2016/03/21 のログ
ご案内:「貧民地区 汚水の川にかかる橋」にカースドさんが現れました。
■カースド > 少女は、暗く冷たい地下牢のような部屋で目を覚ました。
何か楽しい夢を見ていた気がするが思い出せない。
飢えと渇きを覚えたが、それが満たされるようなことは今までなかったので、無視した。方法はよく心得ている。
手をついて起き上がろうとして、無いことに気付く、見れば腕は肩口で切り取られていた。
足も同様だ、太ももから先は何もない。
無くした理由も思い出した。逃げ出そうとして失敗し、見せしめのために奴隷たちの前で切り落とされたのだ。
もはや僅かな労働力ですらなくなった自分に食事が出されることもないだろう。このまま放置され、飢えて死ぬのだろう。
もう自分に出来ることは何もない、そう考えて、少女は再び目を閉じた。
■カースド > 「……っ!」
貧民地区の石橋で、少女は目を覚ました。欄干に背を預けて眠っていたのだ。
眠ったのは昼頃だったが、すでに太陽は沈む寸前で、長いを石橋に作っていた。
「あれ…あぅ……えと…。あれ……?」
恐ろしい夢を見た。逃げるのに失敗して、連れ戻されてゆっくりと死んでいく夢。いや、どっちが夢だ?
こちらが夢なのだろうか、おなかがすいたらご飯を食べることが出来て、好きになってくれる人が居る。この生活のほうが。
「……カ、カレリア……ラウ、ラ……タマモ……こわい、よ…さみ、しい……よ…。」
そう考えると、恐ろしくて恐ろしくて、涙が溢れてきた。
震える手で、左の薬指のわずかに残った根本を握る。そこを触れればいつも感じるタマモのぬくもりが、今はどこかまがい物のように思えた。
寒さからか、恐怖からか、少女は震えながら泣き続ける。
ご案内:「貧民地区 汚水の川にかかる橋」にタマモさんが現れました。
■タマモ > 何も無い、誰も居ない、そんな空間からゆらりと少女が姿を現わした。
音も無くふわりと着地をすれば、ぐるりと辺りを見渡した。
よく分からないけれど感じた嫌な感じ、それを探って転移をしたのだ。
だから、自分がこうしてやってきた場所がどこなのかはすぐには分からない。
まぁ、見渡してみれば、どこか見た事のある光景だとは分かるだろう。
…と、ぴくり、と耳が揺れる。
聞き覚えのある声?というか…聞き覚えのある声はともかく、この声は…
「………カースドじゃな?何かあったかのぅ?」
声の方角は分かるが、少女が降り立ったのは石橋から少し外れた位置。
側に居るのは分かるが、位置が見事に死角だった。
その声が泣き声と気付けば、明らかに不機嫌そうな表情を浮かべて声の主を探す。
ぐるっと見渡す、居ない。
少し移動をして石橋の上に…そうすれば、すぐにその姿が見えるかもしれない。
■カースド > 「えぐ……ぐすっ……。」
白くなるほどに、手を握りしめながら少女は泣いていた。
少女の耳がピクリと動く。聞き覚えのある声、数日間を共に過ごし、様々なことを教えてくれた声。
しゃくり上げながら立ち上がり、橋の欄干に手をつきながら声のする方へ歩く。
少し歩けば、お互いを視認出来るだろう。
「だ、ダマモぉ~~。」
涙で歪んだ視界でも、誰がいるかわかった。助けを求めるように、空いた手を伸ばす。
ぐしゃぐしゃの泣き顔で、抱きつこうとする。
「ひっく……ひっく……こ、わい、よぉー…!カース、ド……し、死に、だぐ、ない、よぉ…!!わあぁぁぁーーー!!」
説明も出来ずに、少女は声を上げて泣き始めた。
しばらくは会話をするような余裕はないだろう。
■タマモ > 石橋の上に辿り着けば、死角になっていた場所も見えるようになる。
そこに、探していた相手の姿があった。
相手の少女もこちらへと向かってきていたらしい、距離としてはすぐ近くだろう。
「うむ、カースド、左手の中指に触れて何か強く念じたじゃろう?
何かあってはと思って妾が与えて…にゅわあっ!?」
うん、勘を頼りに来て、少女の声を聞き、心配になって…と、まぁ、色々と伝える事はあった。
それを素直にまず伝えるのは少々躊躇われ、まずこうしてこれた経緯を話そうとして…いきなり抱き付かれた。
相手が相手だ、完全に油断し切っていて妙な声が洩れた。
「お、おぉ…?…どうしたのじゃ?何かあったのか?」
怖い、死にたくない、そんな物騒な言葉が少女から紡がれる。
説明もなくこの言葉を聞いた為、誰かに何かされたのか、されそうになったのか、そう勘繰る。
そんな相手が居たならば、後で少々目にものを見せてやろう。
考えながら、抱き付き泣き始めた少女の背中をぽんぽんと撫で、落ち着かせようと。
■カースド > 相手の腰辺りに顔を押し付け、汚していることも構わず、涙を流し続ける。
「うっ……ひぐ……ぐすっ……。」
背中を優しく撫でる手に落ち着きを取り戻して来たのだろう。
泣き叫んでいた少女は、しゃくりあげながら、理由を話し始める。
「こ、こわ、怖い、夢…えっぐ……み、見た、の……。」
ぽつりぽつりと、涙まじりに。
「か、カースドが……うぐ……ど、ど、奴隷、だった、とこ、から、に、逃げられ、なく、て……。
タマ、モの、こと、とか……うぅ……ひっぐ……ぜ、ぜ、んぶ夢で……。
と、とじ、閉じ込め、られ、た、ま、ま…ひっく…ひっく……し、死んじゃう……の……。
目が、さ、さめ、ても、ど、っち、が夢か……わ、わかんなくて……。怖い、よ…。やだよ、こ、これが、夢、なら……さめたく、ない……!」
渾身の力でタマモの着物を握りしめる。着物が痛むのを厭わないその行動が、どれほどの恐怖を感じているかを物語っているのがわかるだろう。
■タマモ > 余程怖い目にあったのだろうか?
少女が落ち着くまで、こうして背中を撫でる程度の事しか出来ないが…まぁ、仕方ない。
こういう状況でのこういう事は、力で無理矢理やる事ではない、そう考えているからだ。
そうしていれば、少女は少しずつ落ち着きを取り戻してきたのだろう、その理由を語りだす。
まず分かったのは、原因は夢だという事。
…あぁ、今さっき目にものをとか思ってしまっていたが、そんな相手が居なかった事は安心した方が良さそうだ。
奴隷であった頃、少しだけ話を聞いている程度しか知らない。
だが、それによって少女はこうして恐怖を思い出し、死というものを感じてしまう。
それが今まで無かったから、もう忘れて思い出さないと思っていたから、動かずにいたのだが…
前々から考えていた事を、行うべきか…ふと、思っていた。
「なるほどのぅ…それは分かった、で、カースド?お主が今感じておるのは夢なのか?
夢というのは、こう、いまいち感覚とかはっきり感じれぬものじゃろう?
ほれ、これが夢なのか夢でないのか分かるじゃろうか?」
正直、自分は慰めの言葉をかけるというのはかなり苦手だ。
下手な言葉をかけて、余計話を拗らせてしまうのも、と考えてしまう。
それでも、少女の様子を見れば…慰めの言葉ではないが、なんとか頑張ってやってみる。
言葉をかけながら、体を軽く屈め、こちらからも両手を背に回し抱き締めてやる。
■カースド > 「わ、わかん、ない……ぐすっ…。ゆ、ゆ、夢、す、すごく……は、は……はっき…り……し、してて……。
ゆゆ、床、つめ、つめ、たく、て……ひっく……。あ、の、あの、頃…あ、の、頃、のま、まま………で……えぐっ……。」
いつも以上に舌がもつれ、言葉が突っかかるし、呼吸は浅く早い。喋れる程度には落ち着いているが、まだ心は動揺しているのだろう。
抱きしめれば、少女の体が哀れなほどに震えているのがありありと伝わるだろう。
「………っ…。うぐっ………。ふっ………ぐすっ………。」
少女が完全に泣き止むには、まだしばらくかかりそうだ。
■タマモ > 「………カースド。その頃の事、どれほど思い出したんじゃ?
まぁ、言葉にせんでも良いからのぅ?」
ぽつりと、少女へと呟く。
左手は背に添えたまま、右手を少女の顔…その頬に触れ、顔を上げさせようとする。
そう出来れば額を重ねるように当て…直接に少女の記憶を覗き見る。
見えるのは、与えた言葉によって頭に浮かんだ事のみだが。
そうしている間にも、少女はまだ泣き続けているだろう。
急ぎの用事がある訳でも無し、あったとしても離れれる訳も無い。
少女の震えが止まるまでは、このままにしておくだろう。
■カースド > 手に従うままに、少女は顔を上げる。涙と鼻水でぐしゃぐしゃになっている。
「……うぁ………ひっぐ……。」
質問に答えようと口を開くが、言葉が出てこない。言わなくてもいいと言われて、そのまま口をつぐむ。
少女の記憶として浮かんでくるのは、地下牢だろうか。窓もないため年中暗く、鉄格子で閉じられた、じめじめとした冷気が支配する部屋だ。
部屋の中には少女と同じ奴隷と思しき子どもたちがうずくまって、寒さと絶望に耐えている。ミレー族も居れば、人間も居た。
そして、同じように暗く冷たい部屋の記憶。そこで少女は主人らしき人間から様々な責め苦を受けていた。
指の骨を折られ、薬品で肌を焼かれ、刃物で切り刻まれた。
いつまでも続く絶望の日々に、少女は忘れることを覚えた。
それ以降はもうほとんど覚えていないのだろう、記憶はどれもぼやけている。どれほど経って、どうやってかはわからないが、その牢獄から逃げ出せたことぐらいしか読み取れなくなった。
「………ふー………ふー………。」
ようやっと泣き止んだ少女が、息を整えながら、握りしめていた手を放す。
その様子はまるで放しても自分がどこかに落ちていかないかを確かめるよう。
放しても大丈夫とわかると、手を下ろす。
「タ、マモ…。あ、あり、がと……。ご、ごめ、んね。服……い、傷んで、ない…?」