2022/10/13 のログ
■ミンティ > 自分がこんなにびくびくしながら歩いている界隈でも、年下の少年は悠然と欠伸なんかしている。
そもそも孤児といっても、自分は屋根もあれば教育も受けられる環境で育ったのだから、比較するのが失礼な話かもしれない。
いつもながら、路地を生活の主体にしている子どもたちの逞しさには驚かされつつ、こちらの名前を呼ぶ声には、うん、うん、と首肯を繰り返し。
「よかった…おぼえててくれた。……あ、そだ。アーシャくん、でしたね」
いきなり声をかけてきて怪しい奴だと言われでもしたら、どうしようかと内心不安もあった。けれど相手からは、名前も含めて記憶してもらっていたようで安堵しつつ、自分もどうにか少年の名前を思い出し。
咎めるような声には、申し訳なさそうに頭を下げつつ、こちらまでやってくる少年の動きを目で追って。
「ううん。特に、用事が……って、わけじゃあ…ないんだけど。
いつも他の子と一緒にいたから、どうしたのかな…って、気になって。
あ…そうだ。パン、いただいたんだけど…食べますか?…よかったら、みんなで分けて…」
見知った顔が一人でいたから、念のため声をかけた。なにか困り事でもあったらと心配もしていたけれど、そうではないと知り、ほっと息を吐き。
そういえばと、仕事先でお土産に齎されていた紙包みを胸の高さに掲げ、小首をかしげた。
包みの端の方を広げると、乾燥させた果物を砕き混ぜこんだ、楕円型のロールパンの一端を見せて。
受け取ってもらえるだろうかと、ちらりと視線を向ける。先ほどまで不安そうな表情でいたけれど、話し相手がいるおかげか、今はすこし落ち着いた態度で話せているはず。
■アーシャ > 特に用事と言う訳ではない、と言われれば正直ホッと胸を撫で下ろしたい気持ちにはなる、この貧民地区は何が起きるかわからない、この時間でも比較的安全とはいえ暴漢や酔っ払いが来る可能性もあれば、抜き打ちで衛兵が来て強制的に安全ではない施設に拉致される可能性もあるし、奴隷商人が目敏く磨けば光る奴らを奴隷として連れて行くことさえある。
だからその警告だと思ったのだが、そうでもないと解れば胸を撫で下ろしたくもなるだろう、実際今彼女にその態度を見せないように弱みを見せないように堪え、傾げた首を戻しながら、さて、何とも美味しい提案をしてくれたのだが……。
今から皆を起こして分け与える?も有り得ない。
じゃあ全部自分が食べる?のも量的に無理そうなものを少しだけ年上の彼女が紙の包みを胸の高さの調度見やすい高さに持ち上げて、それが何かを見せてくれたから余計に悩む。
香りからして乾燥した果実入りのパン。
そんなのは滅多に口に出来るものでもなく、仲間達なら喜んだだろうが、時間が時間で自分と同じ年齢の仲間がウロウロして安全と言える時間でもなく、判断に迷う。
「……用事がないならいいけどさ、抜き打ち奴かと思ったよ……今調度家に帰れない事情があってさ、逃げるにも逃げれないしさ。それにパン、嬉しいけど、此処で食べるわけにもいかないし、奴ら起こして騒いだらアレだし……。」
正直に迷っている事を態度でも言葉でも彼女に告げてから、ぽんと手を打つ、いいアイデアがあると言わんばかりに。
表情を明るく、でもないが……なるべく明るく彼女のが居ることで安心しているそぶりをして、少し彼女に取り入ろう。
で、出来れば今晩は彼女のところに厄介になろうと考えた。
「そう、今から起こすのはアレだから、明日また来てくれる?出来れば早い時間なら起きてると思うし、朝ごはんにくれるとあいつらも喜ぶし、何なら今晩ミンティ姉さんのところに泊めてくれたら、朝一番にあいつらのたむろしそうな場所に案内するけどどうよ?」
と、提案をひとつ。
何以前からミンティ姉さんに興味はあったわけだ。
背丈にして自分とさほど変わらない癖に姉さんぶってこの辺りの安全ではない場所まで来て食事を配ったり、見回りをするお人よしに、少し興味をそそる大き目のお尻の曲線にだ。
もし唐突ではあるが提案を呑んでくれるなら、彼女をなるべく安全にエスコートしながら彼女の家のほうまで足取り軽くついていくし、それでも皆のところが良いと言えば隠れ家まで案内をするつもりだ。
善意には少々の善意を。
悪意には悪意を、此処で生きる秘訣である。
が、まあ隠れ家は男所帯で案内した結果……頭を抱える事にはなりそうである、あいつらが素直に寝ていなければ。
■ミンティ > 少年からの提案に、ぱちくりとまばたきをしてから考えこむ。
たしかに、大体の家庭ではもう夕食も済んでいる時間だ。路上ですごす彼らも同じような時間の流れで生活しているとは思わないけれど、今からパンを食べるには、すこし遅いだろうか。
それならば、彼の言うとおり朝食に食べてもらえる方がいいだろうと思った。
「うーん。そう、ですね。じゃあ、朝ごはんに。
……ええと。その、泊める事は……できなくは、ないんだけど…
事情…って?なにか……困った事が、あった?」
自分がどういう風に興味を持たれているかは、あまり考えてもいなかった。
精々、慈善活動に関わるおひとよしか、同じ孤児だからと、なにかと口うるさいところもあったりするお節介な年上といったところだろう。
こちらから相手に向ける視線も、少年というより、年下の男の子という印象であったため、家までついてこようとする発言にも警戒心を持ちはしない。
けれど、なにか事情があるような口振りには、眉を寄せて。
「……あ、と。こんなところで…立ち話も、あぶない…ですよね。
歩きながら……お話、しましょうか。行きましょう……?」
はっとして、周囲をきょろきょろと見回す。
物盗りが頻発するような場所ではないにせよ、治安がいい場所でない事はたしか。
今は幸いまわりに人影も確認できなかったけれど、立ち止まっているよりは動いている方がましかもしれないと、そんな提案をして。
行こうと促す声に少年が応じてくれるのならば、そのままのろのろとした歩みを再開した事だろう…。
■アーシャ > 彼女の家が安全だろうと、そこなら誰も邪魔など入らずに枕を高くして眠れる、と思って提案したが、彼女が言葉を濁すのであれば心の中だけで舌打ちをし、少し不安な隠れ家へと行く事に決める。
数人起きてるかもしれない、全員寝てるかもしれない。
幾人かは起きてそうな心当たりがあるが、起きてる奴らで分ければいいか、と考えると不思議と自分の隠れ家ではなく奴らの隠れ家に行くのはそこまで悪い案でもない。
「……ミンティ姉さんのベッドで寝たかったなー……ぼろ小屋で毛布に包まって寝るってのは微妙でさー……。いや大人がさ、酒に酔ってるんだか、人違いしてるのかわからねぇんだけど、オレを目の敵にしててさ……。」
行こう?とへらと小さく笑ってからミンティ姉さん、彼女の少し前を歩き、なるべく面倒な奴らにでくわさない様に道を選びながら歩きだす。
安全な道は何も厄介な二人組みだけではなく、ミンティ姉さんが浮浪者もどきや酔っ払いに連れ込まれないようにでもある、まだ触れてもいないうちに、彼女をどうにかされても、と言う思惑と下心を秘めながら、彼女の言う彼らの隠れ家へと。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からミンティさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からアーシャさんが去りました。