2021/03/15 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にゲーゲン・アングリフさんが現れました。
ゲーゲン・アングリフ > 「いや、そうは言いましてもね?
 私ももう若くはないもんで」

のほほんとした声である、と。
その声を聞いた多くの者はそんな感想を抱くであろう。
貧民地区の一角にある冒険者の宿兼酒場にて。
くたびれた雰囲気の中年男性が、グラスを磨きながらそう言っていた。

「なので、こぅ……。
 血気盛んに冒険に出るですとか。
 稼ぐだの名を上げるだの、っていうのはハイ。
 柄じゃないんですよねぇ」

目の前、カウンター席に座る若い男性にそう言いながら苦笑する中年男。
どうやら、冒険者なりたての若者に、指導を頼まれているらしい。
だが、その中年男は飄々とした態度のまま、グラスを磨いては棚へ置き。また次のグラスを磨き始める。

「それに、私は冒険者っていう職業ではないわけで。
 まぁ……一つ言えることがあるなら、無理はしちゃあいけません。
 焦り逸りは命を落とす第一歩ですから」

簡単にアドバイスをしてから、くつくつと笑う男。
若き冒険者は、納得いかないような表情ではあるが。
男の態度に毒気や血気を抜かれたか、静かに酒を飲み始める。
男はそれに満足したように頷くと、続いて、皿を磨き始める。

「いらっしゃいませ」

入ってくる客に、静かに挨拶しつつ。
中年男は、薄い笑みを浮かべたままでそんな皿洗いに従事していた。

ゲーゲン・アングリフ > 「いえいえ。指導はできずとも。
 こうして、アドバイスをしながら。
 お料理を提供したりすることくらいはできますので」

笑顔をまったく崩さぬまま、男はそういい。
若き冒険者に一杯の酒を差し出し。

「これは私の奢りです。
 あまり興奮せずに。これを飲んで落ち着いてくださいね」

まるで子供に言い聞かせるようにしつつ、男は冒険者を諭し。
そのまま、洗い物を終え、カウンターからゆっくりと出る。

くたびれた中年男は、やわらかい物腰のまま。
酒場の店員として、働いていくのであった……。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からゲーゲン・アングリフさんが去りました。