を振り、ゆるりとした流れで踊りを始める。
 誰も見る者のいない酒場で、くるり、くるり、と店の中を右左。
 腰をくねらせ、腕を持ち上げ、楽しそうに笑零す。

ティエラ > 肌も顕な女が、このような酒場に来てごろつきが手を出さない訳がない。
 なぜ、手を出されないのかは簡単な話、ここに来てすぐ手を出してきた輩には、見た目よりも鍛えられたしなやかな足での洗礼を受けたから。
 微笑みながらさらりと回避して顔面を蹴り飛ばす。そんなことを繰り返せば、常連のごろつきは理解するだろう。
 故に、破廉恥な視線を向けて踊りを眺め、酒を飲むしか彼らには無い。
 たまに、トチ狂って手を出しに来るのもいるけれど、なめらかで鋭い蹴りが、顔か胸か股間か女の気分次第ではあるが炸裂するのだ。
 綺麗な花にはトゲがあるというやつである。

 歌はなく、伴奏も無く、あるのは、喧騒と紫煙のみの、安い酒場の中。
 見られているのか、見られていないのか定かですらなく、それを気にすることもない。

 ―――女は楽しげに踊る。

 静かに流れるような、くるくるとした動きでも、徐々に汗を孕み始めて腕を振れば、汗の雫が小さく飛んでいく。
 踊りの質も徐々に変わり、トン、タタトン、タタタ、足踏みのステップが木の床を楽器替わりに鳴らし。
 情熱を込めたかのように、葡萄の瞳の流し目送り、腕を振り、腰を振る。
 激しく、熱く変わっていく。

ティエラ > ゆらりと髪が揺れて、酒と紫煙で彩られた酒場の中に、女の甘い香りが混ざって散っていく。
 酒場の中で女は舞い踊る 腰を振り、足を艶かしく揺らして己の乳房を強調するように。
 熱い情熱の踊りの次は、求愛の舞踏のようにゆらりくねりと腕や足を揺らして、誘うように。

 誰も見ていない、誰かが見ている、女は楽しそうに、口を開けて笑い見せて、店内の全員を見るように。
 両手を広げてターン、滑るように前へ、近くにいる男に触れるか触れないかの距離までよって、波のように離れ。
 息が上がる、はぁ、はぁ、はぁ、熱い呼気が店の空気を揺らす。
 大きく吸って、吐き出して、瞳を潤ませ腰くねらせて。

 最後の最後は、入口の近くで、動きを止めて、一礼。

 全身が汗で濡れて、女は呼吸を整えるための息を吐く。
 酔客の方を眺めやる―――マスターの方を見やり、カウンターへと近づく。

 コップ一杯の水を貰って、それをゆっくりと飲んでいく。