2021/02/21 のログ
ティアフェル > 「おねーさまも、超カワイー」

 なんてほのぼのと語尾上がりのきゃっきゃした声で云い合っていれば――話題の本筋は長い旅に出てもう二度と戻って来る気配はなかった。

「え? 突っ込むの? マジで? ショック~。
 マドンナって……セクシーって意味、だっけ……?
 おねーさまの世界にはどんなマドンナが……」

 んんん??と疑問符が浮かぶ。辞書ではそんな意味で載ってない筈だが。
 ひょっとして、某現代の方のあの、そっちの方の歌手が影響していないだろうか。本来の意味としてそれとは違う……。
 ちょっと思考が迷宮入りしそうになったが深く考えない方がいいのかも知れない。

「カニーぜーたくー。海にも近いもんねー。
 また新しい脅しだなー。
 薄着で抱き着かれる……! わたしの体温と理性を奪う気か…!
 ひゃあぁーっ」

 薄着を理由にしているダウトさがすごい。
 背中からのハグに物凄い人肌感を覚えて、うひゃあ、と少し顔が赤くなる。あとアホ毛が超くすぐったく小刻みにめっちゃ震えた。伝わり合う体温が暖かいけど、少々照れくさい。やべえ、肉感的かついい匂い。わたしがおっさんだとふっ飛んでるわ強襲かけるわと慄いた。

「うんうん、いーね、じゃあわたしブイヤベースのハーフにしよっかな。違う味にして分けっこして色々食べよ。
 あ、そうそう、イカのフリットも! 分けやすいし、ニンニクがほんのり効いててさくさくで無限に食べれそうなのー」

 そしてオーダーが決まると、エビがたっぷりのパエリアとブイヤベースフリットを注文する。パエリアは少々時間が掛かると云われて肯き。
 そして、先にワインがボトルで運ばれそれぞれのグラスに注がれ。
 料理はまだ少しかかるが先に、と掲げて。

「それでは、かんぱーい」

ティエラ > 「あら?
 …………あぁ!」

彼女の疑問符、アホ毛ちゃんがはてなマークを作っている。そして、言葉の意味をもう一度思い返す。
マドンナという言葉は、憧れの対象という意味で、女たち踊り子的に考えて、憧れの対象は、美女で、セクシーで、色気のある踊りが出来る踊り子という事になる。
彼女と、憧れにずれがあった模様、それに気が付いて、女は頬を染める。

「ごめんね?私の感覚で物を言い過ぎてた。
 ティアちゃんは、そんな娘じゃないのに、ね。」

勘違いで話をずらしてしまった、彼女は聖女らしく、清廉であり、憧れを貰う対象になりたいと言って居たのだ。
一寸色ボケが過ぎていたわ、と、両手を合わせてごめんなさい、ともう一度謝罪をすることにした。
お姉様の脳みそは、彼女が考えるより、ピンク色なのであった。

「海よりは慣れてないし、山よりは安いわ……っ!大丈夫手が届く!

 ふふ、ティアちゃんの理性も体温も私の物よ……。
 もう、可愛い声を上げちゃって。もっと、聞かせてほしいな。」

薄着なのは仕事着、普段から上から防寒の魔法を込めたローブを着ているので、薄着でも大丈夫だけど、今はそれを盾にすり寄る。
理由にも何にもならないし、そっと抱き着いて、ローブに彼女を包み込めば暖かく成ろう。
おっさんにはしませんからね、とくぎを刺しておきながら、その可愛い声を零す顎をそっと撫でる。
人差し指でつつつ、と触れて撫でて、唇奪っちゃいたいなーと。むしろ肉食。

「ええ、それで良いわ、楽しみ。
 デザートは……。まあ、後で、良いかしら。」

注文を眺めながら女も頷いて、美味しそうね、と感想を呟きながら、わくわくして見せて。
先に届いたワイン、冷えているそれをグラスに注いで彼女に合わせるように持ち上げる。

「はい、乾杯。」

ちぃん、と薄く綺麗な音を立てて、グラスを当て、一口、ワインを。
ほのかな甘みが強く、これと共に食べると美味しいのでしょうね、と。

ティアフェル > 「……………?」

 しばし噛み合わなくなった会話。わたしの辞書に誤りが、と少し考え込んでいたが。踊り子目線での思考だったらしい。
 しかし、頬を染めて相違があったことを告げる様子に、やべえ、これはここらへんの野郎どもが目にしたら沸点超えて襲い掛かってくるやつだよ、と感じて、思わず、ば、ば、と辺りを見回して警戒を露わにした。
 ――けれど幸い見ていたケダモノはいなかった。よかった。と安堵したところで返答にタイムラグが生じてしまい。

「ぁ、いや、いや、全然全然。だいじょーぶ。むしろいつかセクシー系にも挑戦してみるっすよ」

 ふるふる、と首を振って、今より年を経ればいくらか落ち着いてそっち方面にもいけるかも知らん、と希望的観測を口にして。にへと気の抜けた笑みとぐっとサムズアップ。

「だねっ、でもカニもおいしいけどわたしは同じ値段で一杯食べれるエビ好きだ!シュリンプさいこー。
 まさかの路上で本格的な口説き…?!
 待った、待ったぁーっ、耐性ない、から、わたしの理性さんが死ぬっ。ストップ、スターップっ」

 きゃあーと裏返った悲鳴を上げ、ローブの中に包まれてすり寄られては、真っ赤になって頭から湯気が放出されてしまう。
 顎を細い指先で撫でられて、ぞくっと震えて、うひゃ、とアホ毛が硬直する。久し振りにあったお姉様の破壊力に戦慄した。
 敵う相手じゃないが、逃亡の手立てがない。

「デザートいけるかなー。結構お腹一杯になっちゃいそう。でも、氷菓くらいなら……」

 結局食いたい方向には傾く。ケーキとか無理だけどソルベなら入るかもと悪足掻き。
 何はともあれ、透き通ったワインで満たしたグラスを掲げ、食前に一杯。グラスを合わせると、ひと口。すっきりした味わいに目を細め。はふ、と心地よい息を吐き出し。

 そして、ワインを味わっている内に半生で火を通した牡蠣のクラムチャウダーやブイヤベースが運ばれてきて。取り皿もお願いする。

「おいしそー。一気にお腹減るぅー」

 取り分けながらぐうと早速胃が鳴いた。

ティエラ > 「………?」

急に周囲を見回し始めるティアちゃんに、何事だろうか、何か襲撃でもあるのだろうか?ここは未だ貧民区であり、危険が危ない場所なのだ。
自分も又、周囲をぐるりと見まわしている相手に、警戒心が浮かんでくる、今までも軽くは警戒していたけれど、警戒心を引き上げる。
しかし、周囲には誰もいないようだ、此方を気にしている様子のある奴も、居ない。

「……?え。ええ?
 まあ、其れなら……、その時には、ちゃんと教えてあげるわ、踊り子目線での、セクシーで良ければ。」

周囲を確認している様子、その後にプルプル頭を振る彼女に頷いて見せる。ちょっと良く判らなかったけど。
でも、ふにゃりとした柔らかい笑みと、サムズアップにサムズアップを返して見せたのだった。

「確かに……お値段的にはエビね、シュリンプばんざーい。
 愛を囁くのは、路上も、ベッドの上も、公園も、家の中も、何処でも、一緒でしょう?
 場所を気にして、素敵な相手を逃すほうが……ね?

 理性さん……ごめんなさいね?私の想いの前に、倒れて……っ」

もう、可愛らしい事この上ない、真っ赤になるところも可愛いし、こう、可愛らしい唇を奪って、しまいたくなる衝動。
流石にそれは我慢するけれど、優しく甘い言葉を聞かせるのは止めたくない、このくらいは。
アホ毛ちゃんも固くピーンとなって居るのを眺める。判りやすい子ね、と思うのだった。

「あー。冷たくて気持ちいいわね、うーん……。でも、食べたくは、有るわね。」

温かい場所で食べる冷たいお菓子の誘惑に、女も顎に指をあてて考える。
お腹がいっぱいになりすぎるのも問題だけど、と呟きながら。
お酒にほんのり酒精混じると息を吐き出し始めて、美味しい、とお酒に目を細めた。

「ええ、ええ。おいしそう、ね。
 あら……っ。」

色々と並べられていくお更に料理。
先に取り分けられて、女子力負けちゃったわ、なんて、甘く笑って。
食べましょう、と手を伸ばす。

ティアフェル >  アホ毛をアンテナ状態に立てて全力で危険生物の出現に警戒していたが――良かった、たまたま人通りがなくってセェーフゥ。
 かわいい仕草の顔を赤らめたセクシー系美女とか、こんな場所に置いてていい筈がないのでつい本気で危惧してしまったが。大丈夫、安全は確認した、と力強く眼で訴えて彼女の安堵を促した。

「踊り子目線かー……ハードルたっか……」

 せっかく教えてもらっても習得できるだろうか。激しく自信がない。想像して思わず真顔になった。

「カニは特別な時に食べるの……お誕生日とか……。
 大分違うと思います……主に人目の問題………。
 余りにイチャイチャしてるバカップルとかわたしでもたまに撃ち殺そうかなって思います。
 わたしの理性さんを亡き者としようとしないで……?!」

 理性さんが殺される…!とさらに戦慄が過った。でもとはいえお姉さまはきちんと理性的です。いきなり襲いかかるゴロツキとは異なる生物。
 ただ、言葉攻めやばい。紅潮したまま、心臓に悪い…と胸を抑えていた。

「禁断だと分かっててもおいしい食後にはついつい欲張って欲しくっちゃうんだよねえ……デザートぉー」

 さっぱりした冬苺のソルベ、レモンのソルベ……思い浮かべると食べる一択のような気がして来た。
 ワインを口にしてアルコールの混じった吐息を零す所作に、色気よ……と思わずまじまじ見つめてしまった。

「あは、お腹空いちゃって……焦っちゃった。
 冷めない内にー、いただきますっ。
 ――んん~……うっま……旨味が濃い~」

 早く食べたくて、あと実家の習慣を引きずっていて、無意識にぱぱっと取り分けてしまった。がっついてるようでちょっと照れくさそうに笑い。
 そして早速スプーンで大きくすくって口に運び、口の中に広がる魚介の旨味に目を細めた。

ティエラ > アホ毛ちゃんレーダーも何やらうにょうにょ探ってる、何か本気で探しているようだ。本当に誰かいるのだろうか。
きょろきょろ周囲を見回していたが、安どのため息が聞こえて来た。セェーフゥ。らしい。
大丈夫だと、太鼓判を押してくる、何が何やら判らぬけれど、警戒段階は、通常―――の貧民区レベルに堕とす。
セェーフゥだとして、安心していい場所ではないのだから。

「そう?大丈夫よ、ティアちゃんは元が良いから。
 私よりも素敵なレディに成れるわ。」

それに、体はそれなりに出来上がっている、其れなら、動きだけ覚えれば良いだけだし、と。触れたときの感覚を思い出す。
さっき抱き着いたときにちゃんと体の筋肉の付き方をチェックしている系女、こっそり手は出てた。

「そういえば、お誕生日は何時なの?教えて欲しいなぁ?ティアちゃんのと・く・べ・つ(な日)
 俯瞰的な思考と、主観的な思考の違いね。ええ、確かに、違うの、でも違わないの。
 いちゃいちゃしちゃ、だめ?ティアちゃんとしたいなぁ。

 私の理性さんだって、ティアちゃんにもう、殺されかけてるんだもの……。それなら。道連れが一番。

 その表情も取ってもかわいらしくて、あ。私の理性さんが。」

大丈夫、ティエラの理性もすでに虫の息なのです。だから、一緒に道連れになってほしいなぁ、とか。
いきなり襲い掛かるのは趣味ではないだけ、手は出します、出ますだしたいです。
心臓に悪くても、でも、止めたくないなぁ、ダメ?首を傾いでみましょう。

「別腹、とよくいう物ね、本当に……プロポーションの敵なのに……。」

お腹がぽよよ、だと踊りにもいろいろと不都合出るし、と思うのだけど、甘い物は摂取したい、しないと死んでしまう。
欲しいけど食べられない、食べたい、そんな二律背反に、女もまた、見悶える。
デザート、欲しいわ、と酒精混じると息が、ほふ、ともう一つ。見つめる相手に、酒にほんのり赤く成る顔で、にっこり笑う。

「ううん、良いお嫁さんになるわよ、ティアちゃん。
 本当に、これも暖かくて、体が温まって、良いわぁ。」

彼女の手際の良さはいいお嫁さんに成れるとおもう。それが日常となって居るのが証拠よ、と。
二人楽しく、食事は進む。

ティアフェル >  アホ毛探知機には何も引っ掛からなかった。ちょっと周りを疑い過ぎたかも知れない。そもそも夜間でケチって街灯も暗めのこの地域ではそうそう他者の様子も見れまい。

「やー。そう云ってくれるのは嬉しいけど、おねーさま越えは無理っしょ」

 まさかボディチェックを受けての意見とは知らず。もともとの色気が足りていないのに、彼女のレベルを超えるなんて考えられない。ふるふると微苦笑気味に首を振って。

「たんじょーびは5月10日だよ。おねーさまは?
 どした? 今日どした? いつもにも増してぐいぐい来るなー……なんかあった?
 ひょっとしてアレか。久々に会ったらわたしの魅了が上がっていてとかそういう……日に日にレベルアップしていたのね、わたしってば。
 いやお姉様、さり気にわたしの理性連れて逝かないでぇー……」

 道連れになってしまっているわたしの理性。あれ・理性ってなんだっけ? ゲシュタルト崩壊してきた理性。首を傾げてダメとか聞いてくる反則技に、わたしに対抗しろってのか敵が悪すぎる、と苦悩気味に頭を抱えた。隅々まで探したけど勝ち目がない。

「運動して相殺とはいうけどさ、結局いっぱい食べて動きまくってたら結果ムキムキになるもんなー……美ボディへの道は険しい……」

 消費したカロリーは脂肪になるか筋肉になるかの違いだ。筋肉も付き過ぎては女らしさに欠ける。バランスが難しいことよとこちらも悩まし気に溜息を吐いた。
 でも、色気をふんだんに振り撒きながらデザートの話で息を吐き出す所作に、もういいから食べよう、と結論した。

「えへへ、そっかな。普段はいまいち発揮する機会のないわたしの家庭的さ…。
 ほんと、アツアツで、この牡蠣めっちゃ肉厚~。ぷりぷりだー。めちゃうまー……」

 取り分けたくらいで評価が上がって嬉しい。そしてごはんもおいしい、幸せ、とほんのり紅潮した表情をおいしそうに和ませてにこにこしながらぱくつき、続いて時間を措いてできたてのパエリアも運ばれてくると豊かな魚介と米とサフランの香りに、ぱあ、と眼を輝かせ。

「うっわあ、超おいしそー。なかなか家じゃつくれないんだよね、これぇー」

ティエラ > 「ふふ、嬉しいわ……でも、貴女は可愛いのだし、今から努力すれば全然、行けるわ?
 逆に、今から何かしないと、ダメよ?」

色気なんて、其れこそ、年とともに磨かれるものでもあるし、若いうちから磨き始めれば後々で困ることはない。
自分よりも可愛らしい、色っぽい、そう言うのも、全然行けるのだと、思う。

「私は4月13日よ、ふふ、一か月、前ね。
 久しぶりだからかもね?ティアちゃんと会えなかったし、ティアちゃん成分が足りなくなって。
 私のイケナイ欲望があふれてしまったのかも。ええ、魅力的よ?手を出したいわ、出していいかしら。

 うふふ……。」

可愛らしい、私の戯言に、目をぐるぐるさせてくれている、可愛らしくて食べちゃいたい。性的に。
彼女がその趣味を持ってるなら今すぐに連れ込んじゃうけれど、それは我慢なのです、可愛らしい子は愛でることを中心に。
彼女が本当の意味で落ちたときに、その果実をたっぷり味わいたい。

「美貌には、ある程度の運動に筋肉は必要よ?
 ほら、私だって、腹筋は割れてるんだし?」

踊り子で、良い踊りをするためには、腹筋もある程度割らないといけないし、腕も、足も、筋肉が必要だ。柔軟な体も、贅肉では難しい。
だから、彼女に、ある程度は筋肉育てないと、と笑う。
ゴリマッチョの様なムキムキは流石にあれだけど、猫の様な女豹のような、と表現される程度にはほしい。

「家庭的な方が良いわ?家庭に有るのだから、其れのプロという事でしょう。私は、ご飯とか作れないし。
 おいしいわね、メニューに有った、牡蠣を小麦粉と卵で焼いた料理も興味あったのだけど。」

仮定の事が出来るから、家庭的、それはとてもアドバンテージだと思うのである。ほんのりと赤くする頬を見て、可愛らしさを感じる。
ああ、本当にお嫁さんにほしいわ、と笑いながら、クラムチャウダーをスープで掬って飲んで。
美味しそうなパエリアをぱく、ぱく、と食べる。

「ホント、お嫁にほしいわ……。」

家でなかなか作れないという、料理が出来るという彼女、本音がポロリ

ティアフェル > 「んんぅ……そうかあ、今からねえ……んんー……いやあ、わたしがセクシーをモノにしちゃったら毎日襲い掛かられて危険かもなーあっはっは」

 んな訳がないが。無駄な疑心暗鬼をやらかして高々と笑った。もちろんただの戯言である。

「そだね、お祝いにカニ食べなきゃー。……まだ早いな。
 めっちゃグイグイくるこのおねーさまー…! 手? 手ぇ…? え、えっと、じゃあ、お手…! はいわたしが先に手ぇ出したー!」

 はいっ、とむしろこっちがお手する。その掌を引っ張って上に軽く丸めた自分の手をぽすっと重ねて。手出し。親父ギャグより劣るが。
 非常に急な誘惑にプチ錯乱だ。
 その趣味がない訳でもないだけに余計。

「ある程度は、ね。つき過ぎるとやっぱねえ。まあ、女性はつきにくいから、食べて動いてムキムキも難しいけど」

 冒険者にしてゴリラ。ヒーラーにしては充分鍛えてあるしある程度の筋肉はあるのだが、やっぱり柔らかさは死守して鍛えたいもので。なかなか理想の身体をキープするのは困難だ。甘いものに釣られている辺り特に。

「えー? そうなんだ、意外だね。じゃあ、おねーさまのお誕生日にはケーキを作ってプレゼントしよっかな。
 ほんとだねえ、メニューを見てると目移りしちゃう。あれもこれも食べたいー」

 できるというよりやらざるを得なかった家事だが、役に立つなら悪くはない。取り敢えずここで誉めてもらえる。嬉しい。
 あとやっぱりごはんおいしい。鮮やかな黄色をしたパエリアの旨味の沁み込んだお米。堪らない。食べたかった海老を頬張ると、口角が自然に持ち上がって至福の表情で。

「んんー、幸せぇー。あー、いくらでも食べれちゃうー。
 ん? 嫁力高い? えへへ」

 嫁か、いい響きだ、そんな風に茶化して笑いながら旨味たっぷりの海鮮ディナーに舌鼓。

ティエラ > 「……あー……それは、確かに。護身術とかをシッカリと覚えるとかではないと、ね……。
 其処も、教えないと、ね。」

彼女の言う通りだ、彼女が美しく、セクシーになれば、それだけ言い寄るオスが増えてしまうからだ。
先程、今日の出会いと同じように襲われたりつかまったり誘拐されたりするのである。
それに気づけば、護身術を教えなければ、なんてうむむと悩む、身体能力は高いはずだけれども、ヒーラーの中では、という程度なのだし。

「じゃあ、5月10日、覚えておくわ、覚えておいてね?蟹。
 あら?あら?あらあら?手を出されちゃったわ。

 ――――じゃあ、私も手を出しちゃお。」

手を出してくる、丸待った手は、子猫のような手だ、それを掴んで踊りを踊る様にそっと腕を引き寄せて抱き寄せる。
背を逸らさせて、倒れないように支えながら、女は、ふふふ、と笑って見せる。
錯乱している彼女の事を見下ろして、耳元に唇を寄せよう。
もう、理性が死んでいるのに、そんなことするなんて、冗談では済ませられないじゃない。
覚悟、してね、と、熱く濡れた女の言葉が、紅で彩られた唇からそっと零れる。

「本当、いつも思うけれど、保つのも、大変よね。」

体重も、肌質も……筋肉も。
あれもこれも欲張った結果が、美というのだから、大変と、遠くを見てしまうのだ。

「意外でも、何でもないと思うけれど……私は、家が無い旅の一族だし、ね。踊りと薬と、魔法を中心に学んでいたから。
 さっき言ったの……、あ、これこれ。ジョンという名前のシェンヤン料理ね。」

牡蠣の料理、なんという名前だったかと、メニューを眺める、有ったあった、と指をさす。最近はシェンヤンの色々が流れてきていて、料理もまた、なのだろう。
物珍しそうな、おいしそうな料理に。指さして笑ってみる。私もこれもこれも食べたい、と。
また、此処に来ようね、と、パエリアの出来に舌鼓を打ちつつ。

「ティアちゃんの美味しそうな顔を見るのも幸せぇ。
 ええ、とても高いわ、お嫁さんに来てくれる?」

さっきから、ティアちゃんじゃなくて私の方がおっさんみたい、飢えた男みたい。
そんな風に考えなくもない、そんな楽しい食事デートだった―――。

ティアフェル > 「うーん……ボケてもそのまま受容されると、なんかスカされた感……。恐るべしボケ殺し……」

 なんでやねん、とかそんなベタなのくださいとまで云わないが普通に受け入れられてしまうと若干途方にくれて遠目をした。

「わー、やったぁ、カニパー! うれっしー。
 ふぎゃ……っ!? えわ、わゎっ……」

 スキンシップなら職業柄を含めて慣れている、けれど、不意に手を取られて抱き寄せられたそれはなんかいつものそれとちょっと、いや結構違う。わたわたと慌ててしまい、頬が熱くなる。マジでスタイル申し分ない……とハグ状態ではがっつり認識できて、これはどーすべきなのだ、と硬直。アホ毛とともに固まった。石化。
 耳元で囁かれて、ぅわ、と背筋を震わせ。
 
「お姉様にはあのチートな魔方陣があるやないの……」

 苦労が多いと遠目をしているが、スキンケアなどの手間を一掃する技があるんだから一般女性より大分楽だよと肩を竦めた。

「そういうもん? でもそれならそれで屋外で料理もしなきゃなんないでしょ? 家のキッチンで作るより大変だと思うけど。
 わたしそれ食べたことなーい。今度注文しようねー」

 珍しい料理は大好き。今度なんて思わず気軽に云ってしまったが、牡蠣は基本季節もの。次に一緒に来れた時にメニューに登っているかは不明だが。食べたい食べたい、と次の口約束をするのも楽しくて。

「っふふ、一緒においしいねって食べると余計においしいし、わたしもおねーさまの美味しい顔正面で見られて楽しい。
 いや、急。」

 凄い軽く嫁にとか云われた。どう考えても本心でもなさそうなので、あははと笑って、それにしても急だなーと肩を揺らしていた。
 そして、結局そんな楽しい食後にはつきもののデザートを注文して総て綺麗に平らげ、おいしく幸せな食事は当然大団円でした。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からティアフェルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からティエラさんが去りました。