2023/07/09 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にルプランさんが現れました。
ルプラン >  
「うー…ん…… あれ、この辺、もう……」

とぼとぼと歩くうち、いつの間にか、貧民地区と呼ばれる界隈に入り込んでいたらしい。
見るからにうらぶれた路地に佇み、朽ちかけた家屋の建ち並ぶ周囲を見回して、
しまったなぁ、と独りごちる。
肩にかけた合切袋を担ぎ直しながら、今しがた辿ってきた方向へ振り返り、

「やっぱり、戻ったほうが良いかな……んん、でも、
 あっちのほうの宿はもう、満室だらけだったし……」

今宵の宿を探すうち、うっかりこんなところまで。
これより先へ進んでも、まともな宿は見込めそうにない。
娼館の類か、連れ込み宿か、それとも外で寝るほうが安心できそうな、
治安に問題のある安宿か―――少なくとも、女が一人で泊まるのは憚られる。
特に、懐があたたかいとなれば、尚のことだ。

無意識に胸元を軽く掌で押さえ、思案顔で唇をかみしめる。
どうしたものか、―――答えは、すぐには見つからない。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にコルボさんが現れました。
コルボ > 平民地区で酒を煽り、そこそこの飯を喰らってその帰り。
今日の宿はどうしようかと思案顔で貧民地区に向かう。

この時期、王都外周の貧民地区のほうが涼しくて夜は過ごしやすいのもある。
日当たりが悪いのも悪いことばかりではない。

どこか適当なねぐらに向かおうかと思っていた矢先。

「……んお?」

貧民に住んでいるにしてはまあまあ身なりの良い出で立ちの人影を見据えて。
その仕草、胸元に当てた手の平。さて、迷い込んだのだろうかとも思いつつ、歩みをそちらへ向けて。

「おぉーい、どうしたよアンタ。
 この辺は治安悪いから女でふらつくのあぶねえぞ。」

 見てくれで言えばレザーアーマー、ことさらセンスの悪そうなバンダナを巻いた男が
ズボンのポケットに両手を突っこんだまま近づいてくる。

ルプラン >  
こちらへ近づいてくる足音、そして明らかに、こちらへ向けられた声。
この辺りに馴染みの店も知り合いも居ない身は、そこそこ警戒心を露わに振り返った。

「――――――…… えぇ、と」

一見したところ、あまり稼ぎの良くなさそうな冒険者か。
などと失礼な思考を巡らせつつ、答えを返す前に暫しの間をあけて。

「やっぱり、この辺、もう外周なんだよね。
 思った通り、………えっと、あんたさ。
 この辺、詳しかったりする?」

彼我の距離、女の足でおおむね、三歩強。
不意打ちで襲われてもまあまあ逃げ出せそうな距離を保って、
土地勘のありそうな男を、この際、利用しようかという問いかけだ。

コルボ > 明らかに警戒している。
言葉を返す前に、こちらをよく観察して、……間合いも図っている?

最初は町の人間かと思ったが、どうにも視線というかものの見方が
同業くさいが、この異常な警戒ぶりはなんだろうか。

「んだな。こっからあっちに行けばもう廃屋まみれで路地裏も入り組んでる。
 住み着いてる奴等の独壇場だよ。」

 聞かれれば閑散とした方角をあごで指し、それから貴女を改めてみて。

「詳しいつか、どこに何の店があるか知ってるし、路地裏の構造も足が覚えてるくらいにはな?」

 貴女が間合いを維持していることを理解して、それでなお警戒を解くように
 一歩間合いを更に退く。

「最近王都に来たクチか? 宿でも探してんなら、貧民地区でも鍵付きの宿空いてるところ知ってんぜ」

ルプラン >  
この場合、相手が男であるからとか、
身なりがどうこうとか、そういうことは関係が無い。
いつ、どんなきっかけで呪いが発動するかわからない女としては、
老若男女、誰が来たってこのぐらいの警戒はする。
――――仕事帰りで、懐があたたかい、というのもあるし。

「廃屋ね、本当に廃屋で、だぁれも住んでないなら良いんだけど。
 住んでる人が居るってのは、ちょっと問題かな……」

男が、あっち、と言ったほうを一瞥し、溜め息交じりに軽く肩を竦めた。
視線を男のほうへ戻せば、相手もこちらを見ている。
今のところ、特に害意は感じないが、油断は出来なかった。
慎重に、距離を目ではかりつつ、

「王都にはそれなりに慣れてるんだけど、この辺はね、
 あんまり近づかないようにしてたから……、
 ―――――― そんなとこ、あるの? この辺で?」

鍵付きの宿。
願ってもないことだが、にわかには信じられない。
はっきり言って疑っている目つきで、男を窺い見る。
この界隈へ足を踏み入れることを徹底して忌避してきた女の、
偏見に根差した疑念だったが、果たして。

コルボ > 「住んでないところもあるけど見分けつかないだろ。
 実際余所の奴には分からない目印つけてて、それをタネに新入りへ難癖つけるやつもいるしな」

 問題と言われれば肩を竦めてそんな内部事情を吐露して。

 こちらの視線を警戒している、が、何とまでは分からないが警戒の質が違う気がする。
 男の女癖の評判が悪すぎて、まず向けられる視線が色事に偏ってるせいもあって尚のこと。

「なーるほどな。一般区とも境目なんてあってないようなもんだしな。
 実際近づかねえほうが正解だよ。

 ああ。あるよ。要はあれよ、地区ごとの相場の谷間に入ってるっつうか。
 貧民住みにはバカ高いが、平民にはまーまー安い。

 でも一般区住んでる奴からすればなんでこの値段で鍵までついてんだ?
 って今まさにあんたが思ってる印象を抱く。
 お買い得が印象の悪さでトータルマイナス、選択肢から外れるってわけだ。

 あそこの婆さんも宣伝しねえからな。見るだけ見て、気に入らなかったら
一般区まで案内するけど、一応見てくか?」

 両手をヒラつかせて敵意はない、とでも言いたげに。
 警戒に閉ざされて気づかれにくいだろうが、まさにチンピラ、と言われて印象通りの成りをしている男からは、
値踏みするような視線は感じられず。

ルプラン >  
「……いや、新入りになるつもりもないんだけどね」

外周界隈の廃屋を、王都での定宿にする気は毛頭ない。
お風呂に入りたいし、普通のベッドで眠りたいし。
しかしそれはそれとして、―――この界隈で、安心出来る宿があるという。
それは後学のためにも、ぜひ知っておきたいところだ。
無意識のうち、半歩、こちらから距離を詰めていた。

「ああ、うん、なるほど……んん、そっか、ふぅん……」

男の言葉から類推するに、その宿は今の懐具合なら、問題無く泊まれるらしい。
宿の主は老婆であるらしい、ということは、若い女を誘い込んでおいて、
騙して売り飛ばす―――という展開は、まあ、無いと考えて良さそう。

眉間に縦皺など寄せながら、難しい顔で考え込んだものの。
相手の風体で警戒していたわけではない女は、あっさり、頷いてみせた。

「面倒じゃなければ、ぜひ頼みたいな。
 無事宿が決まるとこまで付き合ってくれたら、案内料は払うよ」

今、自身がそれを生業にしているだけに、相手にもタダ働きはさせられない。
こころなし、三歩の距離を二歩程に縮めながら、はたと思い出したように、

「そうだ、まだ名乗ってなかったね。
 あたしはルプラン、……あんたの名前、聞いても良い?」

一応は、信用するつもりがあるのだと示すべく。
自ら名乗って、相手の名も聞こうかと。

コルボ > 「ま、やむをやまれずって時になることがあれば、そう言うところだから気をつけなってことさ」

 身なりは良い。服も擦り切れてるわけでもない。
 一般区在住なのは間違いないだろうが、この街は腐ってる。

 いつかまかり間違ってがあるかもな、などと呟いて。

 ……ふと、半歩近づくのに気づき、警戒より、必要な情報があれば警戒が解けるのかと。

「あんたも初めてこっち来たならごついおっさんとか警戒しそうなとこよかいいだろ。」

 眉間による皴を見ながら、宿を紹介したもう一つの理由も呟く。
 貧民区と言えば犯罪の温床、くらいの印象があるからこれまで近づかなかったのだろうと。

 それこそ、違法な品が出回っているからこそ、慣れた者であれば貧民地区に足を踏み入れることもある、が、
 相手の出自も分からないし言う必要もないだろうと。

「ルブランな。俺はコルボ。冒険者もやってるし学院で非常勤講師もしてんよ。
 案内料とかいーよ。まーでもそだな。普段は情報の売り買いもしてるし、
 平民区の冒険者ギルドで酒飲んでることあるから、
 必要な情報があれば当たりに来てくれや」

 名前を名乗られれば、ひとまずは最低限警戒は解いてくれたのだろうと、
 己の素性も明かし、今後の商売の為に今回は善意のサービスなのだと。

 何より”ババア絡みで金取ったら殺される”などとぼやいて頭を掻く有様で

「そういやルブランはそれなり、とは言ってたけど宿暮らしで繋いでんのか?」

 女の独り身は危ない。それは貧民区もだが一般区も変わらず。
 信用されればその身を案じるようなことを口にして。

ルプラン >  
「――――――…… 」

やむにやまれぬ事態には、可能な限りなりたくないものだ。
そう思ったが口には出さず、片目をちょっと眇めるだけにしておいた。
いつ、誰が、どんな目に遭うか知れない、この街に限らずこの国がそういうところだと、
女は身をもって理解している。

「うん、まあ、ゴツイおっさんでも良いんだけど、
 お婆ちゃんのほうが、より安心できるのは確かかな。
 ――――― ああ、いや、るぶらん、じゃないよ。る『ぷ』らん」

上手く伝わっていなかったか、と今度はそこだけ、はっきり伝わるように言い直し。
取り敢えず、もう一歩、並んで歩けるくらいには近づいてから、
ごそ、と懐を探って、

「あんた……コルボが、それなりに稼いでるってのはわかったけど、
 案内料は一応取っといてよ。
 あんたが悪い奴だとは思ってないけど、借りは作りたくないんだ」

ほい、と握り拳で差し出した、掌の中に握り込んだのは、まあ、
平民地区の平均的な酒場で、おつまみつきで一杯ひっかけられるであろうという金額。
ぐいぐいと男のほうへ突き出して、受け取れ、と目顔で迫り。

「王都に居ないことも多いからね、家とか部屋とか、借りてももったいないって言うか、
 そんな金があったら、貯めといて将来の足しにしたいと言うか。
 ……てか、なんでそんなこと聞くの?」

コルボ > 「察しは良いみたいだな」

 その仕草にそれだけ呟き、少しだけ表情を緩ませて。
 それ以上何かを言うのは今日会ったばかりの他人だから野暮だろうと。

 実際目の前の男とて、隙があれば連れ込む類の男なのだから、
 それはこの国の”そういうところ”に当たるわけで。

「あ、わり。ルプランな。
 貧民地区のごついおっさんはー、片目潰れてるおっさんの店は信用できるけどな。」

 判断基準にわりと酷いところを上げながら”苦労人の冒険者上がりで安く部屋提供したいっておっさんばっかだったからな”などと。

 更に貴女が近づけば、並び立って歩くほどになれば警戒もしていないのだろうと思えば、
 握った拳を差し出して来る。

「ルプランは義理堅いな。イイ女の特徴の一つだと思うけど、
 この街じゃ付け込まれる時もあるから気をつけろよ?」

 視線に表情に圧を感じ、頭を掻いてそんなことを言いながら、
 ため息一つ、手の平を差し出す。
 その時も、少し距離が縮まったからと言って手を握ってくるような真似をせず、
 ただ拳の下に手の平を差し出してお金を受け取るだろう。

「そこそこ渡してきやがった。

 ん? ルプランみたいなツラもスタイルもイイ、中身に筋も通ってる女が宿暮らしだったら、
 女には言い寄って勢いで圧し込めば勝ちだし後はどうにかなる、なんて、
 女の心中お察ししない奴等の良いカモだなって思ったからな?

 まーでもなー……、将来かー……、それ考えてる言われるとなー……。」

 単純に身を案じてる、と口にして、しかし貴女の意図を聞けば、
 言葉が詰まったように唸る。

「……いっそ今から行く宿、ルプランが気に入ったとしたら、長期で借りて値引き交渉すっか?」

 流石に貰い過ぎだこりゃ、と、今しがた受け取った金を何度か頭上へ放っては掴みながら。

ルプラン >  
「まーね」

んふふ、と意味ありげに微笑んで、こちらもその話題はここまでに。
相手が聖人君子だなどと思い込んだわけでもないが、
それなりの額をなかば無理矢理渡したのには別な理由がある。
さっそく吐露される情報をふむふむと聞きながらも、
からになった掌を、顔の横あたりでひらひらと振ってみせ、

「義理堅いっていうより、これ、あたしなりに身の安全考えてのことだしね。
 コルボだって、そんだけ受け取っちゃったらさ、
 たとえば今、どっかの酔っぱらいがあたしに絡んできたら、
 代わりに追っ払ってやろうかな、くらい考えない?」

女だから、男に甘えても許される、という考えこそ、危険だと思っている。
それこそ付け込まれるだろうし―――渡した金にはさりげなく、
今夜の宿までのボディガード代が含まれているのだ、とぶっちゃけた。

「てゆか、決まったとこに部屋借りて住んでても、それはそれで心配じゃない?
 そこに住んでるって一度バレちゃったら、簡単に逃げられないじゃん、待ち伏せとかされちゃうじゃん。
 ずるずるしつこく纏いついてくるよーな男が相手だったら、そっちのが怖そう」

そんなわけで。
かつ、と肩を並べて一歩、足を踏み出しながら、にっこりと。

「交渉したくなったら、あたしが自分でするよ。
 今日のところは、今夜寝る場所が確保できれば、それで充分。
 よろしく頼むよ、コルボくん」

稚気を孕んだ調子で告げて、さあ、連れて行ってくれたまえ、という構え。
今夜の宿がこの界隈の宿になるか、ダメモトで平民地区のどこかになるか、
どちらにしても、一夜の安寧は約束されたようなものだろう、と――――――。

コルボ >  苦笑してそちらを見返しながら

「追っ払うなそりゃ。筋の通し方も気持ちいいしな。
 実際世話も焼きたくなってきたし。
 かといって俺を見かける度に俺を男避けに使いそうもないしなお前さんは。」

 だからこそ根切交渉もするのだと、言われて自分が相手に踊らされてるような状況だったが、
 これは腹が立つものではない。信頼ではなく、信用できる人種とのやり取りだからだ。

「それもそだな。そう言う奴がいたら相談できる奴に相談してシメたほうが早いか。」

 そこまでしつこいと部屋云々じゃねえよなー、などと、そこは男と女の意識の差、それも、きちんと防衛を考える女性の考え方なのだと感心したように頷いて。

「そこまでしっかりしてるのになんでこんなとこに迷い込んだんだか。」

 苦笑しながら道化めいた仕草で大仰しく首を垂れる振舞い迄して見せて。
 貴女を宿へと案内し、

 店主の老婆から女をまた連れ込むつもりかと叱られる情けない場面を貴女にみられる羽目になり、
 ことさらにその宿の安全性が高いことを証明してしまうことになるだろうか。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からルプランさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からコルボさんが去りました。