2020/06/29 のログ
ハレス > 「ふぅむ、そういうもんか…いやそういうもんだったな
どうにも引退が早いと思考もジジ臭く…」

なるほど間違いではなかったようだが、いかんせん華やかな舞台から退いて久しい身。
鈍ったのは武器を振るう腕だけでなく、そういった感覚も必要なくなったのだ。
ついつい口にする言葉を噤めば、自嘲するかのような笑みを浮かべる。

「ほぉ、お嬢ちゃんみたいな別嬪を逃がすとは、相当につまらんパーティだったんだろうな。
…整体師だ、身体で稼ぐって意味なら間違っちゃいねぇが、これでもきちっとした仕事してんだぜ」

こういう見てくれが故にそういう風に見られることも、無きにしもあらずな面もあるのか。
誤解なきようにきちんと己の仕事を説明する。

ラエルノア > 「…あらま」

全てを見透かしたうえで揶揄うような返事でも返って来るかと思いきや、随分と善良な応えに思わず瞬きを返した。
立てた指先を唇の下に添えることで、幾分思案顔となりつつに相手を見遣り。

「ほんとね。随分真面目にお仕事なさっているご様子。
……お口もお上手ですこと」

客商売であるなら誰しも世辞の一つや二つ、滑らかに口にできるだろうと。
そう言いたげな声音ではあるが、揶揄うでもなく不快げでもなく。
夜の街には身体のメンテナンスの需要も高いだろうし、なるほどねとでもいうように頷きを返した。

「その整体師さんはもうお仕事終わりかしら?
もしお得意様に向かう途中なのでしたら私の不注意の所為で足止めをしてしまってごめんなさいね」

ハレス > 「そう言われると…自信がないもんだ。
客商売なもんで口が立つかもしれないが、世辞が言えるほど器用な人間じゃねぇな」

真面目な仕事ぶりかどうかについては、あまり自信が持てない様子。
だが必要以上に遜ることもなければ、不遜な態度というわけでもない。
彼女を別嬪だと言ったのは、世辞でもなんでもないと、恥ずかし気もなく言い切る。

「ああ、仕事終わって店に戻るとこだった、問題ない。
…ふぅむ…だがお嬢ちゃんが乗り気なら、もう一仕事するのも悪くないな」

ゆっくりと、その逞しい身体で彼女に近づいてみる。
立派な体格だがその纏う雰囲気には、不思議と威圧さはないが、強さは感じさせるかもしれない。
彼の言うもう一仕事がただの施術で終わるかどうかは彼女次第だが。

ラエルノア > 「……あら、まぁ」

其方を窺う双眸がきゅうっと細められる。
柔く笑むように見えて、娼婦たちが酔客の品定めをするときによくする眼差し。
どうにも実直な御仁のように見受けられるが、それがこの街にもその商売にもそぐわぬ風に見え、
再度猫のような仕草で目を細めてから、その表情を笑みへと変えた。

「そうねぇ…。
近頃多少無理をさせられたので確かに少し疲れてはいるかも知れないけど。
足止めをさせてしまったお詫びに、あなたのお仕事の様子を拝見するのもいいかしらね。
尤も、そんなに手持ちもないのよ?
何せこんな時間に此処を歩いているくらいですもの」

彼が向けた最初の問いに答えなかった割りに、冗談めかして肩を竦めて見せる。

ハレス > 彼女の所作に、男はただ緩やかに笑うのみ。
その見た目、仕事柄からあらぬ噂やら嫌疑やらの疑りは慣れたもの。
別段善人というわけでもないし、欲に素直なことは間違いないが、それを仕事に持ち込まなかっただけの話なのだが。
この国ではそんなことすら『変わった人』という印象を持たれる。
故に彼女の品定めする眼差しなど、気にも留めない。

「とっくに業務時間外だ、プライベートの施術に金なんか取れねぇよ
店は富裕地区だからちょっと歩くことになるが…構わんか?」

彼女の冗談めかして言った言葉を、実にあっさりとした言葉で返した男。
オンとオフの切り替えははっきりしている、ということなのだろうか。
少々強引めいてはいるが、多少歩いたところで施術を受けてしまえばチャラにはなりそうだが。

ラエルノア > 店の場を聞くと、再度目を細めてから、またも「あらま」と口の中で呟いた。
直ぐに人当たりの良い笑みを浮かべ、今来た道の方へと振り返る。
その先に、彼のいう富裕地区が続いているから。

「随分な場所にお店をお持ちね。
でもそれなら、わざわざここまで歩いて来なければよかったわ」

自分が先程まで仕事していたのがまさにそのエリアだと暗に告げつつ肩を竦める。
稼ぐより払う方が多い、という事態にはならなくて済みそうではあるが。

「プライベート…ねぇ。そんなことで大丈夫かしら?
でも、ま、今回はお言葉に甘えさせて頂きましょ」

小生意気な言い回しは商売柄もあるが、8割方わざと。
どうせ今夜は仕事もないのだからとばかり、彼の示す方角へと歩を向け――

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からハレスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からラエルノアさんが去りました。