2021/01/30 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル >  ――カゴメに遭った。久し振りにズタボロだ。
 
 荒れた路上に打ち棄てられたように転がる女。全身殴る蹴るで袋叩きにされて衣服は一部裂けて顔は腫れ、髪も乱れボロ雑巾状態になっていた、が。着衣の乱れなどはほぼなく、乱暴の痕はみられなかった。

 この強姦大国に於いてその憂き目に遭ったことが未だないのはただ運が良いからとか、腕が立つから、という訳でもなく、単にそれを阻む技を習得していたからである。要は、事に及ぼうとしたい相手を不能にしてしまうのだ。一時的にではあるが、使い物にならなくなり必然的に手出しができなくなる。
 しかし――、そうなったからといって無傷で済ませてくれないケースも多々あるもので。腹癒せにボコボコに殴って憂さを晴らすというパターンは、さほど珍しくない。
 特に数人いて退路が断たれるとTHE END 
 死なないだけマシと云うしかない。

「―――……っ、ぅ……」

 都内でも街灯の数もまばらで、さらにそれが切れていても壊れていても放置されるような地域は、夜の深さも一層で、そこかしこに闇溜まりができていた。その、暗がりの中で冷たい路傍に傷だらけで放置され、苦し気に呻いて身体を折り。そこかしこを血で汚し、意識朦朧とする。
 当然のように投棄されたゴミに混じって、腫れた目にぼんやりと映る、建物に切り取られた星空。
 冬の星座が冴え冴えと彩っていた。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にトーラスさんが現れました。
トーラス > 王都の中でも一際に治安の悪い貧民地区。
強盗、傷害、強姦は日常茶飯事で、殺人すらも珍しくはない危険地帯。
何しろ、都の治安を守る筈の衛兵も、騎士達も、権力と賄賂に溺れており、
碌に税金も収めぬ棄民達の治安を守ろうとする輩は存在していない。

寒い冬の晩、そんな貧民地区を一人、歩く見すぼらしい恰好の中年男の姿がある。
一見、冴えない外見の彼ではあるが、腰に佩かれた得物の存在は、
少なからずも、此の場所では護身の為の役割を十全に果たす。
その証拠に途中、次は犯すだの殺すだの、物騒な言葉を交わし合う血の気のが多い
柄の悪い複数人の男達とすれ違うも、視線がかち合い舌打ちされるだけで何事もなく無事に通り抜けた。

「……何だったんだ、ありゃ?」

すれ違って暫し、背後を振り返り、首を傾げるも、態々捕まえて素性を確かめる事はしない。
ならず者や傭兵も溢れている街で、彼等の如き存在は珍しくもなく、元の路を、
即ち、彼等が歩いてきた方向へと歩み続ければ、暗い道端に転がる人影に気付く。

「おい、あんた。……まだ生きてるか? 」

その傍らへと近付けば、腰を屈めながら、それが死体でない事を確かめるように視線を這わす。
大丈夫か、と尋ねないのは、一目瞭然であるからで。

ティアフェル >  全身を苛む苦痛を取り去るべく、回復魔法を施せればいいのだが……魔力切れを起こしており、痛みにそれを取り戻させるための瞑想にも入れず、ただ喘ぐ。
 ゆっくりゆっくりと自然回復していくのをただただ、待つ刻は緩慢で滞った流れに感じた。

 殴られた箇所が熱を持ち、感覚も鈍っていて、余り寒さも感じない。吹き抜けていく寒風の中で横たわり、見るともなしに星空を仰いでいたが、

「………ぁ……、」

 星空と境を作るような建物で覆われたその視界の端に映る姿と、声。力なく霞んだ瞳を瞬かせて。
 内心追い打ちだったらどうしようかと懸念したが……それにしてももう殴るところもないし、犯すには触手が動かなくなること請け合いの悲惨な様子。

 生存を確認する内容に数拍遅れて反応を示し。

「……ぅん……元気ー……」

 全力でダウトな返答を掠れた声音で発すると、ぃぇーぃ…などとカラ元気も甚だしい様子でふるふる震えて持ち上げるのもやっとな具合の右拳を振り上げる所作のオマケつき。

トーラス > カラ元気ながらも片手の拳を振り上げる余力の存在に、彼女の生存を確認すれば、
よっ、とおっさんめいた声を漏らしながらその背中に片手を滑り込ませて、上半身を軽く持ち上げ。

「さっきの連中か……、まぁ、この辺りじゃ強姦も珍しくな、……
 ふぅん。成る程、連中の逸物を噛み千切りでもしたのか?」

殴る蹴るの暴行の痕跡はあちらこちらに見られて、血痕も飛び散っている。
その割りには性的暴行を受けたにしては着衣の乱れは見られない。
先程、すれ違った下手人と思しき連中と彼女の状況から、下衆な勘繰りをしつつ、
腰に身に着けた革製のホルダーの蓋を開けば、小瓶を一本引き抜いて。

「そんなに元気ならば大丈夫かも知れないが、……ちょいとばかり役得をもらうぜ。」

小瓶の蓋を外すと中身を呷り、咥内へと液体を含ませる。
数種の薬草を煎じて酒に混ぜた回復薬、独特の匂いと苦み走った味を舌の上で感じながら、
徐ろに女に顔を近付けると、唇を寄せて口移しで呑み込ませようと試みて。

ティアフェル >  見覚えのない姿ではあるが、この地域で浮いているという感じでもない。ゴロツキというには親切だしそこまで落ちているようにも見えないが……通りすがりの善人にしてはいくらか雰囲気が違う。
 だが、取り敢えずこれ以上害されないだけでも御の字だ。よ、と反射するように同じように声を上げて、挨拶を返すように。
 背を支えられて身を起こされると、近づく相貌。霞みがちな双眸にやや彼の風体が問題なく判別できる程度映って。

「………似たよーなもんね……一生萎えてろサル、って裏技使ってこのザマよ……」

 自分をカゴメ=集団リンチにした連中と行き違ったらしい。概ねそれらしい悪態をついていたのだろうと察して、苦笑いを漏らして相変わらず掠れがちな声で応じ。
 そして、手当のひとつもしてくれるのかしら、などと呑気に考えておれば――、

「へ? は……ふくっ……?!」

 特有の癖のある匂いの水薬を含んだかと思えば不意に口を塞がれた。目を白黒させながら開いた唇を伝って流し込まれる薬液。一応は回復術師それが何かは理解したが……、こく、っと含んだところで、じたばたともがき、離して、離してと云うようにその背中の衣服を引っ張った。

トーラス > 「はっ、その結果が、この有り様か。
 大人しく猿共の相手をした方が無事で済んだんじゃないのか?」

先程の連中と彼女の間にて起こった出来事は概ね想像が付いた。
彼女のいう裏技が、どのような手段であったのかは分からないが、
性行為を致すのに困難な状況を作り出した挙句、苛立ち紛れに暴力を振るわれたのだろう。
この場所が富裕地区や平民地区の大通りであれば、衛兵を呼び寄せる所だが、生憎と此処は貧民地区。
一方的に彼女の肩を持つ事も、さりとて、男達を擁護する事もせず、口端を歪めて見せ。

「んっ、……はっ」

唇伝いに己の咥内の苦味が彼女の口の中へと流し込まれて咽喉が鳴る音が耳に届く。
魔女の秘薬と謳われる値が張る液体は、即座に彼女に抵抗する余力を与えたらしい。
じたばたと暴れ、衣服を掴んで引き剥がそうとする女の抵抗を間近に見て取れば、
唇の端を歪め、黒色の双眸に意地の悪い色を滲ませると、舌を差し込んで相手の舌に絡ませる。
既に薬品を呑み込んだ事を確認している故に、要らぬ工程を一つ踏み、
先の宣言通りに、応急手当の人助けの代償に、ちょいとばかりの役得を得ようとする。

ティアフェル > 「……死んだ方がマシよ……」

 世間の風潮とは外れた思想を持つ女だったのでぼそりと低い声で唸った。ここを一歩出ればそれもまあ、普通と云えば普通の考えではあろうが。
 見事なフルボッコ状態にされたというのにその堅い頭はそのままだったらしい。
 そして、彼はこの地区に珍しい通りすがりの親切な人――でもなかったらしい。少なくとも半分くらいは親切、と云えただろうが、そのやり口のお蔭で半分は消えた。

「っ、ん…! んん゛ー!」

 即効性のある秘薬の左様で早めに傷は癒えてきたが、それでもすぐに抵抗したのはまだ効果が出てもいない内からだった。
 薬の通った唇の合間から舌先が割りれられると、一層じたばたと身悶えして足掻き、それから、腫れの引き始めた眼で黒瞳をきっと睨み据えると、咥内に忍び込む舌先に歯を軽く立て、目で『噛むわよ?』と訴えた。
 一応高価な回復薬までもらったのだからなるたけしたくはないのだが、離してくれないならば止む無し。いいの?噛むわよ?噛んじゃうわよ?とぐぐ、とゆっくり舌を捕らえた歯先に力を込め始め。

トーラス > 「だったら、これに懲りて、可愛いお嬢ちゃんがこんな場所に立ち入らない事だ」

彼女がマグメールに初めて訪れた旅人だと言うならばご愁傷様な話だが、
貧民地区のスラム街がどの程度に危険であるのかは、子供ですら理解している。
この場所で何が起きても自己責任であり、嫌ならば立ち寄らなければ良い。
勿論、中年男にしてみても、この場所をうろついている訳だから、ただの善人である筈もなく。

「はぁっ、……んん」

睥睨する視線を受け止めながら、咥内に滑り込んだ舌は悪戯を止めず、
舌から離れると顎の内側の粘膜を擦り、互いの唾液とポーションの残滓を掬い上げると彼女の咽喉の奥へと押し込む。
いよいよ、己の舌に触れる歯先に力が籠められて、彼女の脅しが脅しでなくなる寸前を見計らうと、
ギリギリのタイミングで素早く舌を引き抜き、一度、離れた唇を軽く啄むように再度、触れさせる始末の悪さを見せて。

「はっ、……高性能だろう、このポーションは。何せ魔女謹製だからな。
 なぁに、善意の人助けなんで御代は結構だ。」

離れる唇の間に伝う銀糸を噛み千切り、唇を舐め拭いながら、しれっと意地悪く嗤いながらそう告げた。

ティアフェル > 「そうはいかないわよ、仕事だからね」

 依頼があればどこにでも赴くし、冒険者の端くれとして自衛手段も有してはいる――ただ、今日は同業者相手、数人だったのでどうにも分が悪かった。来慣れた場所でもあるが、たまにはこんなこともあるものだ。
 死ぬかと思ったが――翌朝にはけろっと忘れているぐらいの豪胆さ。
 だけど助ける素振りでやってくれた、この人のことは忘れまい。悪い意味で。

「っ、ふ…っく……!」

 この野郎、マジ噛んでやろうか。舌噛み切ってやろうか。
 警告めいた目線にも歯先にも動じずにそのままさらに咥内を蹂躙して唾液と薬液を流し込まれると、こく、と嚥下反射が起こってしまうから、一層剣呑な視線を注ぎ、ギロギロと薄暗い色を帯び始め、前歯に力を込め始めたところで――逃げやがった。
 しかも余裕綽々で離れた後も啄まれて、よし、殺そう、とどす暗い思想に染められ。

「――歯ぁ食いしばれー!」

 回復薬が全身に浸透し魔力を帯びたそれがみるみる傷を癒していくと、善意の人助けと笑わせる科白をガン無視して、ノータイムでぐーが飛んだ。
 唇が触れ合うほど近い距離の彼の頬に一直線に飛ぶ右ストレートだった。直撃したら歯を食いしばってる暇はなかったかも知れない。

トーラス > 「仕事? こんな場所でなんて少しは選んだ方が良いんじゃないか?」

彼女が生業を知らない為に怪訝な視線を向けてしまう。
繰り返しになるが、城壁に囲まれた王都の中ではあるものの、
下手をしたら都の外以上に危険地帯かも知れない貧民地区。
職業柄仕方ないにしても選びようがあるだろうと、苦笑を滲ませる。

さもなければ、暴力沙汰に遭う事もあれば、斯様に迷惑な人助けに遭う事にもなる。
と、言わんばかりに女の唇を奪うという不埒な行為に及んだ挙句、
冗談めいた戯言を嘯く中年男。その頬を狙って正義の鉄拳制裁が向けられると、

「おっと……、いやぁ、抜群の効き目だな。
 こんなに早く元気になるなんて思わなかったが、もう無事みたいだ」

襲来する右ストレートに、さっと右手を翳すと彼女の拳が頬を打つ前に止めて握り締める。
然程に力を込めずに柔らかく受け止めた掌は石のような硬さで打ち抜けぬ印象を与えて。

ティアフェル > 「所かまわないのがウリなもんで。一応冒険者でもあるからね」

 呼ばれれば難色を示さずどこへでもゆく。逆に富裕地区の方がやり辛いくらいだ。
 平然と口にすれば、そっちもそっちで同業者、かなあ…?と小首を捻りながら観察の視線を流し。
 それから大分手強そうなのは把握していたが、拳をいとも容易く受け止められて、ちいい、と舌打ちが強くカマされる。

「一発くらい食らっときなさいよ……。
 ――もぉ、礼を云うのもちょっと嫌になっちゃったけど、結果的に回復したわ! 久し振り配布の――肩叩き拳(券ではない)をくれてやろう! 受け取りなさいっ」

 受けられた拳を引っこ抜いて、この至近距離のノータイムであっさり受けられたらもう追撃は無駄そうだ。ぶん殴るのを諦めて――律儀(?)に謝礼としてポッケから出したのは、【肩叩き拳】と記された一枚の紙片。
 敬老の際におばあちゃんとかに孫が渡す無邪気なアレのようだ。ある意味やばい。

トーラス > 「へぇ、御同輩かぁ。だったら、尚の事、仕事を選ぶべきだと思うが……。
 ま、他人の流儀に口を挟むなってのがルールだからな。これ以上は止しておこう」

彼女の生業が己と同じであれば、それ以上の横槍は噤まれる。
冒険者は個人事業主であり、得てして個人主義の輩が多い。
リスクとリターンの分配には個々人の流儀があるので他者が口を出さない不文律だ。
恐らく彼女が産まれた頃から冒険者を続けている中年男であれば、その辺りは弁えている。

「御礼にほっぺにチューだったら受け取ったんだがなぁ。拳は御遠慮したいぜ。
 ん、何だこいつは……、肩叩き拳? 字を間違えていないか?」

差し出された紙片を受け取ると、その表面に書き記された文字を読み解く。
街で配られているクーポン券やサービス券の類と同じ意味合いであるならば、
最後の一文字は「拳」ではなくて、「券」になるのが正解であろう。
その紙片と彼女の顔を交互に見ながら、僅かばかり、残念な子を見るような生暖かい視線を彼女に向けた。

ティアフェル > 「わたしみたいにどこでも遠征するヒーラーってそんな多くないから。稼げるのよ……。そして稼がねばならないのよ……」

 わたしの双肩には食べ盛りのサル……もとい、弟達が。
 やはり同業者であったとは思いつつ。貧民地区でそれなりにヤバい目には遭うものの、冒険者なんてどこか外れているところがあるもので。
 危険を冒すからこその冒険者。この程度で音を上げてちゃやってられませんと肩を竦め。

「は? もう沢山でしょ? あんだけしといてまだ云うか。
 ――合ってるよ?」

 にこ…と先ほど握っていた拳を再び固めて間違えてない、合ってると朗らかにご返答。
 彼には懇切丁寧に肩叩き拳を捧げようではないか。
 普段は身体ケアの基本として習得している按摩スキルを駆使して程よく凝りを解して差し上げるが、相手に関しては容赦なくバキバキにカマす。

トーラス > 「……拳闘士ではなく、ヒーラーなのか?
 しかし、借金か何か知らないが、ヒーラーが傷付いていたら本末転倒だろう」

自身には届かなかったものの、即座に拳を繰り出す素早さは本職と誤解させるに至るキレ。
故に彼女の職種を耳にすれば、双眸を瞬かせて、聞き返して見せる。
彼の知るヒーラーは他の冒険者の後ろにて回復魔法や治療を行なう役職であり、
間違っても複数人の男相手に立ち回ったりしないのだが、と無言ながらに彼女に含みを持たせた視線を向ける。

「おいおい、勘違いしないでくれよ。 俺は傷だらけで倒れていたあんたに薬を飲ませただけだぞ。
 まぁ、強いて言うならば、ごちそうさまでしたって所だがなぁ」

明らかに確信犯。しかも、反省の色はなし。
受け取った紙片の文字が合っていると強弁されると小首を傾げつつ、

「ふぅん、で、こいつを使用するとマッサージでもして、癒してくれるのかい?
 そういや、名前も聞いてなかったな。俺はトーラスだ。」

誤字の件は、この際、置いておくとして使用法を訪ねて見せる。
よもや、感謝の御礼ではなく、お礼参りの礼として肩に先程の拳を向けるのではと疑う様子。

ティアフェル > 「この格好を見て判らな……いか」

 白衣の上にコートを着ているしそういえば着衣もズタボロだ。髪も乱れていてよれよれしていることに気づき、徐に埃を払い、襟を正して着衣の乱れを整え、それから髪を一度外して手櫛で簡単に梳くとうなじの辺りで一本に纏め。

「――借金じゃないわよ。食べ盛りの弟が5人いるの。……普段はこんなことないのよ。レアケースだから」

 一応身だしなみを整えてから返答して、それから拳闘士に呼ばわりされているとやや不服そうに唇を尖らせていた。
 無言の視線が投げかけられると腕組みして顎を反らす姿勢で「云いたいことがあるなら云いなさいよ」とどこまでも気が強い。

「舌を入れる必要がどこにあったってのよ。最初の2秒で事足りていたものとねちねちと――しかも殴らせない、とは…! ビンタにしとけばよかったかな…?!」

 ぐーだったから痛そうでかわされたのかも知れない。ぱーだったら多少は食らってくれたかも知れない。そんな根拠のない憶測を口にして、ねえ…?!と迫った。

「そうそう、そうよー。肩懲りなんて一発で解れちゃうんだから、さあ使え。今使え。肩も腰もばきばきなお年頃でしょ?
 トーラスね、憶えとくよ、忘れん……。わたしはティアフェル」

 その名前は割と恨みと一緒にインプット。一見にこやかに凝りを解すと請け合うが――内心では解れることは解れるが痛いツボを刺激していこうと心に誓っていた。
 笑顔を張り付けたまま、使えとまた迫る。