2021/09/17 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にマディさんが現れました。
■マディ > 「……ぁ、あの………困り、ます、わたくし、っ…………」
昼でも暗く陰鬱な空気の澱む、裏道の果て、袋小路。
修道衣の胸元に布包みを抱え込み、女は周りを囲むように立つ男たちに、
おどおどと揺れる眼差しを巡らせていた。
彼らは皆、一様に、酒臭く、薄汚れて、目ばかりが爛々と輝いている。
口許に浮かぶ笑みの形も、酒で潰れた声のざらつき具合も、
女を警戒させ、怯えさせるには充分過ぎるもので。
「あの、わたくし、……本当に、困ります………
王都には、お使いで来ただけで……ゆっくりは、していられなくて」
日暮れまでには、王都を出なくてはならない。
それは本当のことだったけれど、男たちには関係の無いことだ。
だから、彼らは囲みを解くつもりも、女を逃がす気も無いようで、
――――――それどころか、女が弱り切った表情になるほどに、
ニヤニヤと笑みを深め、涎を垂らさんばかりに。
女の華奢な肩に、あるいは腕に、彼らの手が掛かるのも、時間の問題と思われた。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にエズラさんが現れました。
■エズラ > 「おいおい、シスターさん困ってるじゃねぇか」
修道女を取り囲む男達の中から――正確には、その囲みの外から声が響く。
周囲の男たちに負けず劣らずの風貌である。
男達の中には顔見知りの者もいるらしく、少し怯えた様子を見せていた。
「ホラ、散れ散れ――怪我しねぇうちによ!」
腰に提げた剣の柄に柔く触れ、周囲をひとにらみして、語尾は強く。
女の目には、どのような光景に映るであろうか、また、気付くであろうか――
こんな時刻に貧民地区を彷徨いているということは――結局、この男も周りの男達と大差ない思惑であるということに。
■マディ > 大柄な男たちで構成されていた、人間の壁が不意に崩れた。
彼らの背後から聞こえた声に、それほどのすごみは感じなかったのだが、
振り返った男たちは面白いように顔色を変え、その笑みは諂うようなものに変わり、
次の一声で、バラバラと散り始めた。
何が起こったのか、女にはまだ、良く分からない。
けれども、とにかく、新たに視界に入ってきた人物は、ただ、ひとり。
助けてくれたのだ、と、単純に考えたのも、この女には無理からぬことだと言えた。
「ぁ、………あり、有難う、御座いまし、た、……あの」
壁に張りつくようにしていた身体を起こし、そっと進み出て、こちらから距離を縮め。
礼儀正しく頭を下げ、安堵の色が滲む微笑を向ける。
相対した男の思惑に気づく様子は、少なくとも、今のところは見られなかった。
■エズラ > 「いやなに、礼なんていいって――ここらじゃああいうのがいつだって彷徨いてんだから、気を付けねぇとな」
頭を下げて微笑む修道女を目の当たりにして、男の頬も少し緩まる。
しかしそれは、なにも親愛の情を示そうというばかりのことではなく――修道服に隠された、女の肢体を値踏みしているのである。
なるほど、近くで見れば、「囲まれていた」理由がすぐに理解できた――
「しかしシスターさん、そういう場所なわけだからよ――」
一瞬前まで見せていた笑みは消えぬまま、おもむろに男が相手の背後に回り込み、強引に腰を抱いて。
「――彷徨いてんのは、基本的に飢えた狼だけなんだなぁ、これがよ――」
駄犬と狼の違いはあるがな、と付け加え、暗がりへと引き込もうとする――
■マディ > 街中で帯剣している男、というだけでは、警戒の根拠にならない。
目立つ傷の存在も、筋骨隆々たる体躯を見れば不思議ではなく。
恐らくは、冒険者と呼ばれる種類の人物なのだろう、と。
「ええ、……はい、仰る通りですわ。
わたくしったら、本当に、―――――― きゃ、!?」
人好きのする笑顔のまま、距離を詰めて、回り込んで。
腰を抱かれ、引き寄せられて、女は思わず悲鳴を上げた。
戸惑いを露わにした眼差しが男を見上げ、もの問いたげに唇が開く。
しかし、その唇が何事か言葉を発する前に、男の腕に力が籠った。
女は成す術も無く、暗がりへ引き込まれ――――――――。
■エズラ > 「ムッフッフ……――」
助平心を隠そうともしない笑み。
もう一方の手で首尾良く女の口元を塞ぎつつ、軽々とその華奢な体躯を抱え上げて、路地裏から姿を消す。
さらに薄暗い場所へと――
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からエズラさんが去りました。
■マディ > 一拍遅れて声を上げようとした、口許を大きな掌で塞がれ、
逞しい腕に軽々と抱えられて、女は連れ去られてしまう。
その先の事は男と女、ただ二人だけの知る事、と――――――――。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からマディさんが去りました。