2021/06/03 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 廃教会」にメリル・クルーガーさんが現れました。
メリル・クルーガー >  
夜。
かつては多くの人が訪れたであろうノーシス主教の教会。
しかし今は人気もなく、すっかり朽ち果て、辛うじて雨風が凌げる程度の外壁しか残っていない小さな廃墟。
長らく朽ち果てるがままだったその廃教会に勝手に住み着く女がいた。

「主よ、嗚呼主よ。今日も素晴らしい一日でありました」

廃墟の中には最低限の生活空間が小奇麗に整えられており、床や壁も人が住める程度に補習されている。
本格的な補修はされていないものの、穴が開いていたところには板が打ち付けられているし、崩れそうな壁も漆喰のようなもので塗り固め直されている。
そんなDIY精神溢れる教会跡の中心で、祈りを捧げる女。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区 廃教会」にガーネイさんが現れました。
ガーネイ > 霧雨が降り始め、霧が漂い始めた夜──
女は、宿に向かう途次であった。
貧民地区にはあまり立ち寄らないが、特に苦手意識があるわけでもなく。
まったく自衛手段を持たない者であれば、また印象は変わるのだろうけれど。
ともあれ、女は少し悩んで、濡れて帰るより適当な場所で雨宿りしていこう、と決めた。
周囲を見回すと、すっかり往年の風格を失った廃墟が眼につく。
雨風を死ぬぐだけなら、十分……と見て取れた。
女は、完全な廃墟と思い込んでいたので、そこに足を踏み入れた時、祈りを捧げている女性の姿を見付けて、軽く驚く。

「あら……失礼、人が居るだなんて思わなくて。申し訳ありませんわ」

見た感じ、神に仕える者のようだ。
しかし、何か──違和感を覚える。だが、その正体を考察するより先に、まずは詫びるのだった。

メリル・クルーガー >  
「――あら」

物音に振り向く。
細い目で客人を捉えれば、柔らかい笑顔を向ける。

「いえ、私もお借りしているだけですので、お気になさらず」

無断で、だが。
立ち上がり、彼女に向き直る。
小柄で淫靡な肉体に煽情的な衣服を纏った修道女。
誰もがそのような感想を抱くであろう女は、彼女を招き入れるように手を広げて見せる。

「外は雨、ですか? 濡れたままでは寒いでしょう」

部屋の隅に置かれた巨大な鞄。
その中を探り、未使用のタオルを取り出す。

「あまり質のいいものではありませんが、こちらをお使いくださいな」

そうしてそれを彼女に差し出した。

ガーネイ > こちらに向けられた顔は、柔和という一言に尽きる。
その姿を一目した際に感じた、何か得体の知れない違和感は気のせいだったのだろう──
彼女の仕草に招かれるようにして、

「そうですの。それでは、遠慮なく──」

と、かつては教会であったのだろう建物にも会釈をひとつ、彼女のそばへと歩いて行く。
短く感謝の言葉を伝えて、取り出されたタオルを受け取る。清潔そうなタオルだ。

「ええ、丁度降り始めたところですわね。霧も出て来たので、少しばかり雨宿りを、と」

受け取ったタオルで、水滴を浮かべた肌や髪を軽く叩くようにして、水気を払っていく。
ある程度は天候を読むことは出来るが、どの程度雨と霧が続くかは分からない。
雨宿りの場で親切な人物と出会えたのは、僥倖であった。

メリル・クルーガー >  
タオルを渡し、彼女が身体を拭いている間にお湯を沸かす。
魔術を使った携帯用のコンロ。
それで温かいお茶を淹れ、彼女のそばに置く。

「どうぞ。温まりますよ」

そうして自身は椅子――と言っても廃材を釘で打ち付けて作った雑で簡素なものだが――に座る。
細い目で笑顔を浮かべながらニコニコと彼女を見つめる。

「私、メリル・クルーガーと申します。見ての通り、修道女ですわ」

巨大な胸に手を乗せて自己紹介。

ガーネイ > もう一度礼を述べて、わずかに湿ったタオルを汚れない場所に引っ掛けて──
と、傍らに置かれるカップ。

「ああ、いえ、そこまでしていただくのは……と、言うのは今更ですわね。ありがたく頂戴します」

微笑みを浮かべて、カップを軽く目の高さに持ち上げてから口をつける。
初夏とはいえ、夜に雨露に濡れれば、体も冷える。茶は体の芯に染み込むようだった。
と、女はこちらを見詰める視線に気付く。瞳がうかがえないので少々分かり難かったが。

「私は、ガーネイと申します。見ての通りとはいきませんが、舞いを披露したり、時には冒険者の真似事をしたり……最近は好調とはいいかねますが」

ついてませんのね、と言って肩を竦めて見せる。
流浪の舞い手というのも冒険者というのも、ついている日もあればついていない日もある。ふっと嘆息。

メリル・クルーガー >  
「舞……と言うと、踊り子と言うことでしょうか?」

そう言われてみれば、外套の下にチラリと見えるのはそのような装束に見える。
なるほど、確かに今までの動きを見るに、身軽そうな印象だった。

「――となると、何か失敗でもされました?」

言い回しから察するに、大きな失敗をしたという訳でもないだろう。
とは言え好調という訳でもないだろう。
いまいち上手くいかない、と言う感じだろうか。

ガーネイ > 「流浪の身、と言うと恰好がいいかも知れませんが、飛び込みで仕事を探す日々ですからね──」

と、言って、指を立てて説明する。
それはつまり、行商人の道具や装備の売込みのようなもので、あっさり売れることもあれば、一日足を棒にしても売れないこともある──と。
そういう時は冒険者の仕事で日銭を稼ぐことになるのだが、それはそれで博打要素が強い仕事だ。
二つ博打をすれば、二つとも外すことも別段珍しい話ではない。

「と、まあ丁度今日、二つとも博打を外したというわけですわ。その帰り道、ということです」

茶をすすりながら、そんな現状を伝えるのだった。
定職につくということは不自由なことも多いが、その分安定感がある。逆もまたしかり。

メリル・クルーガー >  
「ははぁなるほど」

つまり仕事にありつけない、と。
それはゆゆしき問題である。

「巡り合わせは我が主の御導きですから」

我が主は全てをご覧になっている。
試練としてそう言うことをするときもあれば、祝福としてお恵みを与えてくださるときもある。

「腐らず一日一日を懸命に生きていれば、きっと良いことがございますよ」

にっこりと笑顔を見せて。