2020/01/10 のログ
■スミ > 石と店主を交互に見て、ううんと唸ってもう一つ、粘ろうかと口を開きかけた時。
店へと、新たに足を踏み入れる者の気配。
薄暗い店内に一瞬外の光が差し込んで立ち並ぶ商品を照らし出し、また薄暗い闇に沈む。
思わず振り向けば、新たな登場人物はなんだか黒づくめの人影だ。
ぱちぱちと緑の瞳が瞬いて、それがようやく黒い毛皮の獣人だと了解する。
その間に交わされた、獣人――――おそらく男性――――と店主の会話をを耳に捉えて、赤毛の女は少し首を傾げた。
どうやら、この人物に店主は頭が上がらないらしい……
そうやって男と店主をまた交互に見て、自分が指さされるとまたぱちぱち、と緑が瞬きをして
その紅い唇がにんまりと笑い、次には滔々と言葉を紡ぎ出した。
「やあ!取り込み中と言えば取り込み中かな。
ちょっとこの石を買い取ってもらおうと思ったんだけど、中々金額が折り合いつかなくてね。
割と大き目の魔法石だから結構な値段つけてもらってもいいと思うんだけど、出どころがちょいとあやふやなもんで、足元見られている所だよ。
そんなところで長引きそうだから、もしかしたらキミのほうが先に用事を済ませたかったら喜んで譲るよ!
私はその間、他の店にでも持ち込んでみるから」
言い終えると、女は忙しなくそそくさとカウンターの上の石をぼろきれに包みに掛かった。
■黒須 > 「おい、俺は別に用事はねぇんだが?」
(忙しなく荷物を包む女性の方を見る。
灰色をした大きな目が見下すように見ながら大体の事情を把握した。
どうやら買取の話の様であり、その交渉で少々もめ合っていたんだなとわかった。
そう思うと、再度店主の方を見る。
そうすれば、店主は冷や汗を額にかきながらヘコヘコとした様子で手をすり合わせる。
そして、次の瞬間には、カウンターに大きな音が鳴る。
何かが落ちる音であり、その正体は麻袋一杯に詰められた大量の金貨であった。)
「なぁ、おやじ…俺からも交渉だ。
この女の商品を、俺は今から買う…それも、この女の提供する値段の倍だ。
そうすれば、半分はお前の手元に来る…それでどうだ?」
(5000ゴルドと言えば、お互いに5000。更にその先なら、お互いに半分ずつの値段が入っていく。
そうなれば、互いにデメリットはないため、悪い話ではないと思った。
無論、この店主には拒否権はなかった。)
『…あ、ああ!そそ、そうですね!それが一番良いですよ!うんうん!
お嬢さん、交渉だ!いくらで売りたい?6000か?7000か?!』
(先ほどまでの強い様子はなく、完全に黒須に従っている様子の男は急いでスミを止めて、交渉を続けようとした。)
■スミ > 見下ろして来る灰色を、きょとんとした表情でぱちぱちと瞬きながら緑が見返す。
その視線は彼の、表情を、頭を、体つきを一度攫って、また紅い唇がにまーと笑った。
と、次の瞬間
「ひゃっ!?」
店中大きく響いた音に思わず小さく跳び上がる。
鳴り響いた音色から察するに、黒ずくめの男がカウンターに置いたのは、どうやら大量の金貨だ……
「…ほぇえ……」
見た事のない量のそれをぽかん、と口を開けて眺めて
また男と店主の思いがけないやりとりをぼんやりと聞き流す。
そうやって店主から声を掛けられると、びっくりした様に目を見開いて店主を見て、次いで男を見上げて唇をぱくぱくとさせて。
「ああ、ええと…私は実際、1000もあれば十分なのだけれども。
ええとええと、でもそうするとキミ、随分損をするよ?
幾ら何でも10000の価値はこれにはないと思うし。
ああ!そうか成程では2500で手を打とう!
それならキミが払うのは5000だし、キミはそれ相応のモノを手に入れられるわけだ」
途中、良い案を思いついたとばかりに手を叩いて。
それから続いて男に向かってまくし立てると、にっこりと親父の方を振り返った。
「そういうわけで、彼にお買い上げ頂くということで。
せめて包装はそちらでやってもらって良いかな?
わたしは今手持ちがこのぼろきれしかないから」
そう言うとずい、と店主のほうへと石を押しやって、くるりと黒ずくめの男を振り返った。
その顔には言わずもがなの満面の笑み。
「やあ助かったよ!これで買いたかった本が買えるな。
キミも損はしないと思うな!多分、磨きをかけてそれなりに整えてあげれば元は取れるんじゃないかな」
女は頬を紅潮させ、ほくほくと笑いながら男へとぺこり、と赤毛の頭を下げた。
頭を上げた時には、眼鏡は鼻の頭までずれている。
■黒須 > (店主は黒須の顔色を伺いながら作業を進めようとした。
軽くチラ見したその行動も睨みの様に思われ、ビクリと震えると急いで作業を取りかかり、ぶつぶつ交換。
魔石を手に入れては、5000分の金貨を交換した。)
「あ?別に…俺は礼を言われるようなことはしてねぇよ。」
(貧民地区とは思えない綺麗な包みをした魔石を眺めながら、なんとなくと言う。
鼻にまで眼鏡がずれているその様子を見ては、手を伸ばし、鼻掛けの部分を指先で押して元の場所に戻そうとする。)
「それにだ…俺が金を支払ったのは優しさじゃねぇ…今夜の相手にするにはちょうどいいと思って、お前も一緒に買おうかと思っただけだ。」
(ニヤリと笑う黒狼の獣人。
ゲスイ顔をした笑みを浮かべては少し背中を低くして、誘うような口調で聞いた。)
■スミ > 言った通り、店主が奇麗に包んでくれたのを満足げに眺める。
眼鏡を直してくれる手に視線が一瞬寄って、またぱちぱちと瞬いて、にまあと笑って緑が男を見上げた。
「ありがとう
いやあ助かったよ!希少本の古書だから兎に角早めに手に入れたくってね。
しかしこんな行幸に巡り合えるとは……」
にこにことそのまま言葉を継ごうとして…男の表情に表情を曇らせると、不吉な笑みに思わず後退り。
「へ、えええ?
ええ…とだね。多分、丁度良くはないんじゃないかな……
生憎と、そちらの方はあんまりその、勉強不足で……
ああ、夜通し話をしてくれというのなら役に立てると思うな!」
視線を泳がせ、へどもどと言葉を返す。
ちらと視線が合ってしまえば、誤魔化し笑いをへらりと浮かべて。
「そのう……とても感謝はしているのだけども。
他の方法を提供してもらえないだろうか………」
本を買える、と思ってしまった。
もう『お金を返してなかったことにする』、なんて頭に浮かぶこともなく。
■黒須 > 「そうかい、欲しいもんが手に入るんだったらよかったんじゃねぇのか?」
(かなり喜んでいる少女に言う。
よほど欲しい物があったんだろうと思い、まぁ、喜んでくれたなら良いんだろうなと思った。)
「冗談だ…。
無理に相手をしろとは言わねぇよ。
それに…生憎、俺は頭が弱いんでね…勉強相手なら他を相手した方がいいだろうな?」
(貧民地区では学問など全く触れておらず、喧嘩と金貸しの仕事、あとは抱き方ぐらいしか脳になかった。
体勢を戻せば懐から煙草を取り出し、蒸かして吸い始める。)
「他か…?
…じゃあ、酒を奢ってくれ。うまい酒を一杯な…。」
(横目で女の方を見て聞く。
他の返しなら、やはり酒が一番だろうと)
■スミ > 『冗談』と聞こえると、数度また瞬きをしてほおーと胸を撫で下ろす。
顔を上げた時には、また元のにんまりとした笑みが口元に浮かんでいた。
「いやあ済まないねえ。ソッチの手練れだったら喜んで付き合えたんだろうけども。
そうかな?さっきの店主をやり込めたような手口なんかは、中々かしこいやり方だったと思うな!
私だって頭がいい方じゃないさ!下手の横好きってやつで、色々長い事取り組むのが好きなんだ」
やり取りしているうちに、店主が女の取り分を麻袋に入れて寄越す。
カウンター越しに受け取ると、流石に片手では取り上げられず、よっこいしょ、と肩に担ぎ上げた。
それからふらっとたたらを踏みつつ、煙草をふかし始めた男を眩しげに見て。
「お酒かい?良いけれども、申し訳ないがこの辺りは不案内でね。
他の地区まで行くのは手間だろうし、キミが知っている良い酒場があれば、そこで奢ろう!」
にこにこと笑いながら、麻袋を担いだ手とは反対の手で男の背中をバシバシ叩く。
割と遠慮ないので、多少痛いかもしれない。
「最もその元手も、もとはキミのお金だけどね」
じゃら、と麻袋を揺すると、悪戯っぽく笑った緑が男を見上げた。
■黒須 > 「ま、俺が慣れているから、そっちは何もしなくても俺が普通にリードできたがな?」
(素人であろうとも、こちらが慣れているために一歩的に進める事はできるが、そこまで乗る気ではないのでないのであるならば、仕方がないで片付ける。)
「どこがだよ。
ただ、倍の金を払って終わらせただけ、俺が何もしないんだったらそれでだけで終わった話だろ。」
(どこも賢いとは思えない、たまたま金を持っていて、通りすがりに居たからやっただけであり、目的は夜の相手だった。)
「ん、ま、貧民地区暮らしだからわかるが…ここの酒はさほどうまくねぇな。
行くんだったら、平民地区の酒場だな…。」
(思いっきり叩く少女の手は黒須にとってはどうとでもなかった。
平気な顔をし、叩かれながらも煙草をくわえて軽く靴先を地面にたたきつけて少し歩く。)
「その金で構わねぇよ。
で?どうすんだ?平民地区に行くのか?」
(煙草を握りつぶして、灰にしては風に乗せて捨てる。)
■スミ > 「あっはっは、キミも趣味が悪いなあ」
男の言葉を冗談と思っている。
また続いてバシバシと叩いて、よっこいしょ、と肩の麻袋を担ぎ直して。
外へと出ると、もう夕方の日差しが狭い路地に降り注いでいる。
きょときょとと左右を見てから、紡がれる言葉に男を見上げた。
「いやあ、あの店主と渡り合うのは私には骨だったからね。
あの手合いはとことん足元見て来るから困るんだ。
平民地区?結構キミ、色々と詳しいんだな!
もちろん、キミさえ構わないなら喜んで行くとも!
こう見えて外を歩くのは慣れてるからね。
半日くらい移動に使ったって大丈夫さ
それとも馬車でも捕まえた方がいいかな?」
単なる『親切で危篤な人』と思い込んでまくしたてる。
男の本来の目的を知っていたら、多少の罪悪感と共にもう少し『夜の相手』方向で悩んだかもしれない…
そうやって男の後についていく姿勢で見上げていたが、煙草を握りつぶす仕草を見てから目を丸くして、少し首を傾げる
「ええっと
今の煙草を何処ぞにやってしまったのはどんな手品かな?
そういえば名乗ってなかった!
私は『スミ』と呼んで欲しい。
キミは?ミレー、ではなく獣人、だよね?」
恐らく
男は目的の酒場に着くまで、或いは着いてからも
この調子でまくし立てられて、ある意味『夜の相手』にはなったかもしれない……
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からスミさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」から黒須さんが去りました。