2017/05/22 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にティエンファさんが現れました。
■ティエンファ > 寄り添いひしめき合うように建てられた貧民街の建物の群れ、それを見下ろす月は青白く。
ボロボロで、木っ端を寄せ集めたような粗末な建物の上を、跳ねる影があった。
数歩分の建物の隙間を、駆ける勢いのまま飛び越せば、その下の喧騒はあっという間に後ろに流れる。
「てぇ、待ちやがれっ!」
棒を片手に携えた異国の少年は、前を駆ける人影に声を投げつける。
ぼろい屋根を自分と同じか、それ以上に巧みに逃げる相手は、盗賊。
■ティエンファ > 事の起こりはこうだ。
貧民街のとある酒場で軽く吞んで、さあ帰るか、と思った少年の後ろで、騒ぎが起きた。
野次馬根性を出して振り返った所で、自分を押しのけて酒場から逃げ出したのが、今追っている相手。
騒ぎの中心にいた老人が叫ぶには、財布を盗まれた、との事。
まあ、それ位なら良くある話なのだけど。
「奥さんの形見まで入ってたってなりゃあ、捨て置けねえやな」
涙ながらに周囲に懇願する老人。 面倒事は御免だとそっぽを向く客たち。
そんな中、気付けば少年は老人に声をかけて、店を飛び出していたのだ。
■ティエンファ > 平たい土屋根を蹴り、隣の屋根へ。 腐りかけた木の屋根が靴の裏で軋む感触にひやひやする。
しかし、追う足は緩めずに、夜の貧民街、空を駆けるように二人の陰が躍る。
身軽さは伯仲。 内心で、相手の盗賊の身のこなしに舌を巻く少年。
あれだけ動けるのであれば、ケチなスリなんてやらなくても食えていけそうなもんだが、なんて思う。
「っと、降りたか!」
吸い込まれるように屋根の上から消える影。
建物の隙間にするりと入り込む影を追って、少年も建物から飛び降りる。
3階の高さだが、二階の窓の親指ほどの幅の枠を足掛かりにワンクッション。
音もなく地上に降り立てば、油断なく気配を探る。
…闇、遠くでどこからか騒ぐ声が聞こえるが、これは、違う。
「…近くにいるな、こっちを探ってる…」
誘いこまれたか、と思う。 盗賊の気配が、どこからかするのだ。
■ティエンファ > 「おい、見てるんだろ! 俺はアンタの身のこなしが気に入った!
金以外を置いてッてくれりゃあ、これ以上は追わねえ!」
油断なく棒を構えながら、暗い貧民街の裏道で声を張る。
周囲の気配を探りながらも、投げる声は本心だ。
「お互い、追って逃げてじゃあぶっ倒れちまう
俺はアンタに多分追いつけないが、アンタは俺を振り切れない
ここいらで鬼ごっこは終わりにしようぜ どうよ!」
■ティエンファ > …少しの沈黙。 しかし、気配がわずかに揺らぐ感覚。
遅れ、ことんと何かが地面に落ちる音。 そして、足音が遠ざかっていく。
少年はそれを聞きながら、しかし追わず。 その足音が聞こえなくなってから、構えを解いて音の元に近寄る。
そこには、古びた革袋。 警戒もせずに拾えば中身を検める。
…うん、と一つ頷いて、それをなくさないように、腹に締め巻いたさらしに挟む。
「聞き分けが良い相手で助かったぜ …お金は綺麗に持ってかれたけど、まあ、しゃーなしだな
爺さんも、形見が戻ってくるだけでも御の字だろう」
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にノアさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にノアさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にノアさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にノアさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にノアさんが現れました。
■ノア > そんな一部始終を見ていた人物が.. この時、 この場にもう一人居た。
( 何でこんな時にっ.. )
よく知る少年と、 何処ぞの盗賊との位置関係は、 まさに正三角形といった所。二人のやり取りに聞き耳を立て、 じっ と息を潜める。何故なら.. 女は今、 違法賭博場から盗んだ大金をローブの中に隠し持っていた。
( 早く行けってば..... せま、 ぃ.. )
突然の友人参上によって、 咄嗟に隠れた場所は最悪で。建物と建物の隙間、 無理矢理入ったものだから.. 少しでも動けば、 大量の金貨が音を立ててしまう状況。もう少し.. もう少し... 何かを拾い上げた貴方が去るのを待っていた、 が ──
『 みゃ.. お、 』
敵は、 足下に居た。通れねぇだろ、 退けよ.. と。ふてぶてしい顔付きの野良猫様に鳴かれ、 ほんの少し身体が動き
( .........くそねこっ !! )
明らかに、 チャリ.. と。誰も居ない筈の場所から、 金属音が響いた。
■ティエンファ > 音が聞こえた。 猫と同じように耳をそばだてるように目を細め、そっちに顔を向ける。
それは、闇を見透かすように真っすぐに、ノアは、少年が今までノアに向けた事の無い目を向けられる。
普段の無邪気で柔らかい眼ではない。
強く、いっそ冷たくすらある、鋭い武芸者の視線。
「…仲間が居たか? …出て来いよ、俺は隙を見せねえぜ?」
棒を向ける。 殺気である。
まだ間合いはあるが、ノアに向けられる。
■ノア > 絶対絶命って言葉はきっと、 こんな時使うんだろう.. などと、 張り詰めた空気の中やたら呑気に思った。
( なんで今、 ティエンファなの.. )
これならば、 複数人の衛兵達に囲まれた方が余程マシというもの。武術に長けている訳でも鍛練を積んでいる訳でもないけれど、 そんな女にもハッキリと感じる事が出来る。背筋が凍り付くような、 突き刺さるような.. 凄まじい殺気。其れは他でもなくあの少年から、 此方に向けられていて
「 ............... 」
逃げ出す ? いや、 こんな狭い場所から逃げ出し少年を振り切るのは.. きっと無理。猫の真似 ? いや、 絶対無理。素直に出て行く ? いや、 きっと怪しまれる。猫の真似 ? いや、 だから絶対無理。何をしていたかと尋ねられたら ? 何て答える ? 猫の真似 ?
.........ぐるぐると、 ほんの数秒の間に様々な考えがよぎるも.. 女の口をついたのは、 まさかの
「 みゃ..... ぉ、 」
( やっ.. ちゃっ、 た..... )
猫の真似。
■ティエンファ > 悩むノアに一歩進む。 先に逃げ出した盗賊と比べ、ノアはまだそこに留まっている。
と言う事は、何が狙いなのかが読めない…しかし、その理由があるはずだ、と思う。
…だからこそ、研ぎ澄ませたさっきは、混乱するノアを苛み、その胸の奥に刃を突き刺すような寒気をー…
…
…
…目を丸くする。 それから、首を傾げて。
「…何だ猫か…
って、んな訳あるかァ!」
闇に飛び込み、ノアにつかみかかる。 攻撃ではなく、組み伏せるように。
■ノア > ( もしかし、 て..... いける ? )
と.. 一筋の希望が見えた、 次の瞬間
( ─── ですよねぇぇぇ !! )
「 .....っ、 くっ.. !! 」
飛び掛かる貴方をかわそうと、 咄嗟に地を蹴った。しかし、 これが良くなかった。地を蹴り後退すれば、 何とか組み敷かれずには済んだものの..
「 ?! .........っ、 ん.. んっ" 」
此処はボロ屋の建ち並ぶ貧民街。富裕地区のようにキチンと区画整理されている訳でも無ければ、 其の家屋も建築士や職人が手掛けたとも限らない。急激に狭くなった隙間に見事、 ジャストフィット。
( .....ぁ、 終わっ た.. )
貴方が掴んだのはローブと、 金貨の詰まった革袋。其の前方には..
「 えっ、 と.. 久しぶり♡ ......... 」
家屋の隙間にぴったりと嵌まり身動きが取れなくなった、 装束姿の女が一人。
■ティエンファ > …
…
…ノアに伝わる。 凍り付くほどの殺気が、凄く生暖かくなって。
浸かるにはぬるすぎるけど、凍えるほどは冷たくない、そんなすごく微妙な目をする少年は…。
「…おっぱいとお尻が大きいってこう、時々不便なんだな…」
挟まったその姿を見れば、しみじみと頷き、まじまじと眺める。
それから、頷いて、久しぶりと返してから、拾うローブと、
「金袋…って、重っ!? …全財産?」
んんん?と言った目でノアを見る。 見つめる。 近づき、じーっと。
■ノア > ( さぁ、 どうしよう.. )
完璧に逃げ場を失った。猫の真似までして身を潜めていた不審者は、 其の顔も、 そして家屋に挟まった間抜けな姿も見られ。更には..
「 いや.. それ、 は..... 」
まじまじと、 紅い瞳が近付いて.. 明から様に言葉を濁していたものの、 其の距離が近付けば
「 きふ......... そう、 教会に寄付をしよーと思ってたのっ.. そういうとこ、 わざわざ見られるのも何だか恥ずかしいし..... つい、 隠れちゃった... 的、 な.. 」
自分でも、 ヘドが出る程クオリティーの低い嘘。とにかく抜け出せない事にはどうにもならないと、 情けないことに目の前の貴方に助けを求め
「 てゆーか..... もしよかったら、 その.. ちょっと手ェ貸してもらえない ? 」
■ティエンファ > あまりにも情けない姿に、思わず憐憫の情すら湧いて来る。
ぼりぼりと首の後ろを掻いている少年の表情からは、先程までの冷たさは無く。
そして、今更な言い訳を聞けば、はぁん?と猫がいたぶるような笑み。
「そうかそうか、そりゃあ謙虚で奥ゆかしい事だなぁノアちゃんよ?
俺としては、宗教はあんまり重要視してないから、孤児院かどっかに寄付した方が良いと思うけど…
…手を貸すのは良いけどさ、逃げ出すなよ?」
言いながら、その手を掴めば、ノアの身体が気付かないようにゆっくり力を込めて引く。
■ノア > 「 .........え ? あぁ..... 孤児院ね、 えっ と.. うん、 そうしよう かな... 」
誤魔化せた、 というよりも.. とりあえず合わせてくれているという雰囲気の貴方に、 ふわふわとした返事を返しつつ。逃げ出すなと釘を刺されれば、 当然です勿論ですと言わんばかりに こくこく頷いて。差し伸べられた腕に掴まり、 ゆっくりと貴方に身体を引っ張ってもらうと
「 .........ん、 んっ.. ! 」
無駄に身体を痛める事なく、 無事救出された。負ったダメージといえば、 よくよく見なければわからない程度の小さな擦り傷と、 装束の破れや解れ。それから.....
「 えっ、 と..... ありが と。」
未だ治まらぬ、 精神的ダメージ。短く礼を述べると恐る恐る、 白い手は貴方の持つローブと革袋へ伸び..
■ティエンファ > 気まずそうな様子を眺め、呆れたように眉を下げて、小さな溜息。
そして、引っ張り出したノアの様子を見れば、そのローブを頭から被せる。
そして、ノアには意外な事かも知れないが、お金もそのまま丸々返した。
状況と言い、ノアの泳いだ目と言い、怪しすぎるのだけれど。
「どういたしまして、だ
…俺じゃあなかったら、本当に襲われてたぞ?
ほら、盗まれる前にちゃんとしまっとけよ、ノアちゃん
…で、何をしてたんだノラ猫さん?
捕り物見物にしては、見つかったのに驚いてたみたいだけど」
にや、と揶揄うように目を細める。
■ノア > 小さな溜め息にすら、 はらはらと内心穏やかではなく。何より貴方にこれ以上嘘を重ねなくてならないと思うと、 何故だか物凄く不本意で.. ろくに視線も合わせられぬまま、 所持品に手を伸ばすも
「 ......... ?? 」
ふぁさ、 と.. 頭からローブが掛けられ、 オマケに金貨と怪しさがたっぷり詰まった革の袋まで、 あっさりと返却された。
( いや、 むしろ.... ティエンファじゃなきゃ良かったんだけどね.. )
なんて、 心の奥でひっそりと言い返しつつ。装束姿の身体と革袋を全て、 ローブの中に覆い隠して。揶揄うような視線には、 ちら.. とだけ視線を合わせ
「 それは..... なんだか物騒な雰囲気だったし、 ティエンファが怖い顔してこっち来るから.. 」
出逢いは血生臭い荒事真っ最中だったというのに、 らしくない言い訳を、 さも "か弱い女風に" 口にした。
■ティエンファ > 「…本当のことは言わなくて良いけど、嘘はそんなに好きじゃアないな」
片眉を上げて笑えば、上目でこちらを見るノアの鼻を指で軽くつついてやった。
それから、ちょっと笑えば腰に手を当てて改めてノアを眺めた。
「そんな顔するなって、別に金を巻き上げたり、出所を聞いたりはしねえよ
働いて得ようが奪おうが、それは俺がどうこう言う事じゃあない」
あっさりとそう言ってから、目を細める。
「それとも、本当に怖いまんまの方が良かったか?」