2020/10/17 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にシーナさんが現れました。
シーナ > 弟妹を寝かしつけ、母の看病もひと段落ついた、深更の夜のこと。
暗い通りに面した勝手口から、こっそりと家を抜け出した少女は、
すぐ傍に積まれた古い木箱の陰に力無く蹲って首を垂れる。
背中を木箱のひとつに預け、もぞもぞと居心地悪そうに身を捩り、
――――――両手が躊躇いがちに向かうのは、スカートの下腹部辺りだった。

「ぅ、……くふ、ぅ………ん、…んっ、ん―――――…」

今日も、母が世話になっている娼館で、下働きのバイトをしてきた。
マダムは明日もおいでと言ってくれたし、今、あそこは貴重な稼ぎ口でもある。
けれどもあの場所で洗い物をしたり、掃除をしたりしていれば、
必然的に目にするもの、耳に届くものが、今の少女には毒にも等しかった。
真っ赤に火照った顔をふるふると左右に打ち振って、何とかやり過ごそう、堪えようとするけれど。
少しでも気を抜けば、スカート越しに震える指先が、下肢の付け根に忍び込んでしまいそうで。

「だ……め、こ、いうの、……だめ、もう、しちゃ、だめなの……っ」

呟く声が吐息に掠れて、ひとりでに背筋が粟立ってしまう。
少女が稚拙な自涜行為に耽るのも、もう、時間の問題と思われた。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にアレエルさんが現れました。
アレエル > 暗がりの路地、少女が躊躇いながら漏らす呟きに誘われるようにして
吹き込んだ風が近くの痩せた木を揺らした。
そして、いつの間にかそこに居たのか
今まで気配もなかった男が突然現れたように木の陰から姿を見せた。

「ふーん、何をシちゃダメなの……?
 面白そうなことなら、僕も遊びに混ぜて欲しいな」

落ち着きある声音でそんな風に言いながら、
ところどころ割れた石畳に小さな足音を響かせて
少女の目の前まで歩いていく。
そして彼女を見下ろすように立ち止まると、
すらりとした上半身を軽く折り曲げて様子を覗き込もうとする。
その視線は、彼女の仕様としていたことを知っているかのように
その小さな手の指先へと向けられていた。

シーナ > ざわ、と立ち枯れたような枝木が揺れる。
薄着では肌寒いような夜更けに、けれど頬を嬲る風はいっそ心地良いほどで、
―――そっと瞬きをした、その隙を衝くように。

「きゃ、――――――」

突然人の声が聞こえ、振り返ればこちらへ歩み寄ってくる人影がひとつ。
見知った顔ではない、この辺りの人では無いように見える。
そして何より、どこまで悟られているのかは分からないけれど、
してはいけないこと、をしている現場を見られた相手だ。
上目に向ける眼差しは怯え切って、眦には早くも涙が溜まりつつあり。
スカートの生地を両手で握り締め、背後の木箱にぺたりと貼りつくようにして、
少しでも、相手との間に距離を稼ごうとしながら、

「だ、……だ、れ、ですか………、
 あ…たし、……あたし、べつに、なにも―――――っ、」

震える声で、遊び、を否定する。
だってどうしたって、認められるはずがない。
見ず知らずの男の人相手に、そんなことは―――――。

アレエル > 少女の目元に涙が浮かびかけているのを見つけると、
ちょっと慌てたような素振りを見せて、取り繕おうとする。

「あ、驚かなくても大丈夫、怪しい者じゃないよ」

説得力のない言葉、というよりも何一つそんな証拠も無さそうに平然と言ってのける。
本人だけはそれで十分と思っているらしく、
優しく微笑みを浮かべながら、両手を広げて近づく。
武器などなく敵意のないことを示すためだが、
左右への逃げ道を封じて壁際へ追い込んでいるようにも見える、かもしれない。

「僕の名前はアレエル。……君の名前は?」

優しい目で見つながら、彼女が自分の行為を隠すような事を言うと、少し笑った。

「何も? 何も隠すような事じゃないでしょ……。
 小さな女の子がこんな夜に一人で寂しそうに見えたし、
 それが愛に飢えているようなら、なおさら僕の出番だよ」

そう言いながら、小さな彼女からすれば幅の広い足取りであっという間に
その近くへと歩み寄り、ゆっくりと手を伸ばして少女の手を取ろうとする。

シーナ > 「―――――――っ、……」

怪しくない、と言われて、素直に信じられる状況ではない。
けれども、少なくとも目の前の男は、この界隈の荒くれ者たちとは違う種類の男に見えた。
だから、無理やりにでも立ち上がって逃げ出そうとはしないが、
代わりにますます肩を竦ませ、縮こまってしまうことに。

「ぁ、……アレ、エル、さ……ん……?
 あたし、………あ、たしは、…―――――」

『シーナ』と、それだけ答えるのもやっとといった有り様で、
スカートを握り締めた両手はますます強張るばかり。
躊躇い無く伸ばされた男の手が、その手を捉えようとするのへ、
びくん、と大きく身を震わせて目を瞠り、

「な、……な、に、言ってる、ん、ですか、
 あたし、……あ、たし、べつに、寂しく、なん……か、」

慌てたように手を引っ込め、両腕で自らの身体を抱き締めるようにして。
男を見つめ返す双眸には、羞恥より、戸惑いと警戒の色が深く滲んでいた。