2020/03/04 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にシラトリさんが現れました。
シラトリ > 不釣り合い、というものがある。
騎士に棍棒、蛮族にレイピア。

夜の酒場、それも、冒険者どころか脛に傷がある人間から盗賊までを受け入れる貧民地区の酒場に、白を基調にしたメイドが一人。
これもまた不釣り合いでしかない。

「マスター、例のお話について。」

カウンターに1人で座りながら、マスターといくつか言葉を交わす。
情報屋としても名の通ったマスターの男は、非常に苦々しい顔をしながら酒と情報をすっと女に手渡して。

ウェイトレスに手を付ける前に帰れ、と吐かれる。
まあひどい、そんな女に見えます? と微笑と共に返す。

オッターモール家に飼われた狂犬こと、メイドのシラトリである。

シラトリ > メイド業務は一通りこなすこの女、年若くして足を悪くした主人に世界を語り聞かせる不思議なメイド。
吟遊詩人かのごとく、様々な世界を見聞きして、ただひたすらに面白おかしく、スリル満点に語って聞かせてどれだけの日が過ぎたか。

東に貴族の浮気があれば、行って噂を拡大し。
西に冒険者の痴話喧嘩があれば、どちらが勝つか賭場を開き。
南に美人のウェイトレスがいれば、夜に誘って連れ歩き。
北に商人の不正があれば、楽しく調べて噂を流し。

やりたい放題ウーマンがこの女である。
人は早くこの女を処さねばならないのだが、なんとなく彼女自身に金銭欲やら上昇志向、権力志向が無いことが良い方向にも働く。

シラトリ > 彼女自身が何かをする利害関係に無いのだ。
「楽しい」こと以外は。

また、彼女はふらりと街を出て行って、1か月くらい戻ってこないこともザラである。
そろそろ死んだか? が彼女を語る時の一言目。

そんな女は、くらーい酒場で酒を嗜みながら、周囲をくるりと見回した。

「マスター、今日はベッドが寂しいのですが、どなたが見た目麗しい方を一人ほどお願いできません?」

マスターはクッソ渋い顔をして、死ね、と言った。
シラトリには効果が無いようだ。

シラトリ > そんな彼女は出自は不明。どこから生えてきたのか分からぬ謎の旅人。
今はメイドだけど。

ダイラスの賭場を庭と口にする不思議な女は、死ねと言われても顔色一つ変えずに。

「ではお代わり。早く死ぬくらい美味しいものを。」

微笑と共にそんなことを口にするのだ。
マスターはしばらく無視していても、通りかかったウェイトレスの手をそっと取って、今日のお帰りはいつでしょう、なんて尋ねたりし始めるのを見れば、安いビールをどん、と彼女の前に出して。

シラトリはお酒は何でもいけるクチである。

シラトリ > 冒険者と共に寝泊まりして街から街へと渡り歩き、商人の家やら貴族の家やらで手伝いをしながら噂を仕入れ。
犯罪行為? 流石にそんなことは。

ちょっとしか。

「流石マスター、このお酒もまた人を集める琥珀色。
 良いお酒ですね。」

皮肉っぽく聞こえる言葉を本心からの微笑でかけて。
そんな彼女は女らしい身体つきをしていても、「なんじゃこいつ」と敬遠される。
ああ、寂しい寂しい、今日も一人寝ですか、なんて、マスターに絡む女。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からシラトリさんが去りました。