2022/09/02 のログ
リク > (たくさん食べて。寝るにはまだ少し早い時間)

「……ちょっとブラブラ、してみるかな」

(満腹感にお腹を擦って街に出てみよう)

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からリクさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区『礼拝堂』」にマーシュさんが現れました。
マーシュ > 貧民地区にある教会が後援している施療院に薬や包帯を届けた後、傍にある小さな礼拝堂に足を踏み入れていた。

そこを管理するものはだれ、と決まっているわけではない。
修道女も余裕があれば掃除などで手を入れることはある程度。

多少古ぼけてはいるものの、整頓はなされているその祭壇の蝋燭に一つだけ灯りを燈す。

仄かに香る蜜の甘さ。揺らぐ焔の色をただ認めて、その前に跪いた。

する、とすべる衣擦れの音を伴いながら、軽く俯いて祈りの所作を。

あくまで簡易的なそれだが、身についた仕草は滑らかに。
諳んじる詩歌も決まっている。

朝に夕に。途切れることなく行ってきた祈りを静かに行っていた。

マーシュ > ───その行為に意味があってもなくても、それは女にとっての日常だったし。
女自身にとっては意味のあることだった。

詩歌を諳んじる声音は特に大きくもなく、むしろ囁き声のような小ささで。

王城の礼拝堂のような華麗さはないその場所は、けれど聖都において己が所属していた修道院の礼拝堂に似ていて女にとっては寛げる場所だった。

祈りの言葉を終え、組み合わせていた手をゆるゆると解いて跪いたまま視線を上げる。

マーシュ > 「─────」

燭台の火は一つきり。
どこか物寂しさを感じさせるが、それは己の心境にも似ている。

………聖都にいたときとは全く違う心持でその灯りを見つめている己に対して感じるのは驚きというべきか、それとも諦観というべきか。

それが、それでも女にとって悲観するものではないのは、穏やかに弧を描く口許が物語っていた。

マーシュ > 「────?」

ふと、そんな自分の耳に届いたのはか細い鳴き声。
人のものではないそれは、おそらくは、どこかの隙間から入り込んでしまったのだろう。

立ち上がり、視線をあちこちに───、主に視線は床に面した場所を巡り。
逃げそびれたのか、──あるいは動けないのか長椅子の影にうずくまるようにしている仔猫を見つけると、驚かせないように少し距離を取って床に膝をつく。

甲高く響く声。綿毛のような体毛が膨らんでいるあたり警戒されているのは理解ができた。だから暫し、見合うように対峙したまま。

「……どこから……。ここにいてはいけません、人が来ますし……えぇ、と……」

諭す様な言葉は人に向けるのと同じ語調。けれどそれが通じるわけでもなかった。

マーシュ > あいにくと、彼等が好むものを持っているわけではない。
手を伸ばして───己が引っかかれるだけならいいのだが、逃げ回られても困る。

女はそれほど身体能力が高いわけではない。
それに、仔猫をこの場所に留め置くことは難しいだろう。

まるで人に向ける説得の言葉を探すように向ける言葉を探しつつ。
此処で、この小さな命を掬い上げた先を考える。

王城に連れ帰ることは難しい、どうするか───。
あるいはみてみぬふりしてしまえば一番簡単なのだろうが、どうにもそういう性分ではなかった。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区『礼拝堂』」にジュリアーノさんが現れました。
マーシュ > 「────………」

じりじり距離を詰めて、指先をまず差し伸べる。
引っかかれるのかと思ったけれど、予想に反して湿った鼻先が寄せられた。

まだ手も足も小さくて、当然口も。齧られたところでさほど痛痒は感じない。

しばらくじゃれつかせて、少しずつ人間の指に慣れさせる。
ならしながら、怪我などしてないか、を毛並みを触って確認して。


「─────」

幸い、怪我などはしていないようだったからそのまま摘み上げた。
小さな威嚇は聞こえるが、抱えられたのならばこちらのものだ。
安堵の吐息をついて。

ジュリアーノ > 粗末に立てかけられた貧民街の礼拝堂の扉を開き……まず十字を指で結んだのは燭台に浮かぶシスターらしき影が見えたからだ。
片手に持った十字畳みの依頼書を片手で開きながら一歩一歩、礼拝堂の静寂を崩さぬように音立てず歩いてゆく。
まずは背後に向いたその人に一礼。

「こんにちはシスター。ここに迷い猫が入ってきたって話を聞いて
 ……こんな感じの子猫。この礼拝堂に入ってきませんでした?」

左手に持つ依頼書には迷い子猫の絵。
その背に隠された子猫は目に入らず、にっ、と白い歯列を覗かす笑みで答えをまった。