2021/09/18 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区の安酒場」にティエラさんが現れました。
ティエラ > 安い酒を提供する酒場は、度数の高い酒を水で割って売るような場所、しかし、此処に来る客は基本金がなく、それでも酒を、と求めてくるような、破落戸ばかり。もともと、貧民地区は、治安の悪い場所で、真面に金を稼げない者が集まりやすい。
そんな、底辺のたまり場、という所に、一人酒を呷る女がいる。
この場には、似つかわしくない、美しい薄絹の衣を身に纏っている褐色の肌をした女。マグメールの生まれではない顔立ちの、女だ。
肌もあらわな服装の上に、ローブを身に纏っていて、葡萄色の髪の毛には、蒼い薔薇の髪飾りを付けている。
褐色の唇には、涼し気な碧の口紅を塗った、女だった。
此処の破落戸共とは、顔見知りであり、理由としては、女の職業―――踊り子という物がある。
お金に困り、身を捧ぐ娼婦紛いな事をしない純粋な踊り子であり、技術はここで踊るにはもったいないと言われる。
貴族に呼ばれて貴族の前で踊る事さえある、プロである。
こう言う場所に着て踊る理由は誰も知らないだろう、女もそれを語る事は余り無い。

破落戸で酔客となれば、当然劣情をぶつけに来る男も多いだろうが、今、この酒場にいる全員は一度は襲い掛かって居る。
全員この女に叩きのめされているのだ。
だから、こんな場末の酒場で一人酒を飲んでいて、襲われていない。
今日は、酒場の仕事もない、特段な予定もないので、ボトルキープをしている酒を、一人で呷って居た。
無論、ちゃんと金を払い、水で薄めていないボトルを店主に出させている。

グラスに、塊の氷、カラン、と涼し気な音が響き、蒸留酒が、芳醇な香りを立てていた。
それを、気だるげに半開きにした、アイシャドウを塗った葡萄の目が、見下ろしている。

ティエラ > ふぅ、と蒼く彩られた唇から、酒精の混じる吐息が零れる、酒が回って来たのだろう、褐色の肌にもほんのりと朱が混じる。
とろん、と、酒精に少し酔った瞳は潤みを以て、酒場の酔客たちを眺める。
彼らも、慣れればそんなには悪くないのだろう、乱暴な面はあるが、意思疎通ができないという程ではないのだ。
まあ、こんな所に何時もいるから、其れに染まっている、と言うのかもしれないのだけど、まあいいだろう。
それは其れとして、と言う事であり、友人としてはまあ、ある程度認められても、それ以上ではなくて。
最近は、仕事で忙しく、この周囲にも来れてはいなかった。
だから、という訳でもない、時期的な物もあるのかもしれないが、人肌寂しく思う事もある。
そんな時に一人で酒を飲むと言うのは、想像以上に己の心にダメージがあるようだ。
はふ、ともう一度溜息を零して見せる。
今日は、戻ってきてそんなに時間もたって居ないので、何時も来慣れている此処に来たのだけども。
今度は、また別の所に行きましょうか、と、とろんとした瞳で、店の中を眺める。
ただ、このまま外に出れば当然餌食になる可能性も有るし、今日は、家に戻る事にはする積り。

なので、静かに今は、グラスを傾け、蒸留酒を一口喉に。焼けるような酒精が、喉に心地よい。

ティエラ > 暫くの間、グラスを傾け、その中の液体を喉の奥に滑り込ませる。臓腑の奥が、かっと熱くなる。
酒精を干してしまえば、ふらり、と酔いが回るのを感じる、高揚感を覚えていた。
こんな場所で、酔いを前面に出してしまえば、善くない人に襲われてしまうのは目に見えている。
だから、ローブを身に纏い、その内側に一枚の符を張り付ける。
人除けの符であり、抵抗力の無い人間は近寄れなくなるものだ。
ないよりはましと言う感じで魔術を発動させて、マスターに代金を支払って。

女は、滑る様に店から出て、そのまま、貧民地区を歩いていくのだった。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区の安酒場」からティエラさんが去りました。