2022/11/20 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にタマモさんが現れました。
タマモ > 王都マグメール、貧民地区。
他の地区とは違い、どんな場所であれ、安全とは言えない地区だ。
ある意味では、どの地区も安全ではないが。
まぁ、その辺り、計る物差しもないし微妙か。

そんな地区の、より安全とは言えない裏通り。
少女の姿は、そんな場所の、屋根の上にあった。

なぜ居るか…と、問われれば、いつも通りの、気紛れの散歩の途中。
そんな裏通りに感じた、誰かしらの気配。
その気配を上から見下ろし、探っているのだ。

それを見付けて、どうするのか?と、更に問われれば。
…うん、とりあえず、口には出せないような事でもして、楽しもうと。
どうするのかは…やはり、相手次第。
危険から逃げそうなら、たっぷりと追い詰め楽しむのだろうし。
危険に立ち向かうなら、軽く相手をしてやっても良い。
また違った目的であったなら…それに合わせて、楽しむのだろう。

「何にしても、まずは、はっきりとさせんとなぁ…」

ともあれ、少女はぽつりと、そんな呟きを零し。
とん、とん、と屋根伝いに移動し、位置の特定に意識を向けているのだった。

タマモ > 「………ふむ」

とん、と屋根伝いの移動が止まり。
裏路地を探っていた瞳が、ある一点で止まっている。

もう少しだけ、その視線が、その場所を見詰めていれば…
不意に、少女の姿が掻き消える。
その意味は、その後は…まぁ、言わずとも、分かるものだろう。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からタマモさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にドラゴン・ジーンさんが現れました。
ドラゴン・ジーン > 夜の帳が落ちている、月明かりすらも分厚い雲に遮られてしまって禄に光は及んで来ない。
此処が爪先に火を灯して蝋燭に代わりにするかの如き貧しい民草達の区画であるならば猶更のこと。
闇夜を照らし付ける明かりとはいかに贅沢品であるのか、暗闇が跋扈超量するあばら屋ばかりが軒並み建ち並ぶこの場所では思い知らされる。
だが、夜を恐れるのは夜目の効かぬ者達ばかりだ。中にはこの暗中をこれ幸いとして活動が活発になるような生き物も居た。
静まり返っていた貧民区の片隅にそれは這い蹲っている。一見すればデカくて黒いヤモリのようにも見えるかも知れない、四足の肢を舗装すらろくにされていない剥き出しの土壌につき、長い尾は今は力なく垂れて揺れていた。
だが少しでも近づいて注視するならば、その正体がヤモリではなく、爬虫類に酷似した形状模造しているだけの巨大な不定体であるという事が解るだろう。
それも背中や腹を問わずに多くの瘤が膨れ上がり、その内包空間には不気味に極まる奇形や冒涜的な姿形の怪物達の幼体がぐるぐると渦描いていた。
狩猟をしていた痕跡が著名に、食い散らかした鼠や蟲の屍と残骸が辺りにへと散逸している。

ドラゴン・ジーン > 「………」

…最近は幸いながらに多くの子供に恵まれている。その精細胞を取り込んで生かしたまま受胎した結果が今の通りだ。
瘤に見えるものは全て内包する形状に形成した子供を育てる為の発育器官、子宮機能を持つ代替のスペースとなる。
通常採用しているその腹部だけでは足りずに全身の至る所に拵え続け、羊水の代用となる栄養液の水槽の中には疑似受精卵の急激な細胞分裂により育った奇怪な生き物の子供達が泳ぎ回っていた。
新たなる生命の発育の為に栄養を確保し、他の小動物や小蟲達を狩っていたのだが急に産気づいたのだ。それが故に一旦狩猟を中断して目立たぬ路地の物陰にへと移動し、蹲っている。
怖ろしい速度でホムンクルスの胎内で成長する子供らの体積に耐え切れずに、魚卵の膜のような瘤の表面に次々に亀裂が入り、破水染みてその内包液が溢れ始めていた。
孵化に伴う産みの苦痛よりも先んじて、己に課した目的にまた一歩近づけるという喜悦を露わにして、悍ましい怪物の体が身震いする。

ドラゴン・ジーン > 「………っ!」

ぱちゅん、ぱちゅん、と、間も無く水風船を針で突いたような音を立てて孵化器は破裂し、少々の損傷を代償にして孕んでいた子供達が産まれて来た。個体は千差万別であり、産声をあげるものも居れば無言のままに身もがく子供も居る。流出した栄養液の粘液溜りに埋もれているその一匹一匹を丁寧に咥え、ごくん、と、それを口腔内にへと取り込んで呑み込んだ。
といっても産んだばかりの子供を捕食対象としている訳ではない、マウスブルーダーという口腔内で卵を孵化させる手法をとる魚が居るが、それと同様だ。産まれたばかりの子供達を有袋類の袋の役割を果たす頤のスペースに摘まみ上げて一時的に保護しているだけに過ぎない。
このいずれか一匹でも少しでも竜に成り得るというならば可能性を捨て去る事は出来まい。皆まで浚い取ろうとしている合間においても、出産中における危険が近づいていないかどうか、その触角に放つ燐光は薄ぼんやりと周囲の夜を照らし出している。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にアラナさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からアラナさんが去りました。
ドラゴン・ジーン > 「………?」

何者かの通過が一瞬過ったような気がした。
触角を擡げ意識を巡らせるが、しかしてそこには誰も居ない。恐らくは気のせいだろうか。
ぱちぱちと灯る燐光が明滅する。

ドラゴン・ジーン > 「…………」

警戒すべき時間は経過し、後には僅かな痕跡しか残らない。夥しく流れた粘液も貧民区の乾いた風がやがて消し去ってくれるだろう。
繁殖を生きる主軸とする怪物は間も無くしてその場より静かに立ち去っていった。新たなる子供達を保護する安全な己の巣を求めて。
街の人々の営む生活の陰において、誰にも気づかれずに気配は間も無くして完全に消失する。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からドラゴン・ジーンさんが去りました。