2017/01/14 のログ
ご案内:「王都 貧民地区」にホウセンさんが現れました。
ホウセン > 王都の昼下がり。冬の日差しが差し込んだり雲に隠れたりする、ありふれた午後。貧民地区の裏通りに、このエリアでは少々浮いた存在が闊歩している。王国外に由来を持つ衣服に袖を通し、何よりも子供子供している四肢。羽振りの良いどこぞのお坊ちゃんが、筆下ろしの相手を探しに迷い込んだ…というのなら、一応の筋が通るといった具合。何しろ此処は、娼館が立ち並ぶ区画。日も高い内から淫靡な遊戯に耽溺しようという好色な客人達が、客引きに声をかけられたり、既に馴染みのある館に向けて足早に過ぎたり。

「ぬぅ、もう少し遅い時間にした方が良かったかのぅ。」

日が高い内からも営業している店は多いとはいえ、それでも此処が活況のピークを迎えるのは夜である事に違いはない。少し先んじて顔を出す事によって、掘り出し物の娼婦とめぐり会えないだろうかという奇手は、今の所空振り。

ホウセン > 「ま、こういう日もあろう。後刻出直すのじゃ――」

そんな捨て台詞と共に、この界隈を後にし…

ご案内:「王都 貧民地区」からホウセンさんが去りました。
ご案内:「王都貧民地区」にホウセンさんが現れました。
ホウセン > 日は落ちた。もう十分以上に夜の時間。昼下がりのリベンジという心地なのか、諦め悪く貧民地区の娼館が建ち並ぶ区画へと足を踏み入れる。丁度良い頃合というには、少しばかり出遅れた感があり、若しかしたら垂涎ものの娼婦達は、既に買い手がついて”仕事”に励んでいる真っ最中かもしれないが。芯まで冷える寒さから少しでも逃れるべく、両手は呉服の袂の中に引っ込めて、凸凹とした修繕もいい加減な石畳の上を歩く。

「あー…うむ、其れは其れで悪くないのじゃが、今日は少し違うた気分でのぅ。」

厳つい身体つきの客引きに声をかけられ、それでも萎縮することなくスルリと脇を抜ける。肝が太いのか、怖いもの知らずなのか、怖いものを判別できぬ世間知らずなのか。傍からは、その様に見えるかもしれない。夜間に妖仙のような子供子供した姿がふらついている光景は珍しく、然しこの辺りに入り浸っており、此処で春を鬻ぐ者には見慣れられてもいる。身なりと毛並みの良い小童なんて、強盗やら誘拐やらの格好の獲物でしかなく、只でさえ悪い治安を更に下方へ誘引する要素と目されても不思議ではない所だ。果たして、この地域の治安の維持を心に留める良心的な者がいれば…の話ではあるけれど。

ホウセン > 人の世に、只の商人の御曹司として紛れる際は、術の使用を極力控え目にするというマイルールがある。妖仙として馬脚を表わしてしまわないようにという現実的な配慮もある一方で、己の姿形に油断した相手が妖仙の本性に触れて驚愕する様が痛快だという、極めて趣味的な理由も有している。故に、幾ら寒くとも、快適性を確保する為の暖房なり保温なりの術は使わず、当然のようにカチカチと歯が鳴ってしまう一歩手前。それでも気合の入った痩せ我慢で表面上を取り澄ましている辺り、不合理極まりない生き物である。こういう誤魔化しを要する時、水際立った顔立ちは得だ。

「ぬ、サービスとな。いやいや、今日はその位の謳い文句で… 何、二輪車?」

顔は見知っているが名前までは知らないという別の客引きに捕まり、先刻同様に袖にしようとしたところで、下世話なフレーズに耳がピクリと動く辺り、助平っぷりは筋金入り。一晩の内に、娼婦が二人ついて彼是と奉仕をしてくれる形態に、釣り針に引っかかった魚宜しく、体を動かして多少なりとも暖を取ろうといそいそ動いていた歩みが止まる。

ホウセン > 冷え切った路上で、客引きと妖仙の交渉が始まる。その顛末、満足できる夜となったかは――
ご案内:「王都貧民地区」からホウセンさんが去りました。