2016/05/13 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にタマモさんが現れました。
タマモ > 「よし、迷ったのじゃ」

貧民地区、複雑に入り組んだ路地の中、突っ立ったまま少女はぽつりと呟いた。
…何が、よし、なのかは分からないが。

まぁ、目的はいつものようにこれといってなかった。
とりあえず、適当に歩いてなんか目立った店とかあったら入ってみよう、そんな考えでいたのだ。
その結果が、歩くだけ歩いて、店もなさそうな裏路地に辿り着いたというものだった。
なんというか…癖って本当に怖い。

タマモ > 「道というものは、必ずどこかに通じておるものなのじゃ。
きっと、その先に妾の求めているものが…」

腕を組み、誰にともなく偉そうに語りながら歩みを進める。
そう、道は続く、どこまでも続く…そして、行き止まり。

「………」

沈黙。うん、なんかデジャヴを感じるが、きっと気のせいだ。
行き止まりの壁まで歩み寄り、ぽんぽんと壁を叩く。
どうやら普通の壁のようだ。…普通じゃない壁って何だろう?
壁に手をついたまま、視線を上に上げる。
まだ日は高い、雲は少しあるがよい天気だ。

タマモ > 改めて、手を付いている壁を見る。

「うむ、そうじゃな、妾にとって壁は壁でないのじゃ。
人生の壁なんぞぶち抜いてしまえ、なのじゃ」

いや、壁は壁だし、『人』生じゃないし、壁をぶち抜くな、とツッコミどころしかない。
だが、少女は気にしない。ゆっくりと数歩下がり、壁から距離を置く。
この壁を抜けた先には、一体何があるのか。

タマモ > 「今っ、妾はっ、壁を越える…!」

とんっ、と地を蹴り、身を舞わせる。
高々と舞う少女は、そのまま壁に向かって…ではなく、そのまま飛び越えた。
うん、確かに壁は越えた。

そして、飛んでから考えた。
どうか着地地点に何もありませんように、と。
今更である。

タマモ > 壁を飛び越えた先、そこには、男達に囲まれていた誰かが居た。
見えたのだが、今は着地地点へ落下の真っ最中である。
そして、その場所には…男達の内の一人が。

上から落ちてきた少女は、男の頭上に着地した。
めごっ、となんか嫌な音がした気がする。
うん、囲まれていた誰かの上に着地しなくて良かった。
どさりと着地された男が地面に倒れる。
…もちろん、それで黙っている男達ではなかった。
誰かと共に、取り囲まれる形となってしまう。

タマモ > 「あー…いや、何と言うか…」

別に乱入をしたくてした訳ではない、これは不可抗力である。
そうはいっても、相手さんから見たら仲間が一人やられてしまっている。
黙って返す気はない…というのは、分からないでもない。
困ったように、指で頬を掻き、視線を誤魔化すように空へ向けた。
はふ、溜息をつく。
このまま大人しく返す気がないなら、仕方ないだろう、と。
各々獲物を手ににじり寄ってくる男達が視線に入っている。

「まぁ、今日はあれじゃ…運が無かったと思って、諦めて帰ってくれぬか?」

囲まれていた誰かを、まだちゃんと見ていない。
どうせ事が終われば見れるんだ、その時に確認すれば良いだろう。
とりあえず、言葉で終われば良かったが…上手くはいかないものである、襲い掛かってきた…しかも、全員こちらにである。

タマモ > 「むむむ…人がこうして話し合いで終わらせてやろうと思っておれば…まったく、困ったものじゃ」

やれやれ、と肩を竦める。
襲い掛かってくる男達を目の前に、その瞳が鈍く輝き始めた。
こうなれば、そこらの人間には勝機は無い。
とはいえ、あんまり大立ち回りをするつもりも無い。
獲物の動きを紙一重で避け、最初の一人目の腕を引っ掴む。

「…ほれ、これで終わりじゃ」

その勢いを利用して、男の腕を掴んだまま、突っ込んでくる残った男達へと打ち当てるように振り回した。
タイミングは見えている、これだけで、全員が吹っ飛ばされ、大きな隙を生み出す。
ついでに、ぱちんっ、と指を鳴らして獲物を男達の視界から少しの間見えなくしてしまう。
光の屈折を利用した小細工だ。

「お主もさっさと逃げるが良いじゃろう。
妾もこのまま行かせて貰うぞ?」

そうはいいつつも、足取りはゆっくりだ。
その行き際に、獲物が消えて焦る男達の首元に、手刀を落としておいた。
素直な事は良い事だ、その誰かは言葉の通りに、路地の奥へと逃げていった。

タマモ > このままのんびりしていても、目を覚ました男達とまた一悶着だろう。
そして、まだまだ日も高い。
この場を後にして、少女は再び散歩としゃれ込むのであった。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からタマモさんが去りました。