2020/06/04 のログ
リザ > さて──と、少年はそのまま路地の奥へと。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からリザさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にアイリースさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にビョルンさんが現れました。
アイリース > 「……ふぅっ」

連日、暑い日が続く中。
私は、自分の部屋で涼んでいた。
私の勤め先であるところの娼館の一室。
特別に部屋として使わせてもらっているそこ。
広さはそこそこ。無理を言って畳を敷いてもらっている。
ふすまを開ければ、ちょっとした庭の見える。
そんな、私にはもったいないくらいの部屋だ。

「……風が涼しい……」

部屋にあるものといえば、タンスと姿見。
あとは、ちょっとした机くらい。
押し入れには布団が二つ。
特徴らしい特徴こそないけど、こじんまりとしつつも。
居心地の良い、この国には珍しい和室。
それが私の部屋で、私の城である。
庭からの風はゆるやかだけれど涼しい。

「これなら、今夜はゆっくり寝れるかな……」

だらしなく足を伸ばしつつ、ん~、と伸びをしてみる。
今日の仕事は適当なところで切り上げ。
店の女の子たちにも、休暇は必要であるし……。

ビョルン > この女郎屋はほぼ己の塒になりつつある。
そしてこの店の女将を連れて買い物に出かけ、夏物のワンピースを買い与えて以来行動に些細な変化があった。

ある日は花を、ある日は果物を、と些細な物を買って持ち帰りつっけんどんに女へと差し出す日々が続く。
今日は少し珍しい品を手に、女郎屋の奥座敷に『帰宅』した。

麻の繊維を粗く編み、部屋の四隅に固定する紐のついた「蚊帳」であった。
夕涼み中なのらし、相手の隣へ蚊帳の入った紙袋を無造作に置いて並んで座る。

アイリース > 「……」

静かな室内に、音も無く現れた相手。
振り向いて確認するまでも無く。
その相手が、誰なのかはわかっている。
最近、この相手がやたらに贈り物をしてくることについて。
私としては、思うところが無いでもないが。

「……おかえりなさいませ、若様。
 冷たいお飲み物でもお持ちいたしましょうか」

と、そう声をかけつつも、相手の方は見ない。
姿勢も崩したままだ。わざわざ正座したりなんてしない。
……この相手とある程度縁を持ってわかったことだが。
この相手には、『部下』としての振る舞いを求められないときは。
部下としての振る舞いを見せるのはご法度のようである。

「……おや。これは……」

相手の方は見ないまま、相手の持ってきた紙袋を見る。
なんとも。この国では珍しい蚊帳であった。
いったいどこから手に入れたのか。少し疑問ではあるが。
取り立てて問いただしたりはせず。
ただ、相手の反応を待つ。

ビョルン > 「うん、今帰った」

夕刻早々に店を閉めていることには口を挟まず。
するりと帰宅し、するりと腰を下ろしている。

「お茶を一杯所望しよう」

上着は脱いで、ネクタイを解いてワイシャツの前を寛げる。
相手が袋の中身に目を留めると、軽く頷く。

「この女郎屋の前の主が夏には欠かさず使っていたと聞いて。
 と、いうことはここで無防備に寝ると虫にやられるということだろうか」

それを危ぶみ買い求めてきたと、言葉足りなぎみに伝える。

アイリース > 「はい。おかえりなさいませ」

相手の言葉に、もう一度そう言う。
意味自体は無い。ただ、相手の言葉に、返答をするという。
単純に、それだけを重視している。

「かしこまりました。いまご用意いたします」

相手の言葉を聞き、私は立ち上がる。
部屋を後にしようとした瞬間、背中に声をかけられ。

「そうなのですね。
 それは、ありがとうございます」

なるほど、確かに虫に刺されては仕事にも差し支える。
用心棒がすごみながら、腕とかを掻いていたら、カッコ悪い。
そう苦笑しながら、私は部屋を後にし。
厨房から、冷えたお茶を持って帰ってくる。

「はい。どうぞ。
 ……しかし、暑いですね」

相手にそれを差し出しつつ。
再度、足を崩してすわり、風を味わう。
相変わらず、静かな空間。なかなか、いいものである。

ビョルン > 女の声は、今は己だけの為であるということに妙な満足感がある。
それの意味するところは何かとなるとまた少し己には難しい問題だ。
だからただ、頷いて相手の言葉を聞いてお茶を受け取る。

いただきます、と呟いてお茶を飲みながら暑さを訴える声には頷いて。

「縁の下にタライがあったと思う。
 行水でもするか。うん、そうしよう」

思いつけば飲みさしの茶を置いて立ち上がり、裸足になって庭へと下りる。
タライを支度して井戸から水を汲んで、2人が足浴できるほどの水はすぐに溜まった。

労働の汗をハンカチで拭えば洋袴の裾を捲って裸足の足を脛あたりまで浸す。

アイリース > 結局のところ。問題は、相手の内心の部分である。
私に対して、女を求めているのか。部下を求めているのか。
そこのところを、ハッキリと言葉にしてもらえていない。
だからこそ問題なのだ……と言うのは。

(私自身の無能の証明になるよな~……)

年上であり、くノ一である自分が。
年下の男の子の心情を読み取れぬようでは。
はっきり言って、くノ一としての商売上がったりである。
なので、いろいろと考えなくてはいけないのであるが。

「……そういえば、ございましたね。
 あぁ、いいですね。たまには行水も」

そういえば、『ル・リエーの水遊場』という場所も無かったっけ?
そう口にするのは、憚られ。
私は、相手の提案に乗ることにする。

「……では、失礼いたします」

私はそう言い、相手同様。足だけを水につける。
ひんやりとした冷たさは、非常に心地よいのだが。
なにも、私に準備を命じてくれればいいだろうに。
そうしないのがまたやっかいでもあるし、かわいらしくもある。
私は、茶を飲みながら、ほぅ、と息を漏らす。

ビョルン > 相手の思惑や、自分の感情はどこへやら。
一事が万事で、今は汲みたての井戸水の冷やっこさを堪能している。

並んで腰掛け、水の中。
片足の先をついついと相手の量踵の間から割り込ませて、そのまま相手の膝を自分の片膝の上に乗せて悪戯に足を開かせようとする。
ちょっとした悪戯で深い意味はないつもりだ。

アイリース > 「……」

井戸水の冷たさを味わっていれば。
相手の足がなんとも悪戯っぽく動いてくる。
最初はそれを無視していたのだが。

「……若様。何をなさっているのですか?」

さすがに、足を開かされそうになったので。
そこで、相手に声をかける。
ちょっと、それはさすがに悪戯にしては、度が過ぎつつある感じなので。

ビョルン > 縁の上で絡む脚。
諫めるような問いかけに、珍しく口元を上げる。
冷茶のグラスを傍らに置けば、相手の頬へ手を添える。

女の顔を見てゆっくりと睫毛を上下させて瞬き、目を伏せながら唇を重ねようか。

アイリース > 「んっ……」

私の言葉を無視し、ほほに触れてくる相手。
胸に湧き上がるのは、呆れが半分。
そしてもう半分は困惑だ。
こういう時、どんな反応をしていいかわからない。

「あっ……」

そのまま唇を重ねられてしまえば。
私の口からは声が漏れ。
私もまた、目を閉じてしまう。
流されているなぁ、と。思わないでもないが。
それを喜んでいるのもまた、事実ではある。

ビョルン > 己を拒む異性、というものを己は知らない。
今日の相手もまた同じであることに、言い得ぬ気分を抱きそれを吐き出すこともならずでいた。

流れ流されるように女の髪を撫でて唇を食む。

アイリース > この際なので、ハッキリ言うとすれば。
私は、くノ一であるがゆえ。
恋愛経験、というものについては皆無と言わざるを得ないのだ。
だが。……いや、だからこそ。

「……は、ぁっ……」

私は、相手から身を離し、まっすぐに相手を見る。
髪をなでられれば、心地よさが生じるのだが。
そのまま、流されつづけていいとは。私には思えなかった。

「……若様。はっきりお伝えします。
 もしも、私を『部下の役目』として抱くおつもりなら。
 そうおっしゃってください。
 ……そうでないのなら。……そうで、ないのなら」

怖い。これを口にしたせいで、関係が終わるかもしれない。
それが怖い。でも、このままではいけないと。
私は、そう思う。ゆえに。

「もし、これが職務でないというのなら。
 ……私を。ちゃんと、一人の女として。
 口説き落としてくださいませ」

それを。言ってしまった。

ビョルン > さらに深く口づけようと半開いた格好のまま離れる唇。

相手がひとつひとつ、言葉を紡ぐのをじっと見据えながら聞いていた。
暫し沈黙。
それから一度くしゃりと自分の髪を掻き乱し。

「其れ成らば、ぢゃあ──教えてお呉れな。
 『かぁいく思う女の口説き方』ってェのを、さ──…」

再び相手の頬に触れて顔を近づけるが触れ合うことはない。
瞳と瞳、一寸程の距離でじい、と見据えて。

アイリース > ……沈黙が、重い。っていうか痛い。
そもそも、忍が主君に意見とか。
普通に首を刎ねられてもおかしくない。
おまけに、口説いてくれとか。
ことさらにマズい状況だ。

「……は、ぃ?」

続いての相手の言葉に、思わず首を傾げてしまう。
相手の、普段とは違う言葉遣い。
さらには、言葉の意味に、思わず理解が追いつかなくなりそうになるが。

「……えぇ、っと。それは……。
 また、難しいことを聞くなぁ、キミは……」

思わず、地が出てしまうが。そこで咳払い。
こうなれば。恥は掻き捨て。
どこまでも、私の本心本音をぶちまけてやるしかない。

「別に、難しいことを要求してるんじゃあないんだけど。
 キミが、私のことを『女性』としてどう思ってるかが聞きたい。
 あとは……優しく抱いてほしいし。あぁ、そうそう。
 キミのこと。立場に縛られていない、キミ自身のことを。
 もっともっと、触れ合いながら、教えてほしい」

あああああああああ、私は何を言ってるんだろうか!
年下の男の子に! 私をどう思うの? とか!?
もっと優しく抱いて、とか!?
挙句、抱き合いながら、アナタのことを教えてよ、とかぁ!?

(……らしくないのは、わかってる。
 でも……一度くらい、そう願ったって、バチはあたらないでしょ)

神様仏様我が故郷の山々よ。
どうかこんな私に慈悲と加護を。
流れ着いた旅の果て、一人の男に心奪われつつある私にお情けを。

ビョルン > とても近い距離で、女の語調やら表情がくるくると変わるのを見ている。
己の年相応にキミ呼ばわりしたり、本や芝居で見る『恋する乙女』のようなことを言っているのを最後まで聞いて。

──ずいぶんと口いっぱいに言ったものだ。

そんなことがちらと脳裏をかすめて。
ふっ、と笑う息を吐いた。情事の最中以外に、感情を見せたのは初めてかもしれない。

「──やりたいだけの女なら、こんなに苦労はしないよ。
 『お互いに』ってェ、ことなンだろ──なァ」

程良く冷えた足は、タライの中からすっくと立ちあがる。
部屋の真ん中を空けるように家具を寄せれば床を並べて蚊帳を吊り。

「──今日のところ引き分け、で、互いに悶々としながら寝ないか、なァ?」

自他、共に対しても心身両面に関しても被虐的で嗜虐的な己は今ウキウキとしているに違いない。
薄ら笑いで熱い息つきながら夜着へと着替え。

アイリース > 心の奥底にあったものを吐き出し。
相手を見る。相手の反応を待つ。
またこの沈黙が非常に厳しいものがあるのだけれども。
相手が笑ったのを見て、また羞恥が湧き上がるが。

「……え、それって……」

どういう意味。そう聞こうとした瞬間。
相手が立ち上がり、私は思わず呆然としてしまうのだが。

「え、ええええぇ!?
 こ、ここで!? いや、ちょ、えぇっ!?」

相手の提案に、さらに混乱してしまう。
いや、生殺し、ではないけれども。
なんだろう、機を外された気がする……!
あぁいや、でもここで求めたらなんか、なんか……!

(負けた気がする……!)

別に勝負してないけど! 何かが負けた気がするぅ……!
こ、こうなったら。黙って、寝るしかないのだろうか。
私はそう考え。私も、着替えをすることにする。

ビョルン > 蚊帳を吊るして開け放した襖から庭へと空気が抜けるようにすれば、なんとも涼しい空間ができた。
和式寝衣に着替えれば蚊帳の裾を少し捲って床へ着く。
相手がどんな様子で隣の布団へ就寝するのか楽しみに待つ。

不貞腐れているだろうか、落胆しているだろうか。
でも、自分をまだ嫌っちゃいない気もする。

生殺しの夜は始まったばかりである。

アイリース > 「……わぁ」

相手が手早く蚊帳を準備するのを見て、声が漏れた。
昔、何度か見た光景。修行中はぜんぜんだったけど。
あぁ、懐かしいなぁ、なんて思ってしまう。

「……」

本当に。何も言わずに就寝しようとする相手。
それを見ながら、私も隣に布団を敷き。
黙ってそこに寝る。

「……くぅぅぅぅうっ……!」

思わず、なんだかわからない声が漏れるが。
何かを我慢して、寝よう、寝ようと集中する。
相手の顔が見えないけれども。なんだろうか。
平然としていそうで、とても悔しい。

「……あぁ、もぅっ……!」

悔しさのせいでなかなか眠れず。
私は、もぞもぞと布団の中で身もだえすることになった。
……今夜は。長い夜になりそうだ……。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からビョルンさんが去りました。
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