2020/02/01 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区・安酒場」にヴェルソートさんが現れました。
ヴェルソート > 冒険者や労働者が集う安酒場。
安物のエールの匂いが充満するそこに、ポロン…と竪琴の音色…音の源は丸椅子に腰掛けた隻腕の男。
はしばみ色のどこか艶のある風貌の片腕には、不思議な色合いの指揮棒が握られていて、それが宙をなぞるように振られると、どこからか楽器の音色が響いてくる。

「手を叩こう 歌を歌おう 酒を飲んで騒ごう
 星の金貨 月の銀貨 舞い踊る宴を♪」

弾むような、気分が高揚するような曲が、耳がジンとしびれるような歌声で歌い上げられ…自然と酒場の賑やかさが増していく。
酔いに任せ飲み騒ぐ安酒飲み達が、ノリの良い者は自然と手拍子や膝を軽く叩いて音を合わせ出して…中には声の響きに陶然とするものも、幾ばくか。

ヴェルソート > (歌声が響き、また静かになれば…おひねりで温まった懐に笑みを浮かべながら店を後にする男が居た…。)
ご案内:「王都マグメール 貧民地区・安酒場」からヴェルソートさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にセイン=ディバンさんが現れました。
セイン=ディバン > 【待ち合わせ待機中です】
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にヴェルソートさんが現れました。
セイン=ディバン > 「……っ……」

貧民地区の路地裏にて。うずくまる一人の男がいた。
壁に背を預け、荒い呼吸を繰り返している。
力なく腕を動かし、腹部へと男が手を添えれば。
ぬるり、とした感触と。痛みが全身に。

「……ぁ、の、ヤラァ……。
 ナメた、まね、しやがって……!」

怒りのままにか細く声をひねり出すも。続いて口にしようとした。
『ブッ殺してやる』の。ブッ、というところまでを呟いたところで。
口から、大量の赤が溢れてしまう。

事の起こりは、依頼を受けて魔物退治に向かったところから始まる。
何人かの冒険者といっしょに仕事をしていた男なのだが。
仕事が終わった、その瞬間に。とある冒険者に腹部を刺されるハメになった。
あわやのところで、転送呪文を発動したものの。座標の指定などできず。
こうして、貧民地区の路地裏に転がることになったのである。

「……ご、ふっ」

何かをしゃべろうとしても言葉が出ない。どうやら傷はそうとう深いようだ。
ベストとシャツの隙間を、見事に刺された。衣服には防刃性能はあれど。隙間を刺されてはどうしようもない。
男は、ずるる、と地面へと倒れ込むと。震えながら、胸元からポーションを取り出そうとする。
だが、既に手には力も入らず。霊薬の入ったビンは、地面に落ち、ころころと転がってしまう。

「……っげ、ぷっ」

毒づこうとしたら、また口から赤が漏れた。
回復呪文を発動しようにも、呼吸ができない。
男の視界が、だんだんと狭まっていく。

ヴェルソート > 「さて、と…今日も稼ぎは上々、っと……ん?」
そのへんの安酒場から、おひねりを頂いて出てきた男。今夜はどこにでかけようかと思案していた意識に、ふっと紛れ込む…血の匂い。

「なんだ、誰かまた喧嘩でもしたのか?…っと。」
ここではまあ、多少の揉め事や喧嘩なぞ日常茶飯事だと言っても良い。ならまあ、首を突っ込むのも好き好きなわけで…ゆらりと…路地裏を覗けばなんとまぁ…意外と酷い状態に少しばかり目をパチクリと。

「これまた酷ぇなぁ…おーい、生きてるか?…ほれ、薬落ちたぞ…って、アンタ…。」
暗がりで見えなかった顔が、転がっているポーションの瓶を拾って彼の手に握らせる事で腰に下げたランタンに照らされ…見知った冒険者だと知る。

「あー、とりあえずほれ、落とした薬と…とりあえず応急処置してやるから。」
とポーションを渡すと、ペルトに挿していた指揮棒を抜いて…一振りするとどこからか弦楽器の音色が聞こえてくる。
優しくゆったりとした音楽が、場違いな路地裏を満たしていく…。

『…ねぇ君は覚えている? 褪せた記憶の中で…君への想いをずっと ずっと胸に秘めてた…♪』
静かに過去に思いを馳せるような旋律と古代語で紡がれる歌声…彼の肉体に「過去」…五体満足だったときを想起させるようなそれが響いた肉体を、ゆっくりと過去…『怪我を負う前』へと回帰させていこうと…。

セイン=ディバン > 「……」

ひゅぅ、ひゅぅ、と。男の喉からか細い呼吸音だけが漏れていた。
閉じられる直前にまで細まる中。
ポーションを握らせられ、応急処置をされる。
耳に響く音楽、歌。
急速に痛みが薄らぐのを感じながら、男は、腕をゆ、ら、あ、り、と懸命に持ち上げ。
相手に対し、とある場所を指差す。

「……ぅ、ぁ……」

そこは、あまり客の入らないようなボロ宿であった。
どうやら、そこまで運んで欲しい、ということらしく。
男は、それだけを伝えると、ガクリ、とその場で力尽き。
……いや。その場で、気絶することになった。

ヴェルソート > 『僕は今も、覚えてるよ 君の声を覚えてるよ 君はまだ覚えてる? 僕のことを、覚えてる?』
ゆらりと、曲を1分程歌い上げれば、大体の傷はふさがっただろうか。

「…っと、とりあえず傷は塞がった、か。…ほんとに死に体だなオイ…ん、どうした?」
ふぅ…と息を吐き出し、指揮棒を軽く振れば周囲の演奏音は消えてなくなり。
傷の塞がった彼が何か伝えるように腕を上げれば、指差す先は…ボロ宿にしか見えないそれ…とりあえず、運んで欲しいということだろうか。

「おいこら、指だけ差されても……まあいいか、間違ってたとしても、ここで寝かすよりはマシだろ…よい、しょ、っと、重ぇ!」
一応自分も軽く鍛えてはいるが、装備一式身につけた男の冒険者は流石に重たい…隻腕ならなおのこと。
ぐぅ、とうめきながらも…悪いがずるずると半ば引きずりながら…示されたボロ宿へと入っていく…。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からセイン=ディバンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からヴェルソートさんが去りました。