2016/07/16 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にアルさんが現れました。
アル > その家は、周囲に埋もれるよう建っていた。
昔は小綺麗だったかもしれないが、今はボロボロの家に、雑草が伸び放題の小さな庭。
貧民区ではよく見る壊れかけの家の一つ。そんな場所だからこそ、秘密を隠すのに使われているのかもしれない。

「調査の結果、ここが怪しいってね」

黒髪の少年は、小さく呟く口元に笑みが浮かび、アホ毛もピコピコ動く。
夜の闇に紛れ足音を消し、庭から家の中に窓から侵入すると、目的の一室まで進んでいく。
ある貴族の執事が買ったと記録にある古家。外観と違い内部は掃除もされており、最近も人の出入りがあったことが窺える。
その、とある貴族が隠した秘密が何かを探るのが今回の仕事。
敵対する貴族なのかもしれないが、ギルド経由なので詳しいことは知らないし、知ろうとも思わなかった。
地道な調査の結果で探り当てた場所。これでハズレだった場合、泣くに泣けない。特に財布の中身が。

アル > 薄暗い廊下を進む足取りに迷いなく、裏庭に面したある一室に来ると、扉の前で聞き耳や罠感知などを行い、安全を確認した後、扉を開けて室内に入った。
そこは書斎のような作りで、この家には不釣り合いとしか思えない。

「……当たりか……な?」

呟いた後、まだ確証はないと首を左右に振る。
部屋の窓近くにあった大きな机を発見したので、そこまで進むと、一冊の本を発見。
まるで読んでくださいと言わんばかりの本に罠の可能性も考えたが、それなら、もっとそれっぽくするだろうと中身を確認してみることにした。
鞄を下すと机の上にあった蝋燭ではなく、自分のランタンを机の上に置き、明かりを灯す。
外から光が見えないようにシャッターを調整し、机と室内の一部を明るくすると、机の上の本を広げ内容を確認していった。

アル > 「……こ、これは!」

本の内容は、ある貴族の赤裸々な性の記録。
初めての女性、お手付きにしたメイド、手籠めにした村娘、妻との営み、不倫相手との密事、などなど。
更に、それを記録し、誰かに見られるかも知れない場所に置くことで、ある種の興奮を覚えることなど――確かに、ある貴族の秘密であった。
アホ毛がヘニョリと潰れた少年は、そっと本を閉じて――

「ふ、ふざけんなー!!」

――読んだ少年の絶叫が室内に木霊したのは、本を読み始めてから、然程の時間は必要ではなかった。
知らない変態紳士の性的興奮に使われたかもしれないと思うと、涙が出そうになる。

アル > なんだか、色々と馬鹿らしくなり、自分のランタンの灯を消すと、代わりに机の上の蝋燭に明かりを灯す。
ランタンの油だって無料ではないし、ここに侵入しているのが発覚しても、特に問題ないように思えたからだ。
道理で少し調べれば、見つけてくださいと言わんばかりの手掛かりの多さだったと、思い返して更に落ち込む。
取り敢えず、明るくなった書斎の他の本を軽く見てみると……案の定、同じような内容の本ばかりだった。
変な知識は更に増え――おまけに、ちょっと興奮してしまった自分が情けない。

「泣きそう……いや、哭きそう……」

数冊の本を読んだ後、机の上の本をギルドに持っていくのが自分だと考え、壁の一点ではなく遠くを見てしまう。
それでもお金は大事。
報酬と、男としての何か、それを天秤に架けると……情けなくも、報酬に傾く現実に涙しそうになった。