2021/03/21 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にアルシェさんが現れました。
■アルシェ > 貧民地区の一画
それも表通りから離れた路地となると、治安などという言葉さえ存在しなくなる。
だからといって、女性の悲鳴が響くのが日常茶飯事化と言えば、そうでもない。
せいぜいが酔っ払い同士の喧嘩騒ぎがいいところ。
けれども、今夜に限ってはそうはならなかった。
何やら言い争うような声がしばらく続く。
それは安宿と呼ぶにも烏滸がましい木賃宿の壁を筒抜けて聞こえてくるわけで。
「痴話喧嘩なら他所でやってくれる!?」
窓というよりは、木枠に板を張り付けただけといったそこから身を乗り出して叫ぶ。
こちとら依頼の最中に大雨は降るわ、横暴な同業者が横やりを入れてくるわ、
極めつけはギルドに報告に戻ってくると依頼が取り下げられたなどという始末。
おかげで無一文状態で昨日から何も食べてはいない。
そんなわけでいきり立つ腹の虫を宥めるためにとっとと寝てしまおうと思っていたところに、
やいのやいのと外で騒ぐものだから、普段は大人しい(?)少女としても思わず切れてしまったというわけだ。
とりあえず、叫ぶだけでは飽き足らず、手近にあった手桶でも投げつけておこうかと。
それが命中するかどうかは、相手の日頃の行い次第と言うものだろう。
■ティアフェル > 近所迷惑になっているということを失念――というより住人いたのこの区画、という認識。
だもんで賑やかだった。
唸れわたしの拳。
そう躊躇なく右ストレートを繰り出す女は、間違いなくか弱い婦女子という生き物ではなかった。
きゃーの後に、めこ、いやーに続いて、べき、やーめーてーと同時にがこ、そんな鈍い音が高い悲鳴にくっついて響くものだから音だけ聞けば、女性が襲われて暴力を揮われているようにも受け取れるかも知れない。
――けれど、そんな一連の音の後に残された光景は殴られ蹴られて失神した道に転がる男の姿と、ぱんぱん、音を立てて掌を打ち合わせて払う女の姿。
そんな折。
「――え?」
一件落着と油断していたところに突然響く高い声と、一直線に飛んでくる手桶。
予想外の出来事にっかっこーん、とイイ音が響いて女の側頭部にクリーンヒットし、ばた、と路上に転がる死屍累々(約二名だけだが)。
鉄拳制裁された絡み男と、絡まれ女が図らずも誤解されて一緒に死んでいた(※息はあります)。
■アルシェ > 「………あ。」
お腹が空き過ぎて、気が立っていたとはいえ、やり過ぎました。
放物線を描いて飛んでいく手桶を見つめることしばし。
すこーんと綺麗に通りに居た誰かの後頭部に直撃したのが見えた。
と、同時に漏れるちょっと間の抜けた声。
「……やばっ!」
見れば、狭い路地に横たわる男女二名の屍。
目撃者がいるかどうかは分からないけれども、あれだけ騒いでいたのだから耳目を集めていないはずもない。
朽ちかけた木枠に手を掛けると、ひょいと階下に飛び降りる。
「……ちょ、だいじょうぶ……だよね?」
恐る恐る近づいて、そっと手を伸ばす。
そして傷がないかしげしげと確認してから、ほっと息を吐き。
「よかったぁぁ! 壊れてない!
ただでさえツケにしてもらってるのに、宿の備品を壊したとか知れたら目も当てられないもんね。」
ぎゅっと投げつけたばかりの手桶を抱えて安堵の笑みを浮かべる少女。
その足元で転がっている何かについては、気にも留めず。
■ティアフェル > ……………。
その場に横たわる屍×2。
しばらく一喜一憂する少女の声だけが響き渡っていたが。
コテンパンにノされた男の方はともかく、桶がぶち当たって一瞬気絶してた女の方はしばらくすると意識を取り戻した。
ぅ、とずきずき響く頭を抑えながら短く呻きながら閉じていた瞼を震わせ。
「………ぁ?」
一体何が起こったのだろうか、と男をぶちのめしたまでは覚えているがその後のことが良く分からず、ただ、相変わらず横たわる男と、手桶を大事そうに抱えて笑顔という妙な女の子が映り。
「………夢?」
さっきから何か夢を見ているのだろうか?と今いち状況が把握できず首を傾げるが……ずきん、と痛むこの感覚はどう考えても現実なようで、取り敢えず回復術師として殴打部に手をかざして短く詠唱して癒し。
それから手桶女子に、
「ねえ、手桶子ちゃん? 良く分かんないんだけど、ひょっとしてあんたそれでわたしをどついた?」
とりま状況確認。痛みも取り去ったので起き上がって彼女が抱えている手桶の形状と頭部に走った衝撃を関連付けて問うた。
■アルシェ > なぜ宿の手桶が部屋にあったかと言えば、
宿代をツケにする代わりに朝一番から水汲みをする約束だから。
それなのに、手桶が壊れてしまったら、路頭に迷うほかない。
そんな安堵を噛みしめていると、足元で何かが蠢く。
「ん? 手桶子ちゃん??」
どうやら、自分のことらしいとは察するものの、きょとんと首を傾げ。
起き上がって来たのは、この界隈ではあまり見ない感じの美人なお姉さん。
「ううん、どついてなんかないけど……?」
傾げた首をそのままに、問われた言葉に簡潔明瞭な答えを返す。
嘘はついてない。
炊き出しの手伝いで仲良くなった教会のシスターにだって誓えるくらい。
「きっと運悪く何かが飛んで来たんじゃないかな?」
■ティアフェル > 「――聞き方が悪かった。その手桶、ぶん投げたのはあんた?」
とぼけているというか、判ってない顔をされた。
これは天然なのかも知れないが、笑顔で口にしながらも低ーい声で確認した。
状況から云って。先ほど聞こえた苦情の声はやはり彼女のものだった。
その後何かが飛んできた。その何かと云うのは考えるまでもないが手桶だろう。
何が当たったかくらいは見当がつくし見回したところ他に硬いがそれほど重さもない、ちょうど木材の様なものなどないし、そもそも他に凶器もなければ容疑者もこの場にはいない。
推測できる単純な結論に、手桶を投げたからには当たったのを見た筈だ、それが解っていて云っているなら、彼女は盲目なのか。ただの嘘つきなのかというところだ。
後者ならたたじゃおかないし、やったことをトボける奴も判ってない奴も許さないゴリラである。
――故に、騒々しくした件についてはもちろん謝罪の意思はある。
それを踏まえて確認したい。
「自分の投げたものがどうなったか見てない訳ないわよね?」
■アルシェ > なんだか、すっごい圧を感じる。
こんなに美人さんなのに、歴戦の勇士とかそんな感じに思えてしまうほど。
深夜にこんな界隈をひとりで歩けるのだから、当たり前と言えば当たり前かもしれないけれど。
「えーっと、つい勢い余って。」
やっちゃいました。と正直に告白する。
それはもう盛大に、全力投球……否、全力投桶。
「え? どうなったかって…? ほら、この通り傷ひとつないよ!」
どや顔で手桶を見せてみる。
そこには宿の女将さん譲りの頑丈さを誇る手桶が燦然と輝いて……はいなかった。
それよりも相手の笑顔の方が、何やら眩しいばかりで。
「――――ごめんなさいっ!
まさか騒いでたのが酔っ払いじゃなくて、お姉さんみたいな美人さんだと思わなかったから!」
どうやら問われているのは、手桶の瑕疵ではないらしい。
確かに誰かに当たったのは見えたものの、それが倒れている男の方なのか、
それとも背筋が凍り付きそうな笑みを向けてくる目の前のお姉さんの方なのかまでは、分からない。
ただまぁ、状況からしてそうなのだろうと察すると
手桶を捧げ持つようにして、東方に伝わるという最大級の謝罪――ドゲザ――を示し。
■ティアフェル > 相手がかわいい女の子だろうが、すっとボケる気ならば容赦はしない。
サル達の頂点に立ってきたゴリラの貫録を見せつける時が今。
……というのはともかく、般若を秘めながらにっこりと笑顔で圧をかけていたが伝わったらしい、やはりゴリはゴリ。
「うんうん」
勢い余って、と口にする声に眉の位置は動かさず。空気を読まなければ温和にすら見える笑顔を向けて彼女の声に傾聴し静かに先を促して、そして手桶は無疵だということを聞けば、そう、と肯いて。
「そりゃー良かったわ。壊れてたらほんと大変だもんねえ、あんたが。
弁償で泣きを見るものねえー?」
にこにこ相槌を打つものの眼はかけらも笑っていなかった。しかし、不意に状況を理解した上に盛大な謝罪……DOGEZAをおっぱじめるいっそ漢気さえ感じる少女の様子に一瞬目を丸くし。
それから少々押し黙ってから、えーと、と頬を掻き。それから重圧染みた空気は毒気が抜かれたように薄れ。
「あー……うん……いいよ。こっちこそうるさくしちゃっててごめんなさいね。
このアホがしつこく絡んできたもんだったから。ここに住んでる人がいると思わなっくって……でも、うるさければ一言言葉で教えてくれればいいから、もの投げちゃ駄目だよ? 手桶が壊れても困ったでしょ?」
さらにすっとボケられたら、どう落とし前をと思っていたが。ぎゃあぎゃあ声がうるさかったのは事実。そこでお相子にしようと、土下座までせずとも軽い謝罪でも別に良かったのに、と彼女に屈み込んでぽんぽん、とその頭の上で軽く手を弾ませ、頭をお上げと促し。
こちらも騒音に関してはぺこりと頭を下げ謝罪。
■アルシェ > どうやら、東洋の秘儀―ドゲザーは功を奏したらしい。
襲い来る圧が、冷や汗どころか脂汗を滲ませるほどの圧が不意に軽くなる。
助かったと胸を撫で下ろしたのも束の間。
ぽん、と頭の上に手を置かれ。
「ひぁっ!?
あわわ……そ、その……ほんとに、その赦して……いただける、です?」
世の中、絶対に怒らせたらダメな相手というのが存在する。
たぶんというか、間違いなく目の前のお姉さんはそういう存在だろう。
怯え切った小動物さながらにガクブルしながら、ちらりと僅かに顔を上げて様子を伺ってみる。
すると、なんとお姉さんが頭を下げてくるではないか。
さっきまでの威圧感とのギャップに何が何だか分からない。
とにかく、そんなことをさせておけるはずもないので、大慌てで立ち上がる。
「いえす、まむ!
言いつけは絶対順守します、です!
だから、頭を上げてくださいっ!」
ピシリと直立不動で宣言する。
けれど最後の一言だけは、もう泣きそうな声音での懇願だった。
■ティアフェル > クスリが効きすぎたらしい……。
普通の女の子は自分の家のサル(弟と読む)どもとは違ってここまで圧力をかけなくとも充分だということをうっかり失念していたというか、勢いというか癖というかノリというか。
やり過ぎは自覚してもはや怯える小動物みたいな状態になっている模様に。
どう処理しよう、と悩んでしまってアホ毛が揺らめく。
「うん、全然。めっちゃシラ切ったらわたしもどうでるかって感じだったけど……。
別にわたしにぶつけるつもりじゃなかったみたいだし。
気にしないで。桶無事でよかったね」
悪意のない年下の女の子なら至って態度は柔和である。
見事過ぎる、向こうも向こうでやり過ぎな土下座までさせてしまっては逆に気まずくもなるもので。
頭に手を置いたら怯えられるようなのですぐに引っ込めた手を後ろにして。
「うん、じゃお相子さまで。
ま、ぶつけたのがガチのゴロツキだったら即強姦事件に発展するので、やめといた方がいいのは間違いない。ちなみにそういう趣味なんだとしたら、まったく止めないのでガンガン通行人にぶつけていくといいと思う」
彼女の言葉に反応して頭を上げ。軍隊のように直立する様子に、鍛え抜かれた精鋭ですかと肩を揺らしつつ。
ごめんごめん、泣かないでー。と泣きそうな声音に困り気味に眉を下げて掌を向けて宥めるような所作を見せ。
■アルシェ > どうやらほんとに許してもらえるらしい。
生きた心地がしなかったとは正にこのこと。
さっきの威圧然り、その後の謝罪然り。
村で一番の鬼教官だった婆様よりもよっぽど恐ろしい。
だから、とにもかくにも、下げられていた頭が元に戻ると、
腰が抜けてしまいそうになるのを気合と根性だけで堪えきる。
「そ、その時は、血祭りにあげるのでっ!
いえ、言いつけは絶対です。もう物は投げません! ……滅多なことでは。」
そういう趣味(?)はないけれど、襲われたら蹴りあげます。
どこを?とは言いません。
だからといってガンガン投げたりしないので、許してください!
生まれたての小鹿も斯くやというガクブルする膝もそろそろ限界。
お姉さまが困った様子でこちらを宥めてくると、精も魂も尽き果ててその場にぺたんとへたり込む。
同時に、腹ペコ具合が限界突破の虫さんが、きゅるるーっと盛大に自己主張を繰り出して。
■ティアフェル > 多分本物のゴリラ相手より怯えられている。
ゴリ力が高過ぎた。もうちょっと自分の中のゴリラを自覚すべきか、と最早キングコングの域に達した女は少々自省した。
血祭り、と聞くと先ほどノした未だ昏倒中の男の背を敷物よろしく、がしっと踏みつけて、ぐっと親指を立て。
「おう、その意気や。わたしが許す、派手にやったれい。
うん、当てた相手に依っては逆に血祭りものだものね。
やむを得ない場合は石ころとか投げても困らないものをぶつけて逃げるがいいよ」
怒りに任せずその際は冷静なご判断をと促す。生きてれば滅多なことも起こり得るかも知れない。だが、同じ轍は踏まないように気を付けてと。
そして気が抜けた様にその場にくずおれる様子に、おっとと、と少々慌ててそちらに屈み込みどこか具合が悪いのか訊こうとしたところ――お腹が鳴った。
ああ、空腹でイライラしていたのかと得心し。それからまだ成長期にある若い女の子が夜中にお腹が減って激昂してやらかすとか、良くない、とそっと眉をひそめ。
「お腹空いてるの? ダイエット中……とかじゃなくて?」
■アルシェ > 多少の恥など気にもしない性質ではあるけれど、
さすがに人前で盛大な腹の虫の大合唱は居た堪れない。
ぎゅぅっとお腹を掴んで捻りあげるけれど、痛いのは自分だけで。
「うぅ……ダイエット、なんてしませんよぅ……
それは、ともかく、お許しいただいたので、その際は派手にやらかします。全力で。」
どれだけ押さえようとも、鳴り止む様子のない腹の虫。
食べ歩きの趣味に没頭したところで、ダイエットの必要になど駆られたことのない少女にとって一食抜けだけでも大事件である。
それが昨日から何も…となると、それはもう目の前にお肉を差し出されれば身を捧げかねないほど。
そんな状況であっても、格上としてしっかりと刷り込まれたお姉さまからの指示とあれば、しっかりと頷いた。
だってほら、今も呻き声ひとつあげずに気絶している酔っ払いを足蹴にしちゃうような人だもの。
逆らうなんて身の程知らずなことなどできるはずもない。
「ダイエットじゃなくて、絶賛金欠病中で腹ペコなんです。
ご飯を恵んでくださったら、何でもしちゃいます。」
もちろん、お姉さま相手ならば、ご飯を恵んでもらえなくとも、命令には逆らいません。
でも、食べ物をちょっとでも分けてくれたら嬉しいかなーと期待に満ちた瞳を向けて。
■ティアフェル > 肥ってはいないけれど、平均より痩せていたいと思いやる乙女心というものは存在するし、かくいう自分がそうだ。無理なダイエットはしないが甘いものを食べ過ぎると翌日から控えてしまう。
けれど、どうやらそのクチではないらしい。
リアルに食えないという困窮らしくて。
「そだね、食べ過ぎは良くないけど無理なダイエットは推奨しない。
――ファイ・ト!」
窮地には派手にやらかすがよい、とそこは推奨して、短く声援を送って置く。
それにしても鳴りやまないお腹の虫。これは可哀想。あと、昨年末あたりは自分も碌に寝ない食べないという状況に陥ったりもしたので気持ちは解るし心配になってしまう。
「それは良くないな。若い女の子が無飯とか良くないぞ。
いいよ、ごはんちゃんと食べよう。どこかでごちそうしようか? 平民地区の方だけど家に来たらごはんくらい作るし」
腹いっぱいにしてやるぜと姉心が刺激された。
姉ちゃんに任しとけ、とやはりサムズアップを向け胸を叩く。
「それでお名前は? わたしはティエフェルっていうの。ヒーラーで冒険者。
でも、何でもしてくれるのはいいけど、軽々しく云うと襲われちゃうよー?」
■アルシェ > 「ごはん! ごちそう!?
行く! 行きますっ、どこにだって付いて行きます!」
ミレイ族のような尻尾があれば、ぶんぶんと振り回していただろう。
たぶん、そんな勢いで食いついた。
危うく物理的にも食いつきかねない勢いではあったけれど。
「駆け出し冒険者のアルシェです。
ご飯を奢ってくれる優しい人なら、襲ったりなんてしないからへーきです。
それでももし襲われたら齧りついてやります。」
太っ腹な男気溢れるお言葉に、それはもう圧し掛からんとするほどに距離を詰め。
いえ、お姉さまのお腹はとってもスリムだと思いますです。
何でもはするけれど、襲われたらその分報復もしてやると意気込むのは、先のお許しもあってこそ。
それよりも、つい先ほどまでへたり込んでいたのが嘘のよう。
散歩を我慢していたわんこの如く、早く行きましょうとぐいぐいとお姉さまの手を引っ張って。
連れて行って、というか押し掛けたお宅で、たっぷり3人前は平らげる。
そればかりかそのままお泊りして、次の日に宿の水汲みをすっぽかすことになるわけだけど、それはまた別の話で―――
■ティアフェル > 「下宿先ではあるけど、ごはんくらいはどうにでも賄えるから。
はち切れて帰りな」
なんならキロ単位で体重増やして帰らす、という勢いだ。
そんなにお腹が減ってるのならば到底見過ごせない。サルの腹を満たしてきた姉心が燃える。
渋みがかったナイスミドル張りの顔をして請け合った。
「アルシェちゃんね。おんなじ冒険者なんだ。なるほど駆け出しなら飢えもするわね。
余計にたくさん食べて力つけてがんばらないとだ。
ま、意気込みは充分なようだし。すぐにごはんには困らなくなりそーね」
自分もも困っている時、困ってない時でも後輩のよしみで先輩冒険者はごはんくらいご馳走してくれた。自分もその意思を受け継いでやろうと彼女のぺったんこのお腹をぽんぽんにする気満々で。
急に詰めてきた距離に、おおう、と小さく笑いながら。宜しくねと握手を求め。
そんな手は引っ張られたもので、ゲンキンな様子に肩を揺らしつつはいはいと急ぎ足で、平民地区の冒険者ギルドに近い下宿先を案内して。お腹一杯食べたら寝てしま感じなのだったら、床に雑魚寝状態で良ければお泊めして朝ごはんまでお腹に詰め込ませて、なんなら弁当持たせて送り出す母ちゃん力を見せつけてくれる。
――水汲みの咎はお気の毒さまですが。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からティアフェルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からアルシェさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にゲーゲン・アングリフさんが現れました。
■ゲーゲン・アングリフ > 「……う~ん」
貧民地区の酒場にて。覇気のない声が響いていた。
客が一人もいない店内で。店員たる男が、グラスを磨きつつうんうんと唸る。
「……あぁ。外はあまり天気がよくないんですねぇ」
客足が伸びない理由を、天気のせいかと思いそう呟く男。
だが、実際は店の立地が悪いことこそ一番の理由だったりする。
しかして、男はそこについては考えず。
ただただ、黙々とグラスを磨いては唸り声を上げる。
■ゲーゲン・アングリフ > 「……お客様も来ないのなら。
もう店じまいしてしまいましょうか」
閑散としている店内を見ながら、苦笑する男。
ふぅ、とため息吐き。グラスを棚に戻すと。
ドアへと近づき、看板をクローズドにするのであった。
「さてさて、明日の仕事についても。
少し考えないとですねぇ」
腕を組みながら、何度目かも分からぬ呻きを搾り出し。
男は、店の二階、寝室へと向かうのであった。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からゲーゲン・アングリフさんが去りました。