2022/12/07 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にアライダさんが現れました。
アライダ > 夕暮れの街、一件の書店を目指して小走りに走る女が一人。

「遅くなった」

そう言ってドアを開くと、先日見かけたばかりの巨躯がそこにあって。
思わず少し見上げるものの「先日はありがとう」と軽く会釈をし、店長の方へとまっすぐ向かっていく。

「注文の品だ。あなたの読みより幾らかは安く手に入れられたが、旅費と食費でトントンだ。依頼金の過不足はない」

そう伝えながら、荷物の中から、油紙に包まれた古ぼけた本を取り出して、店主の待つカウンターにおいただろうと。

イグナス > おやと目を細める、見知った顔だ。
先日、世話になっただか、世話しただか。そういう程度の間柄。
話を聞くに――静かな店内なので盗み聞くワケではなく耳に入ってきたのだが、何か依頼の品を渡しているらしい。

――なるほど、この店の品ぞろえの良さはコレか。
ひとり得心を得る。相変わらず店主は無口で不愛想だったが。

「よ、久しぶり……てェほどでもないか。こないだぶり。」

彼女の用事が終わるのを見計らって声をかける。
たいへん大きな、大柄な姿がぬうと近づいた。

「仕事の終わりか?」

アライダ > 「ご覧の通り、まさに今終わったとこ」
軽く肩をすくめて、相手を見上げて。雨の中で見たよりも大きな体に見えるのは、きっと彼の周囲に展示されている本が並の大きさだからだろつ。狭い部屋であることも手伝って、余計に彼が大きく見えて。

「こないだの礼に、酒でも奢ろうか。今日は待ち合わせがある」

少し笑って相手を誘い。

イグナス > 相手の提案に、ほう、と笑み。
なんぞかんぞ、奢りの酒は美味いもんだ。

「そりゃありがたいけどな、おれァ飲むし、食うぞ。」

この間はあんまり披露できなかったが、この体躯だ。相当には飲み食いする。
しかして宣言したからには行く気満々
先ほどまでいろいろと知りたかった店の内情は放っておいて、店外へと足を踏み出して

アライダ > 「その体格で並の食いっぷりじゃ割に合わないだろ?」

お見通し、と言わんばかりに軽く肩をすくめて。
店の外に出て、少し周囲を見渡して。いい店の一つや二つあるだろう。酔い潰れた時のことを考えると、宿がそばにあるタイプの店がいい。

「タダ酒タダ飯ほど美味いもんもないしな」

周囲を見渡して理想通りの店を探し。やがてじきに、良さげな店舗を見つけただろうと。

イグナス > 「そらそうさ、………実際出禁になったりとかもあったからな。」

最後のほうは、ぼそり。あんまり食いすぎて、店の食べ物をからっけつにしてしまったから。
さて、今回行く店はどうやら、過去に騒動があった類の店ではないらしい。
内心ちょっとだけ胸をなでおろして飯屋…酒場と表現するほうが、早いか。そこへ。

「違いない。そいやァ、詳しくは聞かなかったが。
 あれか、冒険者の類か、お前。」

店に入って椅子に座る。ぎしりと大きくきしんだ。
酒と、かなり大量のメニューを要求しながら問いかけて。

アライダ > 「そんなとこ。つまらん傭兵だったり、冒険者だったり。金払いのいい人の味方だ」

ペラペラとメニューを眺めて、自分は人並みの量を頼み。代わりに酒類は、それなりのペースで飲んでいくだろうと。

「アンタは? それだけの巨躯に恵まれたんなら、イイ仕事も降ってくるんじゃないのか? この前夕立の中走った時も、イイ脚を持ってた」

イグナス > 「ほン、そりゃいい。」

金の見方は己も同じ。
同じように次々と食事を頼んで、酒も。
すぐにテーブルはたっぷりの食事でいっぱいに。
熱いものからいただきますとばかりに、がし、がし、端から手を付けて。

「ンあ、まあ、おれも似たようなもんだ。
 金、ってェ意味じゃ、そんなに困ってもねえからな、それなりに楽しいことwやって、楽しく過ごさせてもらってる。」

アライダ > 気持ちよくガツガツと食べる相手の姿を眺めつつ、自分も肉と酒を楽しんで。
酔いもまわってくれば、初対面の仲でもないため警戒が緩むのか、へらへらと笑いを見せるようにもなるだろうと。

「金さえ払えばイイと思ってる依頼人が多くてさァ…。妙な目でこっち眺めてきて、身体の方買おうとするバカがいて。アンタぐらいしっかりした身体なら、舐められずに済むんだろうけど」

依頼人の愚痴をこぼしながら、酒を傾けて。

イグナス > 「ハ。そりゃ、どーしてもそういうことにもなろうよ。…おいおい、これはこれで、苦労多いンだぞ。」

酒を傾けながら、ククと笑う。女性は女性なりの大変さがあるだろうし、この体躯は体躯で、それなりに大変なのだ。
次々と酒を飲んで、飯を食らう。
あんまり掻っ込んでるって感じではないが、この体躯のせいか、いつの間にかぺろり、という感じで。

「おう、大丈夫か」

ふいに声をかける。少し女のほうは、酔いが回っているようにも見えたから。

アライダ > 「どうしてもって、どういうことだよ」
少し不服げに相手の方を眺めて。
「飯代と酒代はかさみそうだが、他人にナメられることなんてそうそうないだろ?」
羨ましい、と呟きながら、酒をごくごくとあおり。
不意に声をかけられれば、「大丈夫」と少し弛緩した笑顔を返して。
「仕事が終わったばかりで、……はは。少しくらい、飲んで騒いだって、ばちはあたらない、……」
そう言う目の焦点は、シラフの時よりもぽやんとしており。

イグナス > 「女の身体してりゃァな。よっぽどになりゃ違うんだろうが。」

でもそれは、もう女を捨てたような連中…人外の域だ。
そういうのよかいいと思うんだけどなあと笑って。
――暫し飲んだ後に、どうやら、だいぶ酒が回っているらしい。

「ばちは当たらんが、先に潰れそうだな。ったく、しょうがねェな。ほれ、立てるか。」

適度にお開きにしてしまおうと声をかける。
もちろんただお開きにするんじゃあなくて、2階の宿に連れ込むつもりなのだけども。

アライダ > 「……たてる、……」
無理やりに自分の体を起こして、机に手をついて立ち上がり。
軽く千鳥足で時折たたらを踏むから、自分で思っていたより飲んでしまったのかもしれない。一人ならともかく、今日は連れ合いがいるからなおさら無警戒というか、無防備というか。自分に下手な真似をする輩のことは、相手が見咎めてくれるだろうと勝手にあてこんでいるうち、飲みすぎてしまった。

「……世話かけるな」

ぽつんと礼を言って、手すりにつかまりながら二階の宿へと向かおうと。

イグナス > 「よし、上等だ。」

とりあえず立てるならばまだよし、…とはいえ、支えもいるか。
無防備な体にしっかりと触れて支えながら、酒場の支払いも済ましてしまう。
弱みに付け込むのはまあ、いつものこととして。
謝罪に、気にするなと笑う。

「美味い飯ももらったしな。ま、たまにゃハメ外しても、バチはあたらんだろ。」

先ほどの話を繰り返して、二階の宿へ。
さて、ほどほどに酔った彼女だけれど、押し倒して襲ってくる男に抵抗できたか、否か――

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からイグナスさんが去りました。
アライダ > 相手に連れて行ってもらった先。
もし相手が自分を押し倒してきても、むしろ歓迎するように両手を伸ばして。
与えられる熱を奔放に受け入れて、心地よさそうな声を押し殺そうともせず、快楽に酔いしれただろうと——。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からアライダさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区/通り」にビョルンさんが現れました。
ビョルン > 恥辱の罰を受けろというその内容が、曝しでも引き回しでもなく「自分の縄張りで身体を売れ」という脅しじみた内容。
故にどこかに、己を見張る眼はあるのだろう。
それが何処にいる誰か突き止めることはしない。

ただ、酒場の外壁へ体を凭れさせて立っている。
サボタージュではないと示すように通りを行く人影には時折手を招き「もしな、」と花街言葉で呼びかける。

立ち止まる者などいない。
ただ、寒さが身に堪える。

「悪趣味」

口の中でぽつなんと呟き。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区/通り」にピスィカさんが現れました。
ビョルン > (男の立ちん坊、一匹、酒場の壁にもたれてやる気なく客引き中)
ピスィカ > 「よいっ、しょおっ!」

貧民地区の建物の屋根の上を疾走する少女。
掛け声も軽やかに、次々屋根を飛び移っていく。
そうして、少女は細い路地めがけて跳躍すると。
くるんくるんと空中で二回転し、見事に着地を決める。

「……さぁて、撒いたと思うけど……」

周囲を見渡し、人影などがないことを確認し。
少女はいちど安堵の表情を浮かべるが。
すぐにゆったりと移動を開始し、ただの通行人を装う。

「とはいえ、一旦どこかに身を隠したほうがいいかな。
 とりあえず、酒場にでも……」

用心に用心を重ね、人ごみに紛れてしまおう。
そう考え、行きつけの酒場に向かう少女。
そこで少女は、酒場の壁にもたれる人物を見かける。
先回りされたか? そう考えつつ、油断なく少女はその人影へと近づいていく。
警戒はしつつ。しかし、不自然にならぬように、と。
心なしか、表情にはやや緊張の色が浮かんでいた。

ビョルン > ただ時間が経過していくのを待ち、眺めている通り。
けれども一度この地区を仕切るために養われた目がそんな目的によって曇る訳はない。
酒場へ向かう足取りの銀髪の少女が目に留まる。

『待て』

と、声を掛けかかり、けふっと咳払いで誤魔化す。
少女の纏う雰囲気に一日の終わりの晩餐や安息を酒場に求める者とは異質な緊迫や焦りのようなものの片鱗が見えたからだ。

派手に出かけた咳払いを更に誤魔化して続けた。

「お嬢ちゃん、夜の一人歩きは危ないぜ」

襟元には最安値で何でもするという意味の符丁である花飾りが見える。無論、そういったことと無縁の者は知らなかろう。
喋れば、フードの下のブロンドがちらと覗く。

ピスィカ > いよいよ、互いの声が届く、という距離まで来たとき。
その人物が咳ばらいをし、少女は一瞬だけ身を固くする。
とっさの判断。武器を抜き、攻撃すべきか。
そう思ったものの、続く言葉に、少女は冷静さを取り戻す。

「ご忠告どうも。大丈夫よ。
 今からこの酒場に入るところ……だし……」

そう返答する少女であったが。相手の襟元の花飾りを見て。
少女の言葉が止まる。
貧民地区を拠点としている少女には、意味の分かるその花飾り。
ちら、と見えたブロンドに、違和感を覚え、少女は立ち止まり。
相手の姿を値踏みするようにじろじろと視線を向ける。

「……え、マジ? なんかの冗談?
 よく見えないけど……。
 アンタ、体売ってんの?」

基本的に、路上で客を取ろうとするのは訳アリの人間が多い。
店に所属できなかったり、というのが最たる例だが。
少なくとも、男性でかつ、最安値で身を売る、というのは。
少女は見た覚えがなかったので、つい声をあげてしまう。

「……」

そこで少女は思案する。
いざという時の肉の盾、でもないが。
この謎の人物を買っておいて、損はないのではないか? と。

ビョルン > 言葉を返す少女の姿、フードの下から無遠慮な眼差しで観察をする。
まだ年若いがそこそこの、手に職のついた冒険者か、さもすれば盗賊か暗殺者か。
そうした忍び足の似合いそうな印象を感じ取れば、相手もまた己を観察しているようだった。

それから上がった、さも意外そうな声にはふ、とため息を上げる。
まさかこの会話が聞こえる距離には見張りは居らぬだろう。
ちょいと肩を竦めて返す。

「──冗談だったら良かったんだけどな」

黒の花を一輪、というのはこの地区で生活をする人間にとっては買い得、なにしろ素泊まりの宿代の半額程を意味した。
けれども、まだ少女とも言えるような相手が買い上げを検討しているとは思いも依らず。

「暇と助平心を持て余したいい女が酒場にいたら紹介してくれよ」

酒場のドアの方へ顔を向けつつ、言葉を紡いだ。

ピスィカ > かすかに、互いの間に緊張感のようなものが生じるのを感じつつも。
少女は相手を観察することをやめない。
パッと見たところの体格からは、不健康さなどは感じない。
美人局の類か、とも考えるが。それならそれこそ女性を立たせるだろう。
様々な観点から考えを巡らせるものの。結論は出てはこず。

「ということは、本当に売ってるんだ」

冗談だったらよかった、という言葉から。
相手が本意でそういったことをしているのではない、という気配を感じ取る少女。
そのまま、相手のどこか捨て鉢な言葉を聞き届ければ。

「……よし、決めた。
 アンタの今夜の身柄、アタシが買う」

そう言うと、相手の目の前に少量の金貨の入った袋を突き出し。
むんっ、と鼻息を荒くし。

「とりあえず、まずは酒と食事にしよう。
 で、そこからの話はおいおいと、ってことで」

そう一気に言い、酒場に向かって歩き出す少女。
そのまま、くるり、と後ろを振り向くと。
ほらついてこい、というかのように相手に向かって手招きをする。

ビョルン > 「本当に売っているね」

ああそうとも、と頷くとフードからはみ出た髪が揺れる。
今の境遇を受け入れるしかない立場であるが、せめてもの抵抗として強い媚び売りはしない。

そうして決断したらしき少女が金貨袋を差し出すならば、

「ナニのサイズは普通だぜ、いいのかい」

確認をしながら受け取るのはこの国の男女の性的なものの規格が強すぎるせいでもある。
けれどもどこか、色事や添い寝の相手と謂うよりは用心棒の雇用を検討するような考えっぷりであったことに、これまた訳ありさも感じつつ金貨袋を仕舞った。

「かしこまりました、お嬢様<フロイライン>」

相手が手招けば半歩離れて付かず離れずで後を追う。
ともに酒場のドアを潜り、とりあえず席に着くことが叶えばそこでやっとフードと花飾りを取るだろうか。

ピスィカ > 「……そこまでの悲壮感は無いんだなぁ」

淡々とした相手の言い方に、さらに状況などを感じ取る少女。
そうなってくると、ますますわからぬ、と。
少女は目の前の相手に対して、興味を持ち始めていた。

「そうなの?
 まぁ、そこは別にいいわよ。
 モノの大きさがすべてじゃないし」

自虐のような言葉を聞いた少女だが。
気にしない、と。手のひらを振り言い捨てる。
相手が金貨袋を受け取ったのを確認すれば。
少女は満足そうに、うん、と一度うなずき、笑顔を見せた。

「そんな堅苦しい物言いしなくてもいいって。
 てか、むしろ気軽なほうがいいかなぁ」

相手の自分への呼び方が性に合わなかったのか。
少女はそう言いつつ酒場へと入り、空いた席へと座る。
そうして、相手がフードと花飾りを取るのを見れば。

「……うっそぉ……」

そこで少女は、相手の姿をみて絶句することとなった。

ビョルン > 「可愛い買い手がつけばそりゃあね」

こうなっている経緯を話せばきりがないし、売主にそれを伝えるのも筋が違った。
故に軽口を叩いて返す。

「そうそう、だから安いっていうー」

長身に見合う四肢の長さは均衡、おまけのものも均衡である真実は脱ぐまでわからなかろう。
相手について行きがてら、

「では何て呼ぼう」

と砕けた言葉で問いつつ「俺はビョルン」と名乗るのは『己のシマで、名は偽らず身売りする』という制約に背かない為だった。
そうして酒場の席で向き合い、驚いたような声を上げている少女に少し笑いそうになって頬を緩める。

「だから、本当だって」

己もまた店の中で相手の姿をよくよく見れば、雰囲気の割にはかなり若い。
この地区の子供の独り立ちというのは早いが、それでもまだ若いと言えた。
ウェイターを呼び止めて相手に注文を言わせれば、

「どんな一夜がお望みで」

声は大きくないながら、直球で問いかけた。

ピスィカ > 「可愛ければいいの?」

大人な女性のほうがいいのでは? などと思う少女であったが。
そこには触れず、相手の言葉をつつくことだけに留めておく。

「え、そういうことなんだ?
 なんか大変だねぇ……。
 でもまぁ、私は気にしないから」

相手の軽口を信じながら、あくまでも少女は気安く相手に話しかける。
何と呼べば、と言われれば。
一瞬考えこむようなしぐさを見せたものの。

「ピスィカ。名前でそのまま呼んでくれていいよ」

結果として、普通に呼んでもらうことに落ち着く少女。
そうして、相手の名前を聞き、さらに相手の姿を認めれば。

「いや、本当か嘘かじゃないよ。
 アンタ、だって……」

驚いた表情のまま、声を上げそうになるが。
少女はそこで声を殺し。

「いや、なんでもない」

と、相手に告げる。そこで一度息を吐き。
近づいてきた店員に対し二人分の食事と酒を注文し。
そこで再度、少女は落ち着くために数度呼吸をし。

「そうね。まずは一緒に食事をしてほしいかな。
 で、それが終わったら部屋で一発。
 ってな感じでどう?
 あとは、ちょっと楽しくお話しできればいいかな」

と。相手同様、直球で返して見せる少女。

ビョルン > 「可愛くても、美人でも、なんでも」

筋金入りのプロであればここで、あなた様こそが理想の買い手であると印象付ける振る舞いをするべきだと判ってはいるが。
肩肘張らずで構わぬようであれば、率直ながらに捨て鉢にも聞こえそうな言葉を弄する。

「ピスィカ、じゃあよろしく」

そうして己の名前と姿に驚きの声を上げている少女は。
さながら、知己か有名人にでも会ったかのような振る舞いであったから──己も黙る。

「今はしがない男娼と謂うことで──…お買い上げありがとう。
 そして、とても素敵なプランだ、気に入った。
 朝まで寝ていっていいなら、もっと気に入るかな──…」

水差しの水を相手の分から先に注ぐ。
そうして晩餐を待ちながら。

「護衛料金込みでもいいぜ」

街頭で彼女に感じた印象を思い出し、試すように言い添え。

ピスィカ > 「なんでもいいんじゃん結局」

なんだよ、と呆れたように言う少女であったが。
逆にいれば、正直である、という相手の性格を感じ取り。
嫌悪感などは抱かず、むしろ好ましいな、と思っていた。

「はい、よろしく。
 ……なるほど、そういうことね。
 じゃあまぁそういうことにしときましょ」

相手の言葉を飲み込み、なんらかの考えに思い至った少女は。
それ以上、深く追及はしないことに決める。

「とはいえ、買ったのは私だから。
 主導権は握らせてもらうけどね」

自身の提案を気に入った、という相手に対し、少女は釘を刺すように言うが。
続いて相手の口から出た言葉には。再度驚いたような表情になる。

「……さすがに鋭い、けど。
 なんでわかったの?」

何を、や。何のこと? などは口にせず。
まっすぐに相手に問う少女。
ちょうどそこで、酒と料理が届き。
少女は、酒の入った器を掲げて見せる。

ビョルン > 「まぁ男だし」

包み隠さず言えば、素人らしい仕草でちょいと肩を竦める。

「そうそう、そういうも、こういうも諸々ひっくるめてね」

わかったようなわからないような答えを返しながら。
相手が続けた言葉には頷く。

「もちろん、素直な子猫ちゃんでいるよ?
 お気に召すまま、なんてね」

注文の品々が届けば己は水のグラスを掲げて乾杯の仕草をする。
相手が料理に手を付けてからそれとなくフォークを取る。

「鋭いから、であって。
 ──そこを説明すれば言葉を後付けすることになってしまうかな。
 俺はこの辺りをシマ──…、いや、この辺り、長いもんでね」

つい、今ではないという言葉が出れば慌てて言い直す。

「それで、どのくらい危険な夜になりそう?」

それでも己と睦み合おうというのだから、巨大な危機や難敵との遭遇に臨んでいるというわけでもないだろう。
主菜を口へと運びながら聞く。

ピスィカ > 「そりゃそっか」

なんとも暴論じみたことばであるが。納得する少女。
それだけ、その言葉には重みがあった。

「諸々ねぇ……。
 なんていうか、アンタも大変なのね」

少女にはわからない部分ではあるが。
なんだかとっても大変なことに巻き込まれているのだな、と。
そう断定し、分かった風なことを言う少女。

「そうしてもらえると嬉しいかな。
 買った相手に噛みつかれるとか、笑えないし」

余裕しゃくしゃく、という様子の相手に。
少女はう~ん、と難しい顔になりながら言う。
なんとも、食えない相手か? という思いは顔に浮かんでいた。

「……あっ、そっか。
 ごめんごめん。いや、うん。
 言わなくていいわ」

相手の説明を聞こうとした少女であったが。
相手が言葉を濁すようにしたのを受け、逆に困ったような表情になる。
そのまま、その話を打ち切ると。少女は酒を一気に飲み。
運ばれてきた肉にかぶりつく。

「ん~……実際のところ、分かんないかな。
 こうして身を隠してれば、案外追ってはこなさそうだし。
 ただまぁ、もしもヤバそうなら、助けてくれるとうれしい」

もぐもぐ、と肉を咀嚼し。再度酒を一気飲み。
面倒ごとに巻き込まれてはいるものの。
そこまで追い詰められてはいない、と。
少女は言葉と振る舞いでしっかりと相手に伝える。

ビョルン > 「大変っちゃ大変かもしれないけど、案外しょうもないことだから気にしないで頂戴」

少なくとも何かの密偵中であったり潜入中であったということはない。
己としてはむしろ一夜を売れ、という言いつけを今夜は遂行できた。

「感謝するよ」

だからこそ、より良い一夜に、と思う気持ちに嘘はない。
故に誠実に頷いて謝意を述べた。

己からすれば少女は少女で、臆することなく大人の男をぽんと買って宿へしけ込んでしまおうという辺り経験の豊富さと奔放さを感じられる。
生娘へするような気遣いをせずとも、互いに楽しめる相手と踏んでいる。

「いや、これはこっちの失言」

短く謝って料理を咀嚼する。
そうして少女の現状を聞けば。

「だな。
 あれからこっちを気にしているような客も入ってきてないぜ」

パンを千切りながら、これまでそれとなく周囲を窺って得た情報を告げる。

ピスィカ > 「そう言われちゃうとね~。
 アタシも、自分の身はかわいいし」

下手に踏み込んで痛い目見るのは嫌だ、と。
少女は、ややひきつった笑みで相手を見つめ返す。
少女もさすがに危機察知能力はあるようで。

「はいはい。まぁ、こういう出会いだけど。
 感謝される、ってのは悪い気はしないわね」

もしも自分が声をかけなければ、ずっと客を取っていたのだろうか。
その考えに至り、少女自身、これはいいことをしたのでは?
などと勘違いまでしてしまっていた。

「ん。お互い、触れるべきじゃないところに関しては触れないでおきましょ」

うん、と一度咳払いをし、少女は空気を切り替えようとする。

「みたいね。
 ……いやぁ、ちょっと仕事でね。
 しくじってはいないんだけど……」

聞かれてもいないのにそう語る少女。
スープをずずー、と音を立てて飲みつつ。
相手のことを見つめ。

「……そんな厄介事に巻き込まれてるっぽい相手に買われて。
 売ってやろう、とか思ったりはしないわけ?」

そこで、少女はそう率直に尋ねていた。

ビョルン > ふ。と。
ひきつり気味の表情をした少女には笑んで返すのみ。

「出会いか、確かにな──…」

きっと稀有な出会い方をしたのだろうし、普段の己を町のどこかで知っていたというのなら尚更に珍しい関係だとも言える。
そう考えて宙を睨んではフォークを動かす。

「そうそう、お互い様」

そう短くその話題を切り上げてから、再び店内を見渡すが怪しい動きは感じられないようだ。
問わず語りの少女には生返事で聞き流すことを敢えて選択する。
それから投げかけられる問いには、これまた率直に返す。

「そりゃあ、これから俺と一発やりたい女なんて今一番大事な存在に決まってるだろ」

声にも雁行にも曇りはない。

ピスィカ > 「実際、こういう風にうまく利害が一致するなんて。
 なかなかあることじゃあないだろうしね」

酒と食事を堪能していた少女は、一度満足そうに息を吐き。
相手にニヤリ、と不敵な笑みを見せる。

「そうね。本当に。
 お互い様だし、だからこそ。
 こうして、気を使わないで話せるのはありがたいわ」

もともと少女自身、気取った場や、堅苦しい空気は苦手なので。
目の前の相手のように、気を遣わずに会話できる相手というのは。
非常に好ましく、ありがたい存在なのは間違いがなかった。

「なんていうか、アンタ本当に正直っていうか。
 ……まぁ、裏切られる心配がない、ってのは。
 悪くないわね」

呆れた、というよりも。感心した、というような表情で。
少女は、相手にそう言い、どこか嬉しそうに相手を見る。
そのまま、近くを通った店員に食事の代金などを支払うと。

「じゃあ、満腹になったら行きましょうか。
 近くに、アタシが使ってる宿屋があるから」

と。相手にそう提案して見せる。

ビョルン > 「そうだ。
 一人の飯より、誰かと一緒の方がいい」

案外と昼間は縁がないか、むしろ己が相手の商売の邪魔になってしまうやも知れぬ相手でもこうして寛いでいられるのは僥倖と言えた。
ただ、買われた立場であるということは忘れずに、頷いて申したのであった。

「嗚呼、違ったか──そこは俺へと惚れるべきところなんだが」

にや、と笑うが本心からの言葉であったことは隠さない。
食事を終え、相手が代金を支払うのを見ると席を立ってフードを纏う。
宿があると聞けば手を差し出した。

「ああ、連れてってくれ──」

相手がその手を取るなら宿までは手を繋ぎ、一夜を過ごす部屋まで向かうのであった。

【継続予定】

ご案内:「王都マグメール 貧民地区/通り」からピスィカさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区/通り」からビョルンさんが去りました。