2021/11/01 のログ
リコリス > ほお?よく避けたな。とでも言わんばかりに、女の眉毛がかすかに上がる。
真剣に殺すつもりで投げたらしいのが伝わってくるだろうか。
そして、それを見た女の手にある手裏剣は、さらに数を増す。
次は確実に殺す気らしかった。

「この地区で人の後ろにいきなり立つ奴なんて、そいつの命か金か身体狙ってる奴しか知らんな。
今も私の理性はお前が何か武器を取り出す前にさっさと殺せと叫んでるし、
そうしないのは私にも良心があるからだ」

女は武器を下ろすも、相変わらず警戒心に満ちた冷たい目を向けてくる。

「……まぁ、とりあえずそのふざけた被り物とマントを脱いだら信用してやらんでもない」

タマモ > 南瓜の空洞、その奥を覗ければ、どこか楽しげに細める瞳が見えるだろうが。
それに反し、その動きは、おどけたようなそれ。
女の手に握られた手裏剣が増えれば、びくっ、と驚いたかのように、妙な構えを取るも。

「うむ、その意見、否定出来ぬものじゃが…
殺せとは、何とも物騒な話じゃのぅ。
妾は、そこまでの事なんぞ、するつもりはないんじゃが?」

この地区云々は、納得するものがあるも。
続く言葉に、いやいや待てと、手を振ってみせる。
そう答えながらも、武器を下ろせば、ほっと胸を撫で下ろす。

「あー…まぁ、ばれては仕方無いか」

はふん、溜息を吐けば。
もそもそと、被り物とマントを手に、それを脱ぎ去れば。
狐を模した耳、尻尾は元々見せているが。
後は、着物と言う異国風の姿が女の前に。

リコリス > 「どうにも敵が多い仕事をやっているものでね…。
そこまでの事をするつもりの奴も、口では同じことを言うだろう?」

とはいえ、目の前の少女が被り物とマントを脱げば、手にした手裏剣はさらさらと粉になって消えていく。
しかし、その耳と尻尾に女は目をやると、またぴくりと眉を動かす。

「その尻尾に耳、狐か。ミレー…とも違うな。
どんなガキかと思ってみれば…珍しいガキみたいだな」

女の瞳に、うっすらと興味の色が出てくる。

タマモ > 「冒険者?とやらは、まぁ、そんな仕事もするんじゃったか?
詳しくは、知らんがのぅ。
ふむ………確かに、そりゃそうじゃな」

女の言葉に、軽く首を傾げ、思い出すように。
そう伝える中、ちらりと、視線は女の手元に一瞬だけ向いた。
とは言え、そう気にした素振りもないが。

「九尾狐じゃ、知らんのか?
シェンヤンでは、同じ名の種が居ると、聞いたんじゃが…はてさて。
………まぁ、妾の方が、違わず年上じゃろうがな」

ミレー族、それとの違いに気付いている様子に、ほぅ、と感嘆の声を上げ。
とりあえず、それだけ教えてはおくも、シェンヤンに詳しくなければ知らんか、と。
そして、己を子供扱いする言葉に、ぼそっ、と呟きを漏らすのだ。

ちなみに、興味を抱いているかどうか。
それを問われれば、己もまた、目の前の女に興味は抱いている訳だが。

リコリス > 冒険者と言われ、女は初めて笑みを見せる。
まぁ、ここら辺に多い浮浪者やごろつきには見えないし、
かと言ってただの市民にも見えないならそう見られるかと内心納得し。

「冒険者よりもっと危ない仕事だな。詳しく聞かないほうがいい」

そして、彼女の視線の動きにも気付く。

「あぁ、これはこの国の錬金術だ。どこでも得物を出せるから便利でね。
まぁ、専門に鍛えた物よりはなまくらだが、いくらでも使い捨てられる」

そう言えば、手のひらの上にさらさらと鉄粉が集まり、少女が被っていた顔付きの南瓜を形作る。

そして、九尾狐と聞けば、ほお、と感心し。

「知っているが会ったのは初めてだな。故郷じゃ悪い噂しか聞いた事がない。
しかし地元に伝わる話じゃとんでもなく性悪で残忍だが大体は傾城の美女、と聞いたもんだが…」

顎に手を当てながら、それにしちゃちんちくりんだなと呟き。

「年上ならもっとそそる見た目でいてもらいたいものだが」

と、呟きを聞いていたのか口にして。

タマモ > 冒険者ではない、その言葉に、首は傾げたまま。

「ほほぅ、冒険者よりも、もっと危険とな?
まぁ、戦うは冒険者だけに非ず、気にはなるが、聞くなと言うならば、聞かずにおこうか」

腕を組み、他に戦うような者と言えば…と、考えはしてみるものの。
そう言われれば、面倒もあってか、考えるのを止めた。

「錬金術…あぁ、何か聞いた事が…
有から有を作り上げる、とかどうとか、そんな術じゃったか?
そこらに、同質の素があれば、と言うのは便利そうではあるものの…
何か、頭を使いそうで、面倒そうじゃ」

等価交換により生み出される、創造術、だったか。
詳しくは聞いた事がないが、そんなものだったような、と思い出しながら。
己の手にあるのと同じような、鉄分で出来た南瓜の被り物を見遣る。

「まぁ、同じ種が、必ずしも同じ、とは限らんと言う事じゃ。
………母様は、そんな感じじゃったがのぅ。
あれじゃ、反面教師?みたいな?…ちと違うか」

己の地でも、この地でも、九尾狐の性悪さは健在か。
そんな事を、ふっと考えつつも、己は違うと手を振って示す。
育ちや環境が違えば、そんなもの、なのだろう。
…が、後に呟かれる言葉に、ぴくん、と耳が跳ねる。

「そうしたい時は、姿を変えればすむ事じゃ。
妾は、今のこの姿が気に入っておるゆえ、この姿じゃがのぅ?
ふぅむ…しかし、だからと言って見た目年齢を上げ過ぎても、あれじゃろう?」

ふふんっ、胸を張りながら、そう答え。
それを理由として、とりあえず、挙げておいた。
上げ過ぎてもあれだが、下げ過ぎても、とも思うが、そこは気にするな。

リコリス > 「そういう術だ。鉄なんて街ならどこにでもあるからな。
何、無から有を生み出す魔術よりは簡単だったぞ」

手にした南瓜の置物を、少女のほうに放り投げ。
錬金術を学ぶのは時間が必要だったものの、
一度学んでしまえば自在に使いこなしていた。

「ま、ミレーも人間も色々あるからな…九尾にも色々あるんだろうな。
誇張もあるか…単に狐のことが嫌いだったか」

帝国でも狐の神獣族は見たことがあるが、大抵殺し合いの相手だった。
商売敵だったのかもしれないが、今となっては真相は謎だろう。
そんなことを思っていると、目の前の少女が胸を張って言う言葉に、リコリスは苦笑した。

「そうじゃのうそうじゃのう、上げ過ぎてもそそられん。
歳の差は一、二歳ぐらいまでが丁度良い」

そして、少女が瞬きした間に、その女の顔形は少女を模したものになっているだろう。
ご丁寧に、耳と尻尾まで生え、衣装も変わっていて。
違いがあると言えば、見た目の年齢と身長、そして胸の大きさが増していることだろうか。

タマモ > 「しかし、そんなネタばらし、良いのか?
もし妾が敵であれば、対処されかねんぞ?
…まぁ、敵で無い事は、確定しておるがのぅ」

放り投げられた、己の持つ物と別の被り物。
それを、とん、と指先で留めれば、そのまま、指先で器用にくるくると回してみせて。
簡単なものとは言え、手の内をばらす事に、そう伝え。

「………あー…お主、狸か…
妾が九尾狐として、珍しいだけじゃろう。
知る限り、妾でさえ、碌なものではないからのぅ」

根本的に狐を嫌う、そうした相手は、そう知らない。
もっとも当て嵌まる、それだと理解したのはそうした理由だ。
とは言うものの、だからと言って、今更こちらが気にするような様子も無し。
と、そんな言葉を交わす中、目の前で姿を変化させる女。

「一つ二つ…妾としては、可愛らしければ、何でも良いのぅ。
妾程となると、贅沢は言ってられんのじゃ」

己の姿に似せた女の意見には、納得出来る部分もある。
しかし、己の正しき年齢を考えると…どうしても、そうなる訳だ。
まぁ、それを教えるつもりはないが、聞けば、きっと己の意見も納得するだろう。
そして、その生意気そうとなった身長と胸に、じと目を向けるのだった。

リコリス > 「別に、これしか出来ないわけでもないし、これ以外に手段を持っていないわけでもない。
これに対処された所で他の方法を使うだけだ。そう何度も生かして帰さないしな」

女の姿は元に戻る。最初の容姿と違うのは、頭に耳が、尻に尻尾が生えていたこと。
この辺りでは全く見ない動物だが、少女は知っているようで。

「なんだ、分かるのか。ご名答、この国風に言えば狸のミレー族。故郷シェンヤンでは神獣族。
余計なトラブルになるから耳と尻尾は普段は出さんがね」

帝国と違い、王国のミレー族は公然と奴隷とされているため、
首輪もしていない獣耳持ちが歩いていればいらぬ疑惑を呼ぶ。
脱走奴隷だとか、テロリストだとか。

「ま、こればっかりは見た目の好みの話だしな。
……ただ、そんなに見るぐらいなら自分も上げればいいだろと私は思うが」

最後に、やれやれと肩を竦めて。

タマモ > 「まぁ、でなければ、易々と見せんか。
生かしてやら、殺してやら、本当に物騒な…
お主はお主で、可愛らしいんじゃから、言葉を選べばもっと良くなりそうじゃがのぅ。
…それはそれで、と言うのもあるんじゃろうが」

それはそれで、納得しながらも。
姿を戻す女に、改めて、じーっと見詰めながら、そう言うのだ。
この少女からすれば、どんな相手でも可愛らしい、との表現となりそうとも、思われそうか。

「まぁ、永く生きておると、色々とあるからのぅ…そんな話も、聞いた事があるだけじゃ。
しんじゅう…あぁ、神獣族?
それはそれで、大層な呼び名じゃな。
確かに、普通、見せておれば一悶着どころか、二悶着ともありそうじゃて」

聞いた事がある、と言うか、昔話等でも取り上げられる程、こちらでは有名なだけだが。
説明も面倒なので、そこまでは言わず。
女の言う、シェンヤンでのミレー族の呼び名に、ふむふむ、と頷き答える。
そう言えば、シェンヤンにも居たが、呼び名とか気にした事が無かったのだ。

「まぁ、これは、妾の幼き日の姿を、環境を参考に、こうさせただけじゃがな?
所謂一つの、あれじゃ…拘り?みたいな?
気にしたら、負けと言うものじゃ」

肩を竦める女に、やはり、無駄に自慢気に胸を張って答えながら。
ふと、何かを思い出したように、視線を夜空へと向ける。

「おっと、気が付けば、あれだけ月が傾いて…
仕方無い、後一人、悪戯をと思ったが…今日のところは、これで終いとしておこう」

改めて、視線を女へと向ければ。
そう伝え、もそもそと、脱いだ衣裳を着直すのだ。

リコリス > 「お前さんがもう少し好みの見た目をしていれば言葉は選ぶんだがね。
教育に悪いって歳でも無いんだろ?」

じっ、と見つめてくる少女ににやにやと笑いながら女は答える。
子供としての可愛らしさはあるのだろうが、それではそそられない。
女の好みは、もう少し成熟した女からだった。

「私も化かし合いの昔話はよく聞いたよ…まぁ大体最後は狸が勝つんだが。
私も大層だと思うがシェンヤンは強いのが偉いからな。身体の作りから違うミレーは尊敬されてるわけだ。
ここの惰弱どもも鍛えりゃ人間なんぞに奴隷にされんだろうに」

まぁ自分達が負ける昔話なんてそう語り継がないだろうが。
女は帝国を追われた身であるが、王国のミレーに対する感想は帝国の同族と変わらないらしく、
その言及には軽蔑の色が含まれていた。

「……年を重ねても、いつまでも子供のままでいたいってのも、どうかと思うんだがな」

自慢気に胸を張る様子に、ため息を漏らし。
呆れたようにそんなことを言う。

「ん、そうか…今度からは富裕地区とかでやるんだぞ。なるべく護衛の無い奴に」

護衛が付くような貴族に仕掛ければそれはそれで殺されかねない。
また仮装をし直す少女を見ながら忠告の言葉をかける。

タマモ > 「ふむふむ、なるほど…そう言う事か。
教育は、まぁ、そうじゃのぅ、今更じゃな」

その言葉に、女の好みを知り、ぽんっ、と手を打った。
確かに、そうした趣味であれば、そんなものだろう、と。
そして、教育に関しては…賛同以外の答えはない。
実際、そんな年齢ではないのだから。

「まぁ、それだけ、狐は大層な事をしておる、と言う事じゃ。
昔話等の悪者として、小狡くさせるのは、そうした理由でありがちな話じゃな。
ふむ…とは言え、シェンヤンは入ると早々に追い出されてしまうからのぅ。
神獣族やら何やらと、話を交わす余裕なんぞ、ぞうぞう無かったか。
詳しくは知らんが、そんなものなのか…なるほどなるほど」

なにぶん、自分たちの種がそうした立ち位置、そうさせられる事が多い。
人間達の作る話だ、そんな扱いだろうと、そうした考えに到るのはあるもので。
そして、シェンヤンに関しては、これは正直に答えていた。
己は妖、シェンヤンで言えば妖怪等の、こちらで言う魔族に位置する存在。
そうした扱いを受けるとは、仕方無いのだ。
そして、ミレーの扱いに関しては、とりあえず、軽く答えておいた。
深い部分までは、知らないし。

「うん?…これくらいの年齢が、一番楽しめるんじゃぞ?色んな意味でのぅ。
………まぁ…少し、確かに、若くしておる気もしない事はないが、些細な問題じゃ」

溜息を漏らす女に、自信満々に答え、どんっ、と胸を打つ。
とは言え、僅かには、そう思えない事もないのか。
そんな言葉を付け加えるも、そのまま、流した。

「富裕地区か…一応、考えておくのじゃ。
そうそう、戻る前に、これくらいは教えておこう。
妾の名はタマモ、覚えるも忘れるも、お主の自由。
それでは、また機会あれば、じゃな!」

富裕地区、遊ぼうにも、貧民地区のように、良さそうな場所が少ないのもあるし。
見回りもしっかりしており、護衛付きも多い。
まったく行かない、と言う訳ではないが、面倒で、そう行かないのだ。
だから、その意見に対しては、少し濁すように答え。
そして、立ち去り際に、そう女へと名乗っておくのだ。
相手も返すかもしれないと、少しだけ、足は止めておくが…
名乗り返すならば、それを聞いてすぐに。
名を伏せておくならば、そのまま、跳び去って行くのだった。

リコリス > 「ま、そういう事だ。子供好きでもロリコンでも無いしな…」

別に実年齢に関わらず背丈があれば手は出すのだが。

「そうかもな…。
あぁ、お前ミレーよりあっちに近そうだもんな。神獣族の狐は尻尾が一本だ。
ま、そうでなくてもここの国から来たなんて言えば疑いの目で見られるだろうよ。一応戦争中だし」

実際はほぼ休戦状態らしく、全く交流が無いわけでもないのだが。
見た目から怪しい物は流石にアウトだろう。

「そうか?私は今のほうが楽しいがね。酒も女もいくらでも頂けるし。
いや、九尾サマならその姿でもがぶ飲みできるんだろうが」

実際の好みは知らないが、そういう存在なら酒もイケるのが神話の定番ではあり。

「タマモか…じゃあこっちも名乗ろうか。と、言っても偽名だがね。
リコリスだ。まぁお互い王都にいればまた会えることもあるだろう。
じゃあな、九尾サマ」

跳び去って行く少女に手を振って、リコリスも空を仰ぐと、
そろそろ帰るかと呟いて、その姿を消し去った。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からリコリスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からタマモさんが去りました。