2021/11/15 のログ
ティエラ > 貧民地区にある安酒場に、踊り子は客として来ている。
踊りを踊って、酔客から金を貰う仕事をしているが、其れだけで生きているわけではない。
冒険者として金を稼ぐ事もあるし、もう一つの職としての仕事で金を稼ぐ事もする。
今回は、冒険者としての仕事で報酬がそれなりに在るので、お客としてやって来ていた。

「うーん……。」

場所が場所だけに、お酒は、水を混ぜたもの、食事も、大したものではない。
しかし、唸ったのは、別に酒や、食事のランクが不満という訳ではない。
こう言う場所なのだから、そう言うランクの食事が出てくるのは当然だから、悩んだり、唸るものではない。
然るべきものが出てくると言うだけという物なのだ。
唸っているのは、別の事。別に気になる事があるのだ。
だから、近くの酔客が、そっとおしりを触って来ているのも、軽く叩いて止めるだけになって居る。

「もう少し、違う表現、とかあるのかしら、ね。」

メインの職業とも言える、踊り子、踊り子だから、と漫然に踊って居れば良いという訳ではない。
客を喜ばす為の踊りに研鑽は必要だ。
だから、悩みを持っている。
腕の振り、足の運び、その一つ、一つ、どれもこれも、見直し、改善が必要か、と。
ただ、ただ、それに疲れを感じることも、ない訳ではない。
お酒でも飲んで、と、今、ここに居るのだった。

ティエラ > 「……うーん。」

くい、と軽く一口、グラスを呷る。琥珀色の酒精は、しかし、薄く、薄く薄められている酒だったので、酔うには弱い。
だからこそ、余り酔わないから、のどを潤しつつ、悩むことも出来る。
と、言っても、悩み続けていても疲れてしまうし、一旦思考を辞めることにしよう。
別の時、別の所で訓練をするのも良い。

「他の踊り子の踊りを見てみるのも、良いか。」

自分だけでは、表現も、何もかも限界がある、プロだとしても、学ぶ必要がある。
と言っても、こう言う場末の酒場に居る自分では、勉強できることが少ない。
今度、他のプロの踊り子が踊っている酒場などに顔を出してみるのも良いな。そう考えて、酒を一つ煽る。
やるべきことを決めてしまえば、後はもう、気兼ねなく飲もう。

「親父、濃い酒を、くれないかしら?」

こう言う場末の酒場と言っても、常連になって居れば、さらに言えば、此処でいつも踊って集客をしていれば。
少しぐらいは融通を聞かせてくれるものだ。
詰まるところ、ちゃんとした酒を出してくれる、という訳で。
ふふ、と、目を細め、酒を一口煽る。
強い酒精が、喉を灼く、これこれ、と紅で彩った唇が、ほふ、と酒精の混じる吐息を吐き出す。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区の安酒場」にアイカさんが現れました。
アイカ > そんな安酒場に入ってくる、もう一人の踊り子。
店主に声掛け、カウンターで諸々話をする。そして──

「……えっ。取り止め?」

此処で数日後に行われる筈だった、踊り子としての仕事。
それが客入りも見込めないということがあり、結局キャンセルと相成ってしまった。
参ったな…と女は嘆息する。特別、懐に困っているわけではないが…
やはり一夜分の金が水に流れるのはショックも大きい。

溜息を吐きながら辺りを見渡すと──ふと、客として来ているのだろう。褐色の肌をした踊り子の姿が目に入った。

自分と同じ踊り子を仕事とする者。
興味を持った女は、彼女の元にゆっくりと歩み寄る。あまり変な輩だと思われないように…

「同席、いいかしら?」

口元に微笑を湛えながら話しかける。
色々と話も聞いてみたかったし、それに──先日から抱えている悩み事も、同業ならばもしかしたら相談できるかもしれない。
その思いがこの女を突き動かしていた。

ティエラ > 酒を飲んでいたところ、新たに入ってくる客―――と思いきや、そうでは無さそうな雰囲気。
彼女の服装は、肌も露わな服装、扇情的な物を思わせるようなそれに、足運びなどの動き方、そして、装飾品。
同業者だという事は、見て取れる、同じ職業だからわかる機微。
個々の酒場のマスターは味を占めたのだろう、確かに、若く美しい女が踊りをしていれば、客の入りが良くなる。
客が多くは居れば、註文も増えるので売り上げも良く成ろう、それがぼっている店だ、としても。
ただ―――ただ。それは運が悪かったと言うべきか。
メインで契約している筈の女がいる目の前で、別の若い娘を呼んでいるのだ。
酒場の親父の顔は、様子は、とてもとても、面白い。フェイスヴェールの下で、蒼く彩っている唇は三日月に吊り上がる。
口出しはしない。唯々、静かに酒を飲んでいるだけである。
結局は、取りやめにしたらしい、何だ、止めるのね、と少しばかり残念を思いながらも、おつまみを一口。
そうして居た所、向こうが此方にやって来た。

「ええ、構わないわ?一人で飲んでいるのも、寂しいと思って居た所、だから。」

自分とは真逆の白い肌、優しい夜闇の様な、黒い瞳、金色の小麦の様な髪の毛と、とても美しい女性。
一寸妬けてしまうのだけども、それはそれ、だ。
葡萄の瞳は静かに彼女の事を見やる、肌を、体つきを。彼女の肉体の作り方を見れば、どのような踊りを得意とするか、等。
まじまじ、と見やるのは失礼でもあるだろうが、彼女の方から声を掛けてきているから、少しくらいは。
彼女に向かいに座る様に手をそっと向けて見せた。

ふふ、と甘い笑みを浮かべ、カラン、と音を立てて、琥珀色の液体を、一口。

アイカ > 詰めている間、店主は困り切った風情を隠さずに女の言葉に対応していた。
後悔しているかもしれない。が、自分はもうこの店で踊ることは無いのだし既に関係ない。
そして女の興味は、話しかけた踊り子の女性へと移る。

褐色の肌は身に纏うヴェールやブレスレット等に栄えて美しい。
顔立ちもまた整っており、葡萄色の瞳が此方をじっ、と見つめてくる。
その視線を厭うでもなく、寧ろ此方からもじっ、と見つめ返した。
短い間見つめ合う、対照的な二人の踊り子。

「ふふ、ありがと。じゃあ少しの間、失礼するわね」

許可を得られれば嬉しそうに微笑み、示された向かいの席に腰を下ろした。
店主に手を上げ、軽めの酒を注文する。味は少々不安だが、この際贅沢も言っていられない。

さて。待っている間、その身体つきや顔立ちを失礼にならない程度に見つめる。
同じ踊り子でも、踊りの種類は様々だ。何を得意としているのかは、見ていれば自ずと理解できる。

「挨拶が遅れたわね。私はアイカ。──貴女に話しかけたのは、単刀直入に言うけれど…」

そこで注文した酒がやってくる。その持ち手を握りながら、言葉を続けた。

「踊りを見せてほしくてね。──最近私、少し悩んでて。他の人の踊りを参考にしようかと考えていたのだけれども…
もし貴女が見せてくれるなら、きっといい参考になると思うわ。……お礼はするわよ」

ティエラ > 店主の狼狽に、応対、さて、どうしたものだろうか、と女は考える。
目の前で起きていることに腹を立てて、契約を打ち切るのも一つの手段。
逆に、この失態をネタに、もっと、良い契約に切り替えるのも、一つの手段、面白い事になったわ、とほくそ笑む。
フェイスヴェールで、口元は隠されているから、遠慮なく笑う事が出来るのだ。

―――彼女の視線が、此方へと向けられる。

自分が彼女を見ているに対し、彼女もまた、自分を見ている。同業者なのだ、考えることは同じなのだろう。
筋肉の付き方、立ち居振る舞い、装飾に、服飾。
云い方を選ばずに言うのであれば―――、品定めをしているし、品定めをされている。
そんなお互いの視線が、絡み合う、黒曜が葡萄を見つめ、葡萄が、黒曜を見つめ返す。

「少しで、良いのかしら?
折角会えた同業者なのだもの、気のない雑談位は、したいと思わない?」

ねえ?と同意を求めるように、首を傾いで、目を細めて問いかける。
声音には楽があり、目の前の女性の踊り子との会話を楽しむつもりがありありと。
酒も入ればお互い唇は滑りやすくなるだろう、良い事だって、悪い事であっても。

「挨拶、ありがとう。アイカ。私はティエラよ、よろしくね。」

彼女の名前を覚えながら、彼女の用件を聞くために挨拶は軽めに返し、酒のジョッキを受け取る様を眺める。
飲むよりも前に、彼女は自分の用件を伝えたいようで、それは彼女にとっては大事なのだろう事が伺える。

話を聞いて、ああ、と思うのだ。
矢張り、こう言う悩みは、誰でも持つものである、表現という物は、矢張り一つではないし、自分だけだ度限界を感じる。
それを感じないのは、ごくごく、少数なのだろう、とも。

同じ職業、正反対の肌の色、そして、同じ悩み。
それは親近感を覚えて、そして、もう一つ、理解したことがあった。

「踊りを見せるのは構わないけれど。―――お礼とは?」

問いかけながらも、葡萄の瞳は、もう一度、黒曜の瞳を見つめる。
葡萄の目に映るは、言葉にせずとも伝わるのだろう、色欲。
彼女と、自分と、踊り子という職業意外の共通点。

人には、言うことの出来ない、共通点。

アイカ > 店主はメインの踊り子の思惑を他所に、粛々と注文した酒を届けに来る。
カウンターの中に戻り、静かにグラスやジョッキを洗い始めた。
──いずれにせよ、彼女の言葉一つでその男は顔を青くし、店としてどうすべきかあたふたしながら決定するのだろう。

それはさておき。

同業者、そしてそこはかとなく雰囲気から読み取れるもう一つの色。
視線を絡み合わせ、お互いを探るように。
手を結ぶに的確な相手か理解するように。

「ふふ、雑談もいいわね。望むところよ。
何ならお勧めの酒場──美味しいお酒を出す所を教えてもいいわ。今度一緒に行きましょう」

楽し気な声で誘いを掛けながら、その顔を見つめる瞳はやんわりと弧を描く。
波長は合うようだ。ならばきっと楽しい会話もできることだろう。
酒がお互いをどう転ばせるか、今はわからないにしても。

よろしくと声を返し、自らの悩み事を口にして反応を窺う。
──理解してくれているようだ。寧ろ、深く納得しているようにも見受けられた。
ホッとする。わからないと一笑に付されれば席を蹴って帰るところだったが…
彼女の人当たりの良さからそれは無いと察してはいるものの。

「お礼は、…そうねぇ。私の踊りを見せて参考にしてくれてもいいし──」

あとは。彼女の瞳に映るそれを、敏感に読み解く。色欲。
それに気づいた途端、黒曜の瞳にも同じような色がともった。
じっ、と見つめ合う。共通点を見つけた、ならば。行動に移らなければならない。

「──貴女の好きなようにしてくれていいわ。
ベッドの上で一緒に踊るのも……きっと面白いでしょうね」

そう口にして、淡く唇が笑みを形作った。

ティエラ > 「じゃあ、今度。一緒に行きましょうか。
此処だと、物騒だし、無粋な人が、沢山いるでしょうし、女同士、安全な所で飲むのも、良いと思うでしょう?」

彼女も、自分も、冒険者としての実力は有る模様、だから物騒とか言いつつも、危険が有るかないかで言えば、無いだろう。
酔客に襲われても、チンピラに襲われても、撃退できるだけの実力は、二人ともあると見受けられる。
だから、これは言葉遊びでしかない、軽く流して笑うだけの。冗談。

ただ、おいしいお酒を一緒に呑んで雑談は、とても興味があるから、其処は案内してもらう気も満々だ。
彼女とは、良いお酒を酌み交わすことも出来るだろう、そんな風に感じられる。

踊りの事も、冒険の事も、魔術師としての事も。
そういう意味では、色々と、近しい所があるものだ、と思う、まあ、そういう物なのかもね、とも。
琥珀色のお酒―――ウイスキーを一口、煽り、強い酒精に息を吐き出す。
これも又、女が店と契約した特権でもあるので、それを遠慮なく行使している。
そんな性格だと伝えるかのように。

「あらあら、情熱的。
それなら―――早速、という所かしらね?
技術を磨くなら、早い方が良いし、新たに得た技術をしっかりとモノにするには時間もかかるから。」

それは、屹度表向きの理由。
と言って、その理由は、正当なもので、技術の習得のための時間はかかるものだから。
お互いに踊りを披露しあい、高め合うのは、必要な事、なのだと。

「私の訓練場を使いましょう。案内するわ。」

しゃらん、と音がする。
ティエラが立ち上がった際に、ブレスレットとアンクレットが鳴った涼やかな音。
流れるような動きで彼女の隣に立って、そっと手を伸ばす。
顔を寄せ、彼女の耳元に、そっと、唇を寄せる。

「やくそく、よ?」

甘く優しい声音で、契約を結び、二人は、『訓練』の為に、酒場を連れ立って、出ていくのだった―――

ご案内:「王都マグメール 貧民地区の安酒場」からアイカさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区の安酒場」からティエラさんが去りました。