2021/10/04 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にタマモさんが現れました。
タマモ > 「………あ」

そんな呟きを漏らしたのは、着地した足元が大きく軋んだから。
その瞬間、己の身に起こる出来事が、予想出来た。

ここは貧民地区、この王都では、治安の悪い場所とされる。
もちろん、悪いのは治安だけでない、そこでの生活感も、並ぶ建物も。
そんな場所を、屋根伝いに移動するのは、他の地区同様の少女の散歩だった。
今日も今日とて、気紛れに、目的もなく…そんな、散歩の途中に、それは起こる。

「お、おっ…あ、危っ…!?」

さすがに、屋根を飛び移る身軽さがあるとは言え、足元が、その重みに耐えられなければ意味はない。
ばきっ、嫌な音が立ち、足元の屋根が割れた。
この地区に、ちらほらと建つ、廃屋と化した建物。
その一つに、当たってしまったらしい。
ぐらり、その身が揺らげば、踏み抜いた屋根ごと、その建物の中へと落ちて行くのだ。
そこが、どんな建物なのか。
そこで、何があるのか、何が行われているのか。
それは落ちてからしか、分からない。

タマモ > 「っ、おっと、とっ…ぉ?」

それなりの高さ、バランスを崩したまま、少女は瓦礫と共に落下をする。
派手な音を立てる瓦礫、その後に続くも。
くるんっ、と宙返りをし、上手い事、しゅたんっ、と着地。
天井の高い建物…周囲には、いくつもの長椅子、先に見えるは少し高くなった場所に、教壇、そして何かの像。
どうやら、教会か何かだった建物だが、今は廃れたか、人気はないようだ。

「………お、おぉ…?
良かった、どうやら…問題なし、みたいじゃのぅ?」

辺りに舞い上がる埃、どうやら、そう使われてないらしい。
それを見遣れば、胸を撫で下ろす。
落ちた途端、文句を言いに来る、何者かを想像していただけに、助かった、との気持ちがあるみたいだ。
まったくの無問題、と言う訳ではないが…
まぁ、人の住んでいる場、ではないなら、大丈夫だ、きっと。

タマモ > 「ともあれ、留まって、誰か来ても…
すぐに、離れるとするかのぅ」

ぽんぽん、と着物を叩きながら、建物の入り口らしき扉を探す。
まぁ、大体は、教壇やらの反対側に設置されているもの、すぐに見付かるが。
それを目にすれば、ふむ、と軽く頷いて。

周囲を、もう一度だけ、確かめるように見渡せば。
明かりもささぬ、この闇に紛れ、ず、ずず、と少女の姿に変化が起こる。
その変化が終われば、ぽっ、と灯りをともす。
その灯りが照らす少女の姿は、少女の姿にあらず。
この王都を徘徊する、見回りの兵の一人の姿。

「ん、んんっ…よしと。
さて、行こうか」

その唇から紡がれる声も、その兵士である男そのもの。
そのまま、ゆっくりとした足取りで、扉を抜けて行くのであった。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からタマモさんが去りました。