2023/07/01 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にオウルさんが現れました。
オウル > 「はーい、おばあちゃん。
 こっちは治安最悪だから向こうに行きましょうねー?
 な?向こうだからな?衛兵さんこっちー!こっちー!」

貧民地区にある平民地区との境界線。
具体的に線が引いてあるわけではないだろうが、これ以上先は少年が声を張り上げている通り治安ゼロの危険地帯となっているのは間違いない。

少年はそんな危険な路地に迷い込んできた老婆をこの辺りを巡回している警邏の衛兵に引き渡して、直ぐまた先ほどの立ち位置に小走りで戻ってくる。

「……かー面倒くせぇー………。」

今夜引き受けた仕事は貧民地区に間違って入り込んでくる平民地区の住人を追い返す仕事である。

なんでこんな仕事を引き受けたかと言うとある種の点数稼ぎでもあるのだが、全うな方面の知り合いを増やす為であり、此処最近なんだかラジエル学院の生徒が迷い込んでくる事が増えているという噂で、その辺りでも生徒や教員につてが欲しいなという下心がある。

噂によると一部の施設に媚薬が放り込まれたとか?
――…うん、まだうちのギルド『は』やっていない。
ただ水は回収してこいとは言われているんだが、さてはて。

あとはシスターさんとか、炊き出しのボランティアをしてくれる人間を安全に案内する仕事も仰せつかっているのだが、まあこんな所に好き好んでくる奴なんざいないよな?と欠伸をかみ締めながら、近くにある路地の壁に背を預けながら、腕を組み交代の時間になるまでのんびり過ごす事にする。

ちなみに酔っ払いや暴れている人間を鎮圧するとボーナスが、富裕地区のお嬢様なんてレアを無事外へと案内するとこれまたボーナスがあるらしい。

そんなこっと滅多にないけどな!

オウル > ゴソ、と魔獣革のベストのポケットに手を突っ込んで中から小さな皮袋を取り出し、もう片方の手で袋の口を緩めると指先二本を突っ込んで中から棒つきの飴を引っ張り出すと、包み紙に包まれたままの棒つき飴を口に咥えて、また皮袋の口を縛り直して、ポケットに皮袋を戻す。

「仕方ない、しょうがない、誰かがやらないと。
 って言葉はよー最高に嫌いなんだけどさー……。
 でも現状だと仕方ないって奴なんだよなぁ。」

愚痴とともに口の中には広がるのは包み紙の味。
美味しいわけが無い、ので口内のそれを舌先で器用に剥いでいく、唾液でふやかした紙を歯で削り、隙間に舌を捻りこんで、くるりと剥くと、棒を指先で摘んでチュプと口から引き抜いてから、地面にペッと剥いだ包み紙を吐き出して、再び飴を口に突っ込みなおす。

――包み紙が無くなった飴は当然甘い味がする。
シンプルな糖分の味、フレーバーが無いのでただただ甘い味、しかし、この味が無くなった奥に苦手な味の層があり、その先に中心部に近い場所にそこまで味わってはダメな部分があるのも知っている。

試作型の飴。
これは今後ラジエル学院にばら撒く予定の試作品。
普通に舐めたらどれくらいの速度でそこまで到達するか、のレポートを書く為の試食であり、これもまあ稼ぐ為にギルドで顔を売るために必要な仕事で、仕方ないって奴だ。

オウル > 一層が唾液と熱で溶ける。
甘いだけの層が消え、現れるのはその後の香りを誤魔化す為のミントのすーっとした感覚と少しの苦味。
あと少しで……なので、口から出してミントの香りのため息を吐く。

「……こっからだなー………。」

そうミントの層が溶けたら媚薬のジャムが入った層。
口元にやんわりと苦味のある笑みを浮べた後に再び口に飴玉を咥え込むと、路地の壁から背中を離し、両腕を空にむけて伸ばし背筋をぐーんっと伸ばすと、交代要員が来るまでもう少しだと、また壁に背中を預けて視線を辺りに向ける。

するとどうだろう?
知り合いではないが交代要員と思しき冒険者が小走りでくる。
やっとお役目おしまいかと小さく呟いた後に小走りでくる冒険者とハイタッチすると、そのまま平民地区の冒険者ギルドの方へと消えるのだった。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からオウルさんが去りました。