2021/03/20 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にティアフェルさんが現れました。
■ティアフェル > 「ついてこないで!!」
鋭く飛ぶ恫喝のような叱責のような声。
うらぶれた路地裏には、薄い人気と潰れた店舗の残骸。行く当てのない野良猫に転がるゴミと――白衣姿のヒーラーに付きまとうガラも素行もついでに頭もさらに云えば趣味も悪い男。
仕事を終えて帰路に着いた日付の変わりかけた刻限、近道に通りかかった路地で、貧民地区の住民に絡まれるといういい加減飽き飽きする一コマ。
先程からいくら断っても全然答えておらず、足早に通り過ぎようとする隣にくっついて、付き合えと強要してくる迷惑かつ残念な男にうんざりした様子を隠すこともなく。
「しつっこい! だーかーら! イヤだって云ってんでしょ! さっきから!
なにー? 聴いてなかった?
――イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤいーやーだー!
はい、もう分かったでしょ、判ったらとっとと散れ散れ、撤収ー!」
まだ、しつこく絡んでどこまでもついてくる程度ならある意味マシな方かも知れない。この界隈では。
もっとダイレクトに押し倒し一択なんて例も日常茶飯事だ。
――だからと云って、応じるつもりはカケラもないが。
迷惑そうにアホ毛をゆらして舌打ちし、渋面を張り付けて、しっしっと手を振って虫でも追い払う所作でお断りを示すものの、向こうも向こうでそんな挙措を完全スルーで、さっきから同じ科白を繰り返している。
アカン薬でもキメちゃってんのかなー。
ちらりと一瞥した男の目つきがアヤしい気がして、そう感じるも、向こうが手を出してこない限りこっちも鉄拳制裁は憚られる。
が、このまま家までついてこられても敵わないので、うかうか家路にもつけない。
参った、と額に手を当てたところで不意に腕をつかまれ、進路を阻まれ。
「ちょ…、放してよ! 付き合う気なんか未来永劫さらさらないわよ!?
だだでさえ、しつこいことで初めから地べた級の好感度が下降の一途を辿って、今や地中深く貫通し向こう側の大陸まで到達する勢いよ?!」
■ティアフェル > そろそろ殴ってもいいかな? 蹴ってもいいかな? ボコってオッケー?
ついに自分の心へ確認作業へ移行する。
わたしはか弱い婦女子。悪い男に絡まれてやむを得なくパンチを繰り出すの……。などと心で唱えるが、無意識に全部口に出ていた。ついでにすでに拳が握られていた。客観的に観てもヤる気満々だ。
「きゃー(右ストレート)、いやー(ハイキック)、やーめーてー(からの踵落とし)、で、行こう。そんな声を出しておけばなんとなーく正当防衛にカモフラ可能。そんな気がする」
ぶつぶつ口ずさみながら、勢い余ってうっかりヤっちゃったとしても、自分の身を守るためやむを得ずと云い訳が立つ、と結論。
ヨシ、さあ殴ろう。決意が固まったところで男に掴まれていない右拳とカモフラ悲鳴が飛ぶ。
「きゃー、いやー、やーめーて!!」
声だけ拾えば、乙女のピンチに他ならない。