2017/05/10 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 裏通り」にラエルノアさんが現れました。
■ラエルノア > 夜ともなると、表通りはまだしも、裏通りは余程慣れてでもおらぬ限りは大人でも迷子になりかねない。
何せ灯が少ない。
夜を住処とする人間たちがひっそりと暮らす塒が並ぶような細い路地だ。
夜になり稼ぎに出たそれらの人々がいないのだから、灯が少ないのも致し方ない。
それでもいかにも怪しげな店も其処彼処に在るお陰で、それらの店の前だけは辛うじて明るかった。
「こんな宵のうちに帰れるのなら上々ね」
今夜の仕事は、どこぞの貴族か豪商か、いずれにせよ金を持て余しているのだろう人間の住むお屋敷での宴の酌婦だった。
勿論酌婦だけで済むことの方が珍しいのだが、今宵は宴の主と客との雲行きが怪しかったお陰でこんな時間に帰れる僥倖に授かった。
「『お手当』もちゃんと貰えたし。何か甘いものでも買って帰ろうかしら」
呟きつつ、丁度差し掛かった狭い間口の雑貨店を覗き込む。
胡散臭い雑貨を売る店だが、周囲に暮らす人々がちょっとした生活必需品なども買いに立ち寄る店だ。
種類は多くないが、菓子の類も置いてある。
丁度入口の扉を塞ぐ位置で店内を覗き込んでいたために、若しその店に用がある存在が居たなら邪魔をしてしまっているやも知れない。
■ラエルノア > 暫し店の前で悩んでいたものの、矢張り扉を押すこととし。
店内にてドライフルーツの入ったクッキーを買い、ついでに少しだけ品の良い紅茶の茶葉も買うことにする。
「……たまにはこれくらいの贅沢をしてもいいわよね」
店を出たところで、手の中の小さな包みを見遣りながらの独り言。
ただそれだけのことではあるものの、店からの帰路は足取りも軽く。
この裏通りには似つかわしくない弾むような靴音はやがて遠ざかり消えて行く。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 裏通り」からラエルノアさんが去りました。