2022/09/28 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区/女郎屋の奥」にビョルンさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区/女郎屋の奥」にアイリースさんが現れました。
ビョルン > 着ていた上着は家の者に預ける。
座敷に上がると畳の上にどさりと風呂敷包みの、さながら箱かと見まごう程大きさの揃ったボール紙の束を落とす。

そうすれば己もどさりと畳の上にと崩れ、片手に握ったままの雑草一本を弄ぶ。
雑草とは言えども、猫じゃらしという通り名があっただろうか。
そのふさふさとした帆の先を畳の上につくかどうかの位置に揺らしている。
勿論、部屋に猫は居ないのだが。

アイリース > 「……なんですか? それは」

物音に反応し、ととと、と部屋に戻れば。
目の前、畳の上に見慣れぬ荷物。
そうして、何か、草をゆらゆらと揺らしている相手に。
率直にそうたずねてしまうが。
ん、んっ、と咳を払い。
ゆっくりと室内へと。

「……お飲み物は?」

なんにせよ、まずは飲み物があって損はないと思うので。
相手にそう尋ね、何かほしい飲み物はないか確認する。
私自身、仕事を終え、一息つきたいと思っていたので。
これをいいきっかけとし、小休止、とすることに決めた。

ビョルン > 「──釣書」

とか謂うらし、と言い添えた。
ただそれが本家からここまで持ち運ぶのが重かったと言うように草を持つ腕の肩を回した。
畳の上をころりと反回転して腹這いになる。
止める機会を失った草の穂振りは惰性で続き。

「ん、ぬるくて出涸らしの茶」

飲めれば何でもいいという覇気のない声上げたが、客商売のこの場所では出涸らした茶葉がむしろ貴重かもしれない。
疲れた、とも言わぬが卑屈なほどに破棄もなく見えるだろうか。

アイリース > 「……なるほど。
 ……って、これ全部ですか?」

相手の短い言葉に頷く私であったが。
荷物に近づけば、その量に思わず驚いてしまう。
いくら何でも、こんな量を運べば相当な重量になるだろうに。
……そう考えれば、相手が少しだらだらとしているような様子にも。
まぁ、納得がいくといえるわけで。

「かしこまりました」

そういう部分を考慮し、相手の求めるものを用意しに厨房へと走る。
音をたてぬようにしつつ、すばやく往復。
部屋に戻れば、机の上に湯飲みを置き。

「はい。どうぞ。
 ……ん……」

そうして、私も自分用のお茶を軽く一口飲み。
相手の体に、ぴと、と手で触れてみたりする。
別段、それに意味があるわけでもないのだが。
触れたくなったのだから、仕方ない。

ビョルン > 「ねー、どこから集めてきたんだろ……」

本家内では一度も首を縦に振らず一旦持ち帰りますとだけ告げたものだ。
人も馬も借りられず己で運ばされたのも一種の罰、と謂うのが過言であれば嫌がらせでもあり。

相手が茶を用意している間にはまた畳の上を仰向けに伸びている。

「嗚呼、目が……廻る、」

閉じもせぬ瞼の上に猫じゃらし草を振る姿はいっそ痴れ者めいている。
相手の掌が己の体の何処かに触れれば、草を持った手をぱたと下ろす。
空いた手で女の手に触れてから手を重ね、大儀そうに体を起こし胡坐をかいた。

アイリース > 「でもまぁ、わかりますよ。
 私たちの里でも。やっぱり、こういう風に。
 本人の意思関係無しに。あちらこちらからお話が。
 っていうのはありますので」

遠い過去、故郷を思い出し。
う~ん、と唸ってしまう。
もちろん、これに関しては。私の故郷である忍びの里と。
この相手の置かれた境遇と、では。
ちょっとした差異はあるのだろうが。

「……ん……っ……」

そうして、茶を用意し。
部屋に戻れば、相手はなんとも疲労しているというか。
覇気を感じられぬ様子。
とはいえ、手に触れられ返されれば。

「……ふむ。やはり。
 アナタに触れられるのは。嬉しいものです」

そんな、素直な言葉が漏れてしまう。

ビョルン > 「こんなにあっても選んでいいのは一個だと」

一人、とも一軒とも言わぬ。
釣り書の中の其々など知る気もないが、商家なり没落してなお家禄だけはある貴族なり──そんなところだと話には聞いた。

さらば、名もなき草。野良犬にとっての丁度いい棒のように貴重な遊び相手との別離に痛むほどの繊細な心はない。
手を空けてから湯呑を手にする。

繋ぐように重ねた手は二人の中間で床に置いたまま片手の湯呑を傾ければ、喉の渇きが癒える。

「…………そうですか」

相手の言葉に、すぐには返す言葉が思いつかず相槌だけを。

「それが何よりだ」

それから言い添えて緩く首を傾げる。蛇足だろうかと思う故。

アイリース > 「そうなのですか。
 ……いや、すみません。
 この国に来てから、ある種『一人の男性が複数の女性を娶る』という感覚に慣れてしまっていました」

誰も彼もがそうではない、ということは理解していたつもりだったが。
不意にこぼれた言葉を反省し、相手に頭を下げる。

「……お茶菓子は。いりますか?」

なにか、奇妙とも珍妙とも言えるような空気になったので。
相手の相槌に合わせ、そうたずねるのだが。

「……そう、ですね。えぇ。
 ……そうです」

相手からの更なる一言に、思わずうつむき、そう呟いてしまう。
自身の顔が熱くなるのを自覚し、思わず手で扇いでしまうのだが。
ふ、と。顔を上げれば。相手の方を見てしまい。
にやにやとしたにやけ面を、相手に見せ付けてしまう。

ビョルン > 「うん、だからその一山からは一個だけだと」

もう1人までは伴侶を持つことが許されるという己の地位だが、説明がややこしくなると思い口ごもる。
頭を下げられると首を振って、お菓子に話が及べば己は首を振る。

「今、味の濃いものを食べると戻す」

湯呑の中、頃合いのお茶を飲み干す。
涼しくなったここ数日ではだいぶ体の負担は楽だが、西と南に向いた角部屋で正座をして五時間待たされての幹部会、という日程が続いている。
最後の題として出されたのが縁談であるがこれをどう切り抜けるかについては無策だ。

「済まない」

顔を突き合わせて座っていられないことを短く詫びで、再度どてりと畳に伸びた。
魚河岸の大魚の如しである。
身体を倒しざまに見た女の顔、妙な笑い顔だがそれすら優しく見えた。

「ありがとう」

そんな言葉が口を突き、瞼が下りる。

アイリース > 「……はぁ。
 いえ、何も言いません。
 そも、私の国でも似たような話は溢れていたのですから……!」

特に、地位・権力を持った者であれば。
いっそ清清しいほどにそういった話が聞こえてくる。
そういった辟易を友とする話に比べれば。
乗り気でないこの相手に関しては、むしろ同情すべき余地があるとも思えた。

「そうですか。では、お茶菓子はまた今度にしましょう」

相手からの言葉を聞き、私は一度頷き。
ゆったりとお茶をすする。
そうして、相手のなんらかの謝罪が聞こえたので。

「いいんですよ」

と、言いつつ。深呼吸数度。
なんとか赤面を落ち着けようとするのだが。
さらに感謝の意までを伝えられれば。

「……うっ……。
 ん……むぅぅぅ~……」

感情が高ぶってしまい。
思わず、相手の顔、頬をぷにぷにとつついてしまう。

「今日はずいぶんと。
 私を悦ばせてくださいますね?」

なんて。小声で呟いてしまうが。
この相手には、意図は通じるだろうか。
こうして、一緒にいられるのが。
どれだけ嬉しいか、ということ。それ自体が。

ビョルン > 思えば相手も、己の装身具が増えたことに気付いていようか。
そこに触れないでくれるのは有難かった。

畳の上で伸びて聞く女の声。
赤くなって深呼吸するその姿が引っかかるように瞼に焼き付いた。
だがもう、瞼を引き上げられず、顔を突かれるがままにしてしまう。
呟かれる言葉には実感が湧かないが。
疲弊により無防備になった今では語る言葉は飾りも偽りもない言葉だったろう。

「そう、かな……
 タイを、緩めて」

水分を補充した体は一時的に死ぬように活動を最小限に絞る。
気絶するように眠りに落ち、命の心配はご無用と言うように微かな寝息を立てはじめる。
その深い眠りは半時間ほど。

アイリース > 相手の抱える事情や背景については。
『情報』でしか知りえないところもあるので。
私からは、安易に物を申せない部分がある。

「……ふぅ」

とはいえ。心配であったりなどなどはするので。
『何か』を言おうとは思うのだが。
この状況の幸せさに、何か、言葉を消されてしまう。
だが、それでいい、とも思えるので。

「……はい。かしこまりました」

疲れているであろう相手の様子をしっかりと確認し。
私は、相手の要望に応え。
相手が眠りに落ちるのを見届ける。

「さて、今のうちにやれることはやっておきましょう」

後は、邪魔はしてはいけないと思い。
私は、部屋を出て仕事の残りを片付けることにする。
当然、食事の準備などなど。
とにかく、相手が目を覚ましてから。
すぐに対応できるようにするのも忘れずに、だ。

ビョルン > 夢も見ずにぐっすりと眠る。
睡眠としては短い時間であろうが、家事をするにすれば汁物の鍋を温めたり風呂を焚き付けたりなどそこそこに仕事はあるのだろう。
熟睡するのとは矛盾するようだが女が時折自分のことに注意を向けながら甲斐甲斐しく動く気配は常に感じている。

そうした気配は実に心地よく眠りを安定させ短時間での休息の効率を上げた。まるで牧師の説話のように。

目を覚ませば要求するのは、喉を通りやすく腹に貯まる食事だろうか。

アイリース > 時折、部屋に戻ってみるが。
相手はすやすやと寝ている。

「……ふふっ」

その寝姿を見ると、なんとも嬉しくなるが。
まずは、すべきことを、と考え。
とたとたと駆け回る。

そうして、相手が目を覚ます気配を感じれば。

「……さて、お食事ですかね」

相手がそう要求してくるであろうことを私は察知し。
先んじて、それを持ったまま部屋に向かうのだ。

ビョルン > 瞼はあっても耳に蓋はないもので。
ぐっすりとした眠りの中に時折女の含み笑いは響いた。

そんな短い眠りの後、のっそりと身を起こせば夕餉が支度される。
茶を飲んでから「いただきます」とさも当然そうにそれにありつけるのも思えば行幸であった。

「あとで」

白飯を口に詰め込みがてら口にする。

「釣り書全部の封蝋を開けるの手伝ってくれ。
 見なくていいから」

持参金ありが何色、婚前交渉可能が何色と封蝋が色分けされているという話だったがいったいこの王都の空の下で何人の娘の父親が他ならぬ己の養父に弱味を握られているのだろう。
はぁ、と疲れた笑いがため息になって口を突く。

アイリース > 感知した気配により、丁度、という頃合で食事を提供すれば。
相手は、すっ、とそれを食べ始める。
よしよし、と自分の仕事に満足して頷いていた私だが。

「はい?
 ……ん~、それは良いのですが。
 中身に関しては、しっかりと目を通しておいたほうがよくありませんか?」

受け入れるにしろ、拒絶するにしろ。
文面はしっかりと見ておいたほうが、やりやすいのでは?
と思いつつ。
相手の湯飲みに、茶のお代わりを注いでおく。

ビョルン > 「いや、」

視線の向きで釣り書を示す。

「ちびっとも彼女らの人生に関わる気がないから。
 妙に覚えて先の仕事がしづらくなっても困る」

商家やら富豪がいるのならばいずれ商売では絡む気がなくはないが今は別の話。
汁物を湯気と一緒に吸い込むとほう、と息をついて。

「だから封を開けてちょっと順番を入れ替えるくらいでいいだろう。
 『好みの娘はいませんでした』と言うだけで済む」

アイリース > 「……なるほど」

相手の言葉に対し、少し考えるも。
意味するところを理解し、再度大きく頷く。
確かに。交わろうとしている縁を、ムリに拗らせた上で解こうとすれば。
ろくでもないことになってもおかしくない。

「でしたらば、お手伝いを頑張らせていただきましょう。
 ……なにせ、この量ですからね」

同じく、ちら、と見た荷物。
相当数、などという単語では足りないほどの量だ。
二人で取り掛かっても、なかなかの時間を食いそうではあるが。
手を抜ける事柄でもないだろう、と思いつつ。
私も、一度気を抜くためにお茶を飲む。

ビョルン > その上で程々の日数を空けておけば断るにも誠実さは示せると見る。
ただ、釣り書を返す日は己で持ち歩くのだけは避けたいと疲れた腕が泣いている。

「本当に。
 目を点けられて気の毒にな」

そうして時間をかけながら夕食を食べきれば、女が後片付けをする間に軽く体を洗う。それから寝衣に着替える。

「別に今日じゃなくてもいいか」

寝具を敷けばぐで、とだらしなく横たわって呟き。

アイリース > おそらく、大変だ、とか。
気の毒だ、というのは。誰も彼もなんだろう、と思うが。
あまりそれを言うのもどうなのか、と考え。

「……んふふっ」

しかし、その相手の言葉に、ついつい。
笑みがこぼれてしまう。
この相手の、こういう物言いが。
私としてはお気に入りなのである。

「そうですね。
 というか、むしろ。数日掛けてやっていくべきでは?」

相手がまた横たわるのを見て。
私は、頭の中で計算をする。
この量を処理する、となれば。
ムリに根を詰めるより、しっかりと向き合ったほうがいいだろう、と提案をし。

ビョルン > 「むしろ、と言うならばむしろ……」

なんだか上手い返しがありそうでなさそうで、暫しの沈黙。
これから日中はこの釣り書を生活圏内に置かれる女のことを考えた。

「突き返す前の日にやっちゃおう」

女心など知らぬが、相手の気が己にあるのであればその花嫁候補に選ばれた女たちのことが悔しくも気にかかってしまうのではないだろうか。

「それまでは天袋にでも仕舞っておくさ」

女には手の届かぬ押入れのさらに上を指差した。
店のみんなで手分けすれば一瞬だ、とも嘯いては微笑する。

アイリース > 「はい?」

何ですか? とたずねようとしてみるも。
なんだか、歯切れの悪さの気配を感じる。
の、だが。
すぐさま言葉を紡ぐ相手を、まっすぐに見る。

「……そう言ってると、忘れて埃を被りかねませんよ」

さすがにそれはどうなのか、と思ったので。
たしなめるように言いつつ。
そこで、私はぽん、と手を打ち。

「だったら、明日からでも、店の子に手伝わせましょう。
 早めに片付けて、余裕を持つ。
 これは大事なことですからね」

相手の言葉に同意しつつ、それなら早いうちが良い、と言い。
にっこりと相手に笑みを向ける。
とかく、問題を先送りにしてもいいことなどないですよ、と言いつつ。
私は、相手の持ち込んだ荷物を、とりあえずは、押入れにしまうことを決意するのであった。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区/女郎屋の奥」からビョルンさんが去りました。
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