2020/01/21 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にネレディスさんが現れました。
ネレディス > 貧民地区の大通り。夜更けにも雑多な人々が行き交う良くも悪くも活気に溢れた場であるが、その中でも特に目立つ姿があった。

それが目立つ要素はいくつもある。東洋風とも西洋風ともつかない美女であること。全身に豪奢な宝飾品を身に付けていること。そして何より、そのくせ裸とみまごうほどに肌を露出していること。
肩も、腕も、胸も、臍も、尻も、脚も隠せてはいない。面積で言えば水着といい勝負。特に胸などは下着をつけている様子もなく、首から掛けた前垂れ状の金飾りが辛うじて乳首まで掛かっているに過ぎない。要するにほとんど裸だ。

周囲からの驚愕や好奇の視線を浴びながら、特に気にする風もなくちゃらちゃらと飾りを鳴らして女は歩いている。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にエズラさんが現れました。
エズラ > 貧民街の大通りに面する露天酒場で杯を傾ける男が一人。
この数日は馴染みの娼館で用心棒稼業に従事していたが、店主がしばらく姿をくらますことになり暇を出された。
戦のない間は荒事に身をやつすことがほとんどであるため、さてまた新たな稼ぎ口を探さねば――そんなことを考えていると。

「……おお、なんだなんだ――」

ただでさえ騒がしい大通りから、一際大きな歓声が届いたので視線を向け――大半の者たちと同じく、大口を開けて唖然とすることになる。
絶世の美女――まずそう呼んで差し支えのない女が、扇情的な姿で歩いている。
しかもその表情には羞恥心のカケラすらなく、出で立ちが異なれば貴族か王族めいた気品すら備えている。

「おい、ありゃなんだよ――」

思わず席を立って、自分ももっと傍でその姿を拝もう、と歩み出した瞬間、これまた同じような考えを持った連中が後から後から押し寄せて――

「うわっ……!」

丁度、彼女の二、三歩手前に、転がるように投げ出された――

ネレディス > 「……あら?」

貧民地区の知り合い(ほとんどが娼婦やその客達だが)とにこやかに挨拶を交わしながら歩いていると、目の前に突然……華やかとは言えない男が飛び出してきた。女王の行く手を遮るなど、本来ならそれだけでも鞭叩きは免れぬ罪だが、ここは自分の国ではない。ならば、と、

「……そこのお方、どうかなさいましたか?」

ごく自然に、普通にと心がけて、目の前の彼に微笑み掛ける。
転がり出てきた彼に視線を合わせようと前屈みになると、首飾りが身体から離れて乳房があらわになってしまった。周囲はさらにざわつきだしたが、特に気にすることでもあるまい。

エズラ > 「押すんじゃあねぇよこのっ……お、おお……――」

どこの誰とも知れぬ男達に文句をぶつけようとしていた矢先――眼前には件の女の姿。
本来露わにしてはならぬ場所を惜しげもなく晒しているばかりか、やたらの品の良い笑みで微笑みかけている――

「ああおや別に――つうか、むしろその台詞はオレの台詞っつうか――」

しかしそこで、男の脳裏にひらめくものがあった。
ここ数日、詰めていた娼館の娼婦達が噂していた噂話。
やたらと美人で派手な割に、二束三文で抱かせる娼婦が最近話題なのだとか――

「……ははぁ、こりゃひょっとして――あんたが、いや、これじゃねぇな――「貴女様」が、最近ここらで有名な「女王様」で?」

その呼び名は、噂話をしていた娼婦達の口から漏れ聞いた、彼女の通り名。

ネレディス > 「まぁ……」

『女王様』という言葉を聞いた途端、表情がパッと明るくなる。自分が女王であり、尊い存在であるということは当然のことであり大前提だが、それを他人から認められること、そしてその認識が広まることは喜ばしいことだ、と思った。

「ええ、わたしはネレディス。エリレプトの女王です。突然目の前に飛び出してくるなんて、よほどの事情がおありなのでしょう、さぁ」

上機嫌になったからか、急に親身になりはじめた。進んで彼の手を取り、近くへ引き寄せる。

エズラ > 果たして、噂は真実であったらしい――
実際にこの目で見るまでとても信じられなかったが、なるほど、こうして間近に目の当たりにしてみれば、その出で立ちや立ち居振る舞いはそんじょそこらの貴族のご令嬢などより高貴ですらある。
しかし、その身を隠すものがほとんど皆無であるため、さながら彫刻の如く整った肢体が惜しげもなく常に衆目に晒されているにもかかわらず、こちらの腕を取って親身に話し始めるのだから、異様である――演技臭さも、やはり皆無なのだ。

「ははぁ、やはり女王様でしたか」

さていかに処すべきであろうか――たしか娼館の娘達の話では――

「……先ほどは大変失礼を。女王様のお姿を初めて目の当たりにしましたところ、そのあまりの美しさについ目がくらんでしまいましたもので」

男自身はおよそ高貴な身分とは無縁の立場であったが、軍事教練の補助として登城の経験があり、この手の話し方は一応心得ていた。
無論、彼女に比べて到底様になっているとは言えないのだが――

「――ついては、誠にあいすみません、暫しの間で結構ですから、何処かで看病などしていただけますと、これに勝る喜びはございません……――」

などと口にした後、ふらふらと頭を振り、まるで熱に浮かされているかのような仕草。

ネレディス > 「まぁまぁ、それは大変ですわ……」

『美しさに目が眩む』という表現は知っているし、自分もその手の言葉で称えられたことは何度となくあったと記憶しているが、まさか本当に立ち眩みを起こすことがあるとは……と、何ら疑うことなく驚いていた。
であれば、彼が倒れてしまったのも自分の罪だ。美しすぎるというのは時に毒なのだと思いながら、彼の手を取ったまま、

「近くに私の宿があります。そこで休むと良いでしょう。私に出来ることならなんでもいたします」

病人の世話などこれまでしたことはないが、罪を犯せば償わなければならないのは女王とて変わらない。その断固たる使命感によって彼の手を引いていった。

エズラ > 彼女の言葉とその後の態度に、我ながら内心驚愕している男。

「おお、なんという幸運――ありがとうございます、女王様――」

まさか本当に上手くいくとは――という気持ちをよそに、手を引かれるまま彼女の後へ続くのであった――

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からエズラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からネレディスさんが去りました。