2016/11/25 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にアンブロシアさんが現れました。
アンブロシア >  
アンブロシアと呼ばれるモンスターが存在する。
その強さは危険度で言えば下級クラスの強さであり、正面から闘うのであれば並みの冒険者でも十分に退治できるモンスターだ。

だがこのモンスターの危険なところは純粋な戦闘力ではなく、衣服や鎧に寄生して人間に擬態し、相手の不意をつくことで対象に覆いかぶさりながら、内包する触手の群れで獲物を貪り尽くす事にある。

動作にしても同じで、唯見た目だけではなく有る程度ヒトに近しい行動を取る事だってある。
現在発見されたアンブロシアの個体では珍しい物は剣を振るい、盾で攻撃を防ぐ者まで確認された。

しかし今宵治安の悪い貧民地区を彷徨うのは其処まで希少でも強靭でもない個体である……が、危険な事には変わりは無い。
特に他の個体よりも余程餓えているのか、人間の動作の真似事も乏しく、まるで亡者か浮浪者の如く、ふらふらと獲物を求めて彷徨うばかり………。

ずりゅ……ずる……ずるずる………

一段と重々しく響く何かモノを引き摺るような音。
音に続くはナメクジの這った跡のような、粘液が撒き散らされた地面であった。
粘液の跡から漂い夜風に混ざる生臭い香り、明らかに異常なモノであるにも関わらず、治安の悪い地域に住まう住人たちは見てみぬふりをしているのだった。

アンブロシア >  
暫く獲物に有り付く事も出来ず、ボロボロのローブに内包した触手の群れの数を増す事も出来ず、アンブロシアはモンスターの餓えはかなり危険な水域にまで到達していた。

触手は群れにして個、個にして群れ

ボロボロの朽ちかけたローブに寄生しそれを巣とし、ヒトに擬態した姿を保ったままフードを深く被った頭部を左右に向け、誰かを探しているような素振りを見せる。
だがローブに付いたフードの中の奥に潜むのは眼球ではない、触手の群れ、見紛う事なき絡み合う触手達の姿。
耳を澄ませば卑猥な濡れた音を常に絡み合い蠢く触手達が奏でている。
しかし、それも耳をフードに寄せなければ、周囲の音に紛れて夜風に消え、覗き込まなければ異様な姿と確認する事は難しいだろう。

ずる……ずる………ずるずる………

痩せ細った野良犬の脇を抜け、客を探す娼婦を横切り、ふらふらと左右に身体を揺らした千鳥足に近しい歩法で、健康で丈夫な獲物を捜し歩く……。
胎内に子種を注ぎ込んでも壊れず、その苗床に為るべく獲物は何処にいるのか……。

治安の悪い貧民地区、その治安の悪さはあまりに異様な雰囲気を放つモンスターが獲物を探し彷徨うに丁度良く、ヒトに擬態するモンスターはそれを知ってかしらずか、わざわざ人気の有る方向を貧民地区の境界線を歩き続ける。

 ボタ

ローブの裾から小ぶりの触手が重々しい水音を響かせ、大量の生臭い粘液と共に落ちて、苦痛なのか地面でのたうちまわる……。

アンブロシア >  
ずる……ずる……ずる………

モンスターは徘徊を続ける。
内包した欲望を触手を受け止めても壊れぬ相手を求め
喰らっても喰らっても喰らい足りぬほどに魅力的な獲物を求め……

異様な姿が無くなって初めて貧民地区は呼吸を始める。
喧騒と時折聞こえる悲鳴と、何時とも変わらない腐敗した世界が再び時を刻み始めるのだった……。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からアンブロシアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区酒場」にフローディアさんが現れました。