2020/05/22 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にアイリースさんが現れました。
アイリース > 貧民地区、娼婦街。
その名の通り……娼館の並ぶエリアだ。
私は、そこでいま、一軒の娼館の主人を務めている。

「……は、ぁっ……」

口から紫煙を吐く。キセルを手で弄びながら。
行き交う人々を見ながら、今の自分について思う。
なんだかんだ、あれよあれよで今の立場。
……別段、イヤではない。というか。
普通にお仕事してお金をもらえるのはとっても大事。
なので、雇われ店主、というのも悪くない。いやむしろ良い。

「……これで、トラブルと無縁なら最高に楽なんでありんすがねぇ」

貧民地区はトラブルとは縁深い。
いや、トラブルがあり溢れているのが貧民地区だ。
さて、今宵のお客様はどのような方なのか。
そう思いながら、私は、娼館の入り口で、キセルを吹かす。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にビョルンさんが現れました。
ビョルン > 大通りを一本奥へ。
女郎屋など、まっとうな街から遠すぎても近すぎても趣がない。
そうした家は北向きくらいで丁度良い。

かさかさと埃っぽい道を踏んで女のいる戸口へ立てば。

「──今帰って。
 見りゃ、判るか」

其処へ立つ女へ向けてぽつり。
肩に掛かるコートを脱いで差し出す。

アイリース > ゆったりとした時間の流れの中。
現れた人影に顔を上げ、その姿を確認する。
私は、手を差し出し、相手のコートを受け取り。

「これは若様。こんばんは。
 今宵は遊びを? それとも、宿としてのご利用で?」

いわゆる私の雇用主に対し、そう声をかけつつ。
私は、相手を店内へと案内する。

ビョルン > コートの受け渡しをしながらの女の声音に。

「お言葉だな。
 ──飯」

勝手知ったる、己の女郎屋。
店主の居室たる奥座敷へ、ずかずかと進んで和室の中で胡坐をかく。

アイリース > 受け取ったコートを腕にかけつつ。
そっけない、というか。
本当に必要最低限の言葉に、私は思わず苦笑してしまいそうになるが。

「あい承りました。
 すぐに用意を」

預かったコートを吊るし、すぐにスタッフに声をかける。
その後、座敷へと向かい、音たてぬ様に正座。
程なくして、スタッフが食事を持ってきてくれる。

「ささ、どうぞ。お召し上がりくださいませ」

私はスタッフから盆を受け取り、相手の前に静かに差し出す。
メニューは、米、焼き魚、味噌汁、おひたし、たくあんだ。
私がここの主人になった時に、従業員には東の国の食事を作れるように練習させておいた。
味は……まぁ、私が食べて合格点を出しているので。
不味くはないはず。

ビョルン > ここへ来て間もないながら、下女は上手く使えているようでそこは感心したように頷く。
奥座敷では収支の帳簿へ軽く目を通して卓袱台の向こう側へ押し戻す。
食事が給仕されるまでは、暫し考え事をしているがそれを読み取れる表情をしているかどうかは怪しい。

料理を乗せた食器の数々が目の前に並べば両手を合わせてから箸を取り。

「いただきます」

スープは塩辛く感じるがその中にも風味があるものらしく、慣れるまでは苦手だとも零さず白飯と共に食す。
野菜も食感が良い、けれど箸を向けて止まるのは。

「小骨の、あるやつか?」

焼き魚にしろ煮たものにしろ、捌いたこともなければ骨の位置も知れずに躊躇を見せる。

アイリース > 元々、忍として部下を使うことは訓練してきたが。
考えるに、普通の仕事の部下を使う、というのは未経験。
私なりに、試行錯誤しながらやっているが。
少なくとも、相手に迷惑だけはかけられないので、いつも必死である。

「はい、どうぞ」

相手の箸の使い方を見ながら、思わず感心してしまう。
東の地でも十分通用する手並み。
……こちらの人間は、どうにも。箸の使い方が見ていられないのだが。
この若者は素晴らしいなぁ、と思っていれば。相手の動きが止まり。

「……多少は、あるかもしれませんね。
 失礼致します」

その言葉に、私は懐からマイ箸を取り出し、手早く身と骨を分ける。
じっ、と確認し、取り残しないことを確信した瞬間。
私の中で、ちょっとしたイタズラ心が芽生え。
そのまま身を解し掴み、相手に向かい、差し出し。

「はい、若様。あ~ん、でございます」

と、満面の笑顔でにじり寄ろう。

ビョルン > 殊更道具を使い事に関しては己は慣れるのが早い方で、箸で言うなれば磁器の肌に引っ付いた飯粒も残さずさらうことができた。
そうして知識としての食事マナーに関しても覚えるのが早かった筈だ。

焼き魚を見ながらの言葉に相手が助け舟を出すように、焼き魚の身をほぐしているのを感心しながら見ている。
だが、女が笑顔で己へ箸を向けると、一拍の間を置きすっと音もなく立ち上がる。

部屋の出入り口に向かえば通気の為に開けたままになっていた襖を閉じる。
そうして面映ゆそうに己の頬を一度擦れば、再び食卓につく。

「………」

とにかく真顔で口を開く。
雛鳥を思い描き、目は宙を泳ぐ。

アイリース > 魚の骨を綺麗に取り除く。
これは実はとても大事だし、とても有意義なスキルだ。
喉に魚の骨が刺さって大事になった人間もいるし。
これを見せると、相手が驚いたり、感心したりすることも多い。
なので、恐らく今の一度で、少なくともこの相手は、基本のやり方は理解できただろう。
……まぁ、それはどうでもいいのだが。

「……あ~ん、です」

そう。今の私には、この相手をからか……。
もてなすことの方が大事なのである。
相手が襖を閉じ、照れているであろう様子。
まぁまぁ、なんとも可愛らしいことである。

「あ~ん」

繰り返し言い、相手が口を開いたのなら。
そこへゆっくりと身を入れてさしあげる。
どうにも、緊張している様子の相手に、くすくすと声が漏れてしまうが。

「……お味はいかがですか? 若様」

一応、口元を隠し、そう笑顔でたずねてみよう。

ビョルン > ただ、魚の種類や切り身の形によっても骨の部位は違うのだろうが魚を解す箸遣いはじっと観察した。

座り直してから、促されるままに女の箸で魚を食べさせて貰う。
笑い声を聞けば、思わず口が尖りそうになるが今は堪える。

「よく、わからない。
 ほんの少し、塩気が濃いような気もする」

再び己の箸と茶碗を持って白飯を口に入れて咀嚼。
飲み下してから言い添えるように。

「あれは美味かった。
 甘い玉子焼き」

そして漬物とかいうものも、ご多聞に漏れず塩辛いようだ。

アイリース > 相手の反応。その一つ一つが、面白い。
いや、私としては別に、からかって楽しんでるとかそういうことはないのだ。
ただ、年下の男の子の反応というのは、見てて飽きないもので。

「そうですか。まぁ……焼き魚、というのも。
 魚の種類や焼き加減、塩か醤油かという食べ方含め。
 様々ですので。合う合わないはありますから」

相手の感想に、小さく頷きつつ。
次の言葉に、思わず小さく吹き出してしまう。
すぐに一度咳払いをし。

「かしこまりました。
 従業員達に、甘い方の卵焼きを作れるようになれ、と。
 命じておきますね」

卵焼きの味付けもまた、家庭ごとに違う食べ物だ。
なお、私は様々な卵焼きを作れるが。
私が一番好き、というのは。小口に刻んだネギを入れたものであるが。
相手の反応を見て、私は盆に乗っていたお茶を湯飲みに注ぎ、相手に差し出す。
塩の味を、洗い流してくれるはずだ。

ビョルン > 「慣れれば、塩辛いだけの味でもないのだろう。
 とも、思う」

焼いた魚やら味噌のスープやらにまだ親しんでおらぬせいもあろうと、そう発した。
漬物の塩味を濯ぐように大口で白飯を頬張る。もしかするとこれが、東国では正しいペースの食べ方やも知れぬ。

出されたお茶も飲みながら、夕食を食べ終われば。

「馳走になりました」

手を合わせての作法だけは御曹司めいていたやも知れない。
そうして食事という行事を終えれば、女の部屋ではどこか所在なく。

アイリース > 「ふふっ。ムリに慣れるものでもございませぬよ。
 ……とは言いましても。様々な食品に慣れておくのは。
 生き延びるに大事なことでございますけれども」

状況によっては、食べたいものが食べれない、とか。
食べたくないものしか食べれない、という状況もある。
なので、様々な味に慣れておくのは、サバイバルスキルの一つ、戸も言えるかもしれない。

「いえ、たいしたおもてなしもできませんで」

そう言いつつ、私は盆を廊下へと出しておく。
ちら、と見れば。相手がどこか落ち着かないような雰囲気。
そこで私は手を打ち。

「若様、お疲れではございませんか?
 よろしければ、私がマッサージなど致しますが」

……まぁ、この国のものとはちょっと違う。
東式の、少しだけ手荒いものではあるが。

ビョルン > 「善処する」

必要性と好みが上手に擦り合えば。
そうして女が一品は好きな味付けの物を出してくれるならば、苦にはならないのかもしれない。

食後のお茶を頂いたら、

「飯が余っていれば、夜食のオニギリ? も所望したい」

とろとろと気持ちよくなり寝てしまうことを予測してリクエストする。
上着を取ってネクタイを緩めて床へと転がる。
さてどうなることやら。

アイリース > 「ふふっ。ですから。
 ムリはなさらずとも。ゆっくりでよろしいかと」

生真面目な相手の一言に、微笑んでしまう。
こういうところが、この若者の良いところだ。

「でしたら、用意させておきます。
 ……さて、参りますよ……!」

相手が寝転がるのを確認し、私は指を鳴らす。

……その後、こちらの国の人間なら、関節技と思われるかもしれない。
そんなマッサージを十分に行い……。
相手が寝たのを確認して、私は部屋を出て、自らおにぎりをつくるのであった……。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からビョルンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からアイリースさんが去りました。