2022/01/11 のログ
紅刃 >  串焼きを食しながら、少年の短い声と共に異変を起こした飲み物を見遣った。このような術者が、このような貧民地区で屋台を開いていることに違和感を覚えつつ、頭を振った。勘ぐってどうする。何とでもなれば良い。

「いえ、そのようなことをされては……」

 代金以上のものを頂くわけにも行かず、眉根を寄せた後首を横に振る。笑顔を向けられると、こちらは目を伏せ黙って礼をした。厚意への感謝と、受け取って貰えれば良いのだが。

「……美味しゅうございますので」

 率直に感想を述べつつ、出された軽食をぺろりと平らげる。忍の勤めに身を置いていた頃は、まともな食事にありつける日の方が珍しかった。貧しいながらも身を清潔に保ち、腹も満たせる今の暮らしは、女にとっては充分すぎる。

ハシュレイド > 「ワインも開けちゃったから、後で料理に使うし、ミルクなんかは明日には使えないから」

此処で飲んでもらった方が余らなくて良いしと、中身のなくなったミルクの瓶を振って見せる。

「うんうん、そう言って貰えると料理人……いや、副業なんだけどね。
料理人として、鼻が高いよ」

本業は冒険者なんだけどねぇと、苦笑している。

「お姉さん食べるの早いね、スープならもう少しあるけど食べ、るっ?!」

皿が空になったのに気づいたのか、木箱に手をのせ、身を乗り出して聞こうとして、片手が滑ったのか体勢を崩し。
そのまま横に転がり落ちそうになる。

紅刃 > 「それでは……いえ、それでも」

 手早く食べ終え、去ろうと腰を浮かせた女は、手を滑らせたと思しき少年へと素早く身を寄せる。転がりそうになった彼をやんわり受け止めながら、急にかかった重みなど存在しないかのようにすらりと立ち上がる。

「……お料理、美味しゅうございました」

 全く態勢を崩さずに少年の手を取り、自身と同時に立たせた女は、皿や鍋が転がっていないか確かめた後、小さな声で感謝を口にした。目にも留まらぬ早業などではなかったが、女が一瞬見せた挙動は単なる貧民のそれではないと気付くかもしれない。

ハシュレイド > 「あ、っと…ありがとう」

転がりそうになって助けられ、少し驚いた様子でお礼を言って頭を下げる。

「いやいや、それが仕事だしね…えっと、すごいんだね、おねえさん」

一応は冒険者としても活動している身、自信が体術や白兵などに心得は無くても、先ほどの動きが少なくとも心得のない人間ではできない事くらいは判る。

「もしかして、冒険者とかしてる?」

首を傾げながら、少し憧れるような物を見る目で、女性を見上げて、近づいてくる。

紅刃 > 「偶然です。お怪我がなくて、何より」

 凄いと言われ、表情を全く変えないまま即答する。そして続く問いには少年を見返した。

「……いいえ。あのような仕事は、危険だと聞いておりますので」

 困惑しつつ否定した。一攫千金を狙う人々に加わったことはない。近付かれればその場で佇んだまま小首を傾げる。

ハシュレイド > 「そうなんだ…うん、でも偶然でもありがとう」

偶然と言われ、一瞬首を傾げた後、女性の顔を見て何かに納得したのか頷いて。
もう一度礼を言って、頭を下げる。

「確かに危険だよね、でも…男としては憧れる事も多いし、色々見れるから」

危険な事は否定できないが、少年的には望んでついた仕事で。

「えっと、お姉さんはこの近くで働いてるの、かな?
あ、ごめんいきなり変な事聞いて」

質問した後、しまったという顔で誤った後。
なんだか気になって、と言い訳のように言って…その視線はちらちらと女性の体に向けられる。
年頃の少年だからか、そう言った女性の事にも興味があるようで、話題に困った結果、そう言った質問になったらしい。

紅刃 > 「荒事は勿論、危地にて財宝を探し求めるとか。命じられてもいないのに、そのようなことを進んでなさる勇敢な方々がいらっしゃるそうですね」

 憧れるという少年の言葉に、女は頷きつつ肯定的な物言いで応じる。相手にそれとなく同調し、印象に残らないように立ち回ろうとするのは、最早習慣の一部となっていた。

「はい。余り遠くへも働きには出られませんし、この辺りのお店は人の入れ替わりが激しいものですから、あちこちで日雇いの……仕事、を」

 応えた女は少年の視線に気づいた後、胸元に右手を引き寄せながら目を伏せた。肉感的という形容詞から程遠い身体は、しなやかという表現が相応しいだろう。腰のくびれは、少年の目をしばし楽しませるかもしれない。

ハシュレイド > 「まぁ、普通にみれば冒険者って荒くれ者の集団だったり、死にたがりにも見えるかも」

その言葉には苦笑しか返せないのも事実、色々な意味で有名な冒険者なども違う視線で見れば異常者に映る事もあるだろう。

「そうなんだ……あのさ、もしよかったら屋台する時手伝って貰えたりしないかな。
時間がある時とかで良いんだけど…あ、あと屋台自体も毎日ではないんだけど。
その………」

お姉さんと、仲良くしたいな、という声は小さいがきちんと聞こえた。
そこに籠っているのは色々な思考や、欲なども混ざっているのは隠すことが下手な少年からはあっさりと伝わってくる。

紅刃 > 「……はい、勿論。その日その日をどうにか凌ぐ身ですので……お声がけ頂けるのは、有難く存じます」

 仲良くしたいという少年の言葉には特に表情を動かさず、また返答もしないまま、小さく頭を垂れる。ひとまず今日の所は、そのような当たり障りのないやりとりを交わした後、2人は別れるのだろう。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」から紅刃さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からハシュレイドさんが去りました。