2020/04/22 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区/教会」にキリエさんが現れました。
■キリエ > 「失せろ。神は留守にしてる」
などという暴言で道を尋ねてきたのであろう訪問者を追い返す女がいた。
平素ならば絶対に着ることはないであろうシスターの装いにて、あろうことか煙草を吹かし、股を大きく開いてしゃがみこんでいる。
『みてんじゃねぇぞコラ』と目で周囲を威圧しつつ、教会の門の隅っこを陣取っている様は、シスターというより不良であった。
「はーだっる。んでこんなこと引き受けちまったかなぁ」
この格好で教会にいるのは本意ではなかったらしい。
煙草をスパスパしながら天を仰いで。
■キリエ > そもそも女は奉仕する立場というよりも、神の右腕に代わって魔を滅する人間だった。
人がいないからなどという理由で引っ張り出されてきたはいいものを、経験など皆無に等しく、そもそもやる気などなかった。
シスター服を着ていると声をかけてくるので、いっそ脱いでやろうかと思ったが、そうは問屋が卸さない。
仕方がなく門の隅っこという微妙な位置を陣取り、すぱすぱと煙草を吹かすのであった。
『薬だ』
などと言って煙草を吹かす、その顔に罪悪感などありはしなかった。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区/教会」にビョルンさんが現れました。
■ビョルン > 時を同じくして貧民地区、教会と並ぶ家。
「神に祈るより、食い扶持の心配をするんだな──」
祈りを否定し、なけなしの財産だという紙幣を数えて襤褸家の戸口を後にする者が居た。
護衛と別れれば帯刀手ぶらで、教会の前を通りかかる。
尼僧服で紫煙をくゆらす女を門の傍に見れば。
「何だ、仮装パーティーの会場か何かか?」
聞いてねェと首竦めて嘯き。
■キリエ > 生憎、魔を滅するのは専門だが、人の救済は専門外だ。
屈んで煙草の煙を昇らしていると、銀細工を思わせる青年がやってくる。
女は低い姿勢から青年を見、口から離した煙草の先端を揺らして灰を落とした。
「パーティーはお開きだ。ああ、神様に用事なら今は留守にしてるぜ。
こんなとこで貴族のぼっちゃんをお目にかかれるたぁ思ってもみなかった」
貴族なのではないかという推測を確定情報のように語ってみせ、相手のことをじっくりと観察する。
大まか後ろめたい職業であろうなとは思ったが。
■ビョルン > 「神がいないなら大乱交でもなんでも──たっぷりお愉しみでした、ってトコロかい」
言い返した女を珍しそうに好奇心の瞳で見下ろし、相手が続けた言葉にほんの少し口角を上げる。
「心の目で見ちゃ、貴族には見えないだろう。
心にもない嘘は止めな」
幾ばくかの興味を覚えて立ち止まる。
己がシガレットケースから出すのは紙巻型の薄荷糖だ。ゆえに火は点けぬ。
■キリエ > 不良シスターなどと思われるのは心外だったが、格好が格好だ。否と言ったところで信用もされまい。
女は短くなってきた煙草の先端と、次の煙草の先端を合わせて火を移すと、堂々と短いほうを道端に投げ捨てた。
「こんなクソみたいな掃き溜めにいいカッコできやがるのはおのぼりの貴族ぼっちゃんくらいなもんさ。
それで何を探しにきたんだ、アンタ。
女でも買いに来たかい」
見下されるのも癪だと伸びをしながら立ち上がる。
それでも相手のほうが一回りは背丈が高い。
女は指に煙草を挟むと、大あくびをした。
■ビョルン > こちらも見た目は似た格好、けれど紙巻は齧って減らす。紙ごと。
投げ捨てられた吸い殻、己の足の届く範囲ならその固い靴底で踏み消したろう。
そうして、女が続けた言葉には肩を竦めて。
「変な女だね、バッタもんシスター。
──貴族のボンが、刀なんざ下げているかな」
改めて相手側に腰へ下げた長い鞘を見せる。
「それに、掃き溜めだからこそ──だよ。
あんたは買ってもらいたげな口の利き方じゃないな──だったら、俺のことでも逆に買ってみるかい」
尼僧服に隠れてはいるが女は背が高くスタイルも良さそうだ。
強ち冗談そうにもなく軽く誘うように言葉を紡ぎ。
■キリエ > 踏み潰される吸殻がかさりと断末魔の悲鳴を上げた。
女は新たな煙草を景気よく消費しながら、相手が鞘を掲げるのを見遣る。
東方で見られる斬ることを目的としたそれだ。貴族が使うようなレイピアとは違うらしい。
「シスターってのは間違ってねぇのかもな………はぁ、こんな服、焼き捨ててしまいたいねえ。
生憎、金が無いんだ。“ぼっちゃん”はずいぶんお高いようで、買えやしねえ」
冗談のような軽口には、軽口を返す。
貴族のぼっちゃんから貴族が取れただけ、それも嫌みったらしく強調までして、ふふんと鼻を笑わす。
「それともなにかい、ぼっちゃんはタダで身売りもしてんのかい」
喉を低く鳴らし、ただでさえ低いハスキーボイスをますます低くする。
■ビョルン > 人を殺すのに特化した実用の武器、と通説が流布しがちな道具を下げる意味にはそれ以上特に言及しない。
尼僧服を悪く言う相手には頷いて。
「そうだね、きっと何も着ていないのが一番似合うよ──…。
高かろうが、値段だけは働くぜ──きっと。
あんたのこと、『一人の女の子』にしちゃうくらいには、心もひん剥いてやるが」
煽る言葉、淡々と告げて。
「タダはなしだ、証文取ってお支払いあるまで追いかけてやるがね──…」
相手へ視線を絡ましながら、一瞬にやりと笑う。
女の声のハスキーさがどことなく雰囲気をヒリつかせるように感じるが、心地よい。
■キリエ > 「言うねえ、バースディドレスも悪かないが」
煙草をチリチリと鳴らして、鼻から吐息を抜く。
バースディドレス、すなわち生まれたときに着ていたドレスのことだ。
これではまるで、と女はにやりと口元を緩めて、煙草を指先に挟んだ。
「証文だって、ははは、こいつぁ参った参った。
ぼっちゃんは借金取りを生業としていらっしゃる?
ああ、怖い怖い」
まるで口説かれているようではないかとにやにや笑いが止まらぬ。
あるいは、まるでではなく、実際に口説かれているのかもしれないがと。
一歩歩み寄り、顔を近寄せた。
「それじゃ買ってみようかねえ、ぼっちゃん?」
■ビョルン > 女の話のを聞きながら、薄荷糖を噛み続けている。
相手が流れるように言葉を返せば、一つ頷いて返す。
「人聞きの悪い。
このご時世、金融業と呼んでもらおうか。借りたものは、返さないとな?」
相手が己へ一歩寄れば、その腰を抱き寄せる。
指先で女の頬をつるりと撫でたらその手で頤を支えた気障なポーズで唇を重ねて食もうか。
「──商談成立。何処へなりと連れていきな」
そうして名前もまだ、告げていないことに気が付き。
「ビョルンだ、そう呼べ」
顧客に対しては存外なれど、険の取れた声音で囁き。
■キリエ > 抱き寄せられる。前に煙草を退避させることは忘れぬ。
唇を合わせられれば、こちらも仕草を返していく。男の背中に手を回して、鼻先の付きそうな距離感にて、瞳を覗き込む。
「キリエ、ただのキリエだ。
あいよ、“ぼっちゃん”。
そうさねぇ、この辺だと―――」
シスターが男を買ってどこかに連れ込むなどと、神様が知ればきっとお冠だ。
女は男を抱きかかえる、あるいは抱きかかえながら、教会から離れた廃屋にでも移動していくのだろう。
名前を知っているのに、ことあるごとにぼっちゃん呼びをしながら、だ。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区/教会」からキリエさんが去りました。
■ビョルン > 【移動後継続相談中】
ご案内:「王都マグメール 貧民地区/教会」からビョルンさんが去りました。