2023/02/17 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区/通り」にビョルンさんが現れました。
ビョルン > 夜。この辺りでは道幅も広い通り。
荷馬車が路面を蹄鉄で打ち抜いていくような勢いで通り過ぎる。

その荷代から蹴り落され、路面に身体を強か打ち付けた。
硬貨袋が投げつけられて馬車の足音は遠くなる。

咄嗟に受け身は取れたが、石畳は固く冷たい。
襤褸切れのようにそこへ横たわりながら、袋から零れた銀貨へ手を伸ばしている。指先も痛い。

昨夜、身なりの良い女に買われたまではよかったものの。
朝になっても事実上の監禁を受けて都合一昼夜、搾れるだけ搾られ虐げられるだけ虐げられた。

「────…、」

痛ェと呟いたところで痛みが消えてたり体力が戻る訳でもなし。
夜空を見上げて己の掌を翳す。
起き上がれなければ、死ぬだけか。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区/通り」にピスィカさんが現れました。
ピスィカ > 「ほ、よいしょっ」

宵闇の中、ぴょんぴょんと路地裏を駆け抜ける女の影。
一通り走り抜ければ、急停止し、ぐぐっ、と伸びを一つ。

「やぁ、今日も働いたなぁ」

誰に言うでもなくそう呟き、とことこと歩く女。
懐には、ずっしりと確かな重み。
その感触ににんまりと笑う女であったが……。
曲がり角を曲がったところで。
ぐに、と。何かを踏んづけた。

「うん?
 うわぁおっ!?」

それが人だと気づけば、女は飛び退き。
そのまま、軽く頭を下げる。

「いや、ごめん!
 でもそんなところにいるアンタも悪いよ!?
 ……って、あれ?」

そこで女は、相手の姿を観察する。
あれ、どこかで見たことあるぞ?
そう思いつつ、顔をぐぐ~、っと近づけるが。

ビョルン > 己が街道の上に落とし物の如く転がっていること。
そして今が寒い冬の夜であること。
民家の外壁を隔てた微かな生活音や会話。
そうしたものが感覚が乖離していた。

それは足の先かどこか、体重の軽い者に踏まれた感覚すらも。

相手が顔を近づければ、買った買われたの激しい情事の痕跡をとりあえず隠蔽しようと洗われたような髪や顔に砂埃を纏い。
そうして生気なく半開いた碧眼と形の良い唇と。

「──よう…、」

鉄錆めいた匂いの息で囁く。
顔色は蒼白、同じ色の指先はしっかりコイン袋の緒を握る。

ピスィカ > あまり大きな声で言えない類の仕事をし終わった。
その帰りということもあり、トラブル、厄介事とは関わりたくない女であったが。

「んんん~~~~?」

思いっきり踏みつけてしまった。
その相手の姿。見覚えあるような、と近づいての確認をすれば。

「わぁっ、やっぱりだ!
 いつぞやの!」

声を聞いたところで、女は以前身柄を買ったことのある相手だと確信する。
そのまま、どうしたものか、と思い。距離を取ろうとする女だが。

「……なんか、前以上にひどいことなってない?」

あきらかに平時とは違うであろう相手の姿に。
そう声をかけてしまう女。
う~ん、と周囲を一度観察したのち。

「……手助けはいる?」

なんて。結局自分から火中の栗を拾いにいっていることに気づかない。

ビョルン > 「そォね、いつぞやの……」

いつぞやの淫売と名乗るほど気力体力もなく、それを示すように声は嗄れ果てていた。
とりあえず女が満更知らぬ相手でもないと知れれば、資格も触覚もじわじわと実感を持ってきた。

「前以上、それはもうかなりね」

唸りながら周囲を見回す姿に片手を持ち上げる。

「頼む」

このまま貧民地区の石畳に抱かれていては空が白む頃には命を落としているだろう。
こんな時にも決して助けは出さない監視の目を恨み、蔑みながら相手の助力を乞う。

「ちんちんもげそう」

己の全身状況を考えながらそうぼそり、と愚痴をぼやく。

ピスィカ > まさかこんな形で再会するとは思っていなかったので。
完全に驚いてしまった女だが。
すぐに調子を取り戻し。

「なんというか、この調子だと次に会う時が怖いなぁ」

次はどれだけボロボロになっているのやら、と思いつつ。
相手が手助けが必要だと素直に言うのなら。

「よし、任せて。
 よいしょ……」

まず、相手の体を支え、しっかりと壁にもたれかかるようにし。
そのまま、女は懐からポーションを取り出し、ゴクリ、と一気に飲み干す。
そのまま、相手の体を肩に担ぎ、ぐっ、と持ち上げる。
筋力増強のポーションの効果がある間は、人一人を運ぶくらいはなんとかできるが。

「なに言ってんの!?」

とんでもない告白に、女は絶叫しそうになるが。
とにかく、今はこの相手を介抱せねばならない、と。
その責任感だけでもって、相手を担いだまま移動を開始する。

「とりあえずは、今日の根城に連れてくから。
 おとなしくしててよね」

暴れたりしたら落ちるからね、と念を押しつつ。
ゆっくりと移動していく女。

ビョルン > 「野晒しのしゃれこうべになってりゃ俺ともわからないさ、安心しな」

今の状態こそが、気位の高い己にとっては死にも等しい辱めではあった。
それを冗談めかして嘯く。

「無理するな、人を、呼べ──…?」

壁に預けながら言葉を紡いでいればいとも簡単に己の体が持ち上げられた。
己の体から肉や四肢でも削がれ、軽くなったかと一瞬身を固くするも寒さにかじかんではいるが足先にも硬直したように金袋を掴んでいる指先にも感覚が通じているのを感じてほっとする。

「あと風呂とスープか粥」

己より二回りほども小さな少女に担がれて運ばれているのはどうにも格好がつかない。
人目がないことを祈りながら、細く息をついた。

ピスィカ > 「それだったら、この国じゃあ見慣れたもんだからねぇ」

笑えない笑えない、と相手に対してツッコミを入れつつ。
なんとかかんとか、相手を運ぶ女。

「人なんて呼んだら、それこそ大騒ぎでしょ」

貧民地区である以上、弱り切ってる人間が、都合よく助けてもらえるとは限らない。
むしろ、そういう人間を襲って日銭を稼ぐ類の人間も多くいるのがこの地区なのである。
そうこうしながら、自身の宿泊する宿にたどり着いた女は。
受付の店員に事情を説明し、部屋へと向かう。

「それだけ言えるなら、最低限元気は残ってるみたいね」

よいしょよいしょ、と気張りつつ。
相手の言葉に呆れる女。
そうして、部屋にたどり着けば。
まずは、ゆっくりと相手を寝台の上へと寝かせる。

ビョルン > 相手の言葉にはそれもそうか、と二度続けて思う。
ただし、そういった趣旨でこの地区に打ち棄てられたのだとしたら尚更趣味が悪いことだ。
ため息だけを零して目を瞑れば、人と会えた安心感からかふつりと意識が途切れる。

目が開けば、そこは宿屋の寝台の上。
もう少し身を落ち着けたいと再び目を閉じ。

「貴婦人の皮を被った性獣みたいな女に買われた」

そこに相手が居ようが居まいが、端的に現状を説明して手の先にまだ金袋を握っているか確認する。我ながらさもしい。

ピスィカ > なんだかんだ、筋力増強効果があっても。
人を運ぶ、というのは骨の折れる作業であり。
最終的に、相手を寝台に寝かすころには軽く汗ばむほどであったが。

「……なにそれ。
 いや、この国にはそういうのは腐るほどというか。
 吐いて捨てるほどいるけど」

相手の言葉を聞き、怪訝そうな表情になる女であったが。
よほどのことなのだろう、と相手の状況に同情しつつ。
女は、部屋に置いていた荷物から、二本のポーションを取り出し。
相手に見せる。

「どっちにする?
 一つは、強制的に治癒力を高めてケガを治すポーション。
 即効性があってケガもすぐ治るけど、めちゃくちゃ痛い。
 もう一つは、痛みを消すのがメインのポーション。
 楽にはなるけど、ケガの治癒速度はものすごく遅い」

二つのポーションを揺らしつつ、相手にそう尋ねる女。
相手の返答を待つまでの間に、ニヤリと笑い。

「もう一つ。とっておきの薬があるにはある。
 痛みは無くて、おまけに回復力もバツグンのやつが」

どれにする? と。なぜか女は楽しそうに相手に尋ねる。

ビョルン > 相手がそんな苦労をして己を運んだのも露知らず。

「人間ではあったんだけどな、色欲だけであんなにタフになれるものだとは──…」

薄目の中、相手の手にしたポーション瓶が見えると少し考える。
どれかを選ぼうとして、ふと思い出したように

「駄目だ、飲めない」

首を振って何度目にもなるため息を深くつく。

「おねだりが止まらなくなる薬やら、拷問毒やら乾き薬やらさんざん盛られたんだった──…」

相手の提案はどれも魅力的ではあったが今所望するものは違った。

「毒抜きに、真水を沢山──それと、抱いて温めてくれ」

握った金袋は枕の下に押し込み産毛の立つような寒気を誤魔化すように項を擦る。

ピスィカ > 【後日 継続予定】
ご案内:「王都マグメール 貧民地区/通り」からピスィカさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区/通り」からビョルンさんが去りました。