2019/10/09 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」に文月 葵さんが現れました。
文月 葵 > 「…はぁ。」

その日、葵の薄い唇からは深い嘆息が漏れていた。
行けども行けども見慣れない建物。
通ったことのない道。
真っすぐ進んだはずが気が付けば元の場所に戻っている。

一日非番を仰せつかった葵は城を飛び出し、街の中を散策していたのであった。
普段は通ることのない路地を歩き、そろそろ帰ろうとしたのだが何故か一向に進まない。

「はて。 余はこれほどまでに方向音痴であったかの。」

扇子を広げ、口元を隠す。
困ったことが起きた時の葵の癖であった。

「狐にでも化かされたのかのう。」

既に小一時間ほど歩き回り、脚が重くなってきた葵は廃材の山に腰掛け一休みすることに。

「温かい飲み物でも欲しいのう。 喉が渇いてきたわ。」

文月 葵 > その後も慌てることなく、のんびりとした時間を凄す葵。
城に戻れたのは、迎えの兵がやってきてからのことであった。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」から文月 葵さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にローズマリーさんが現れました。
ローズマリー > ―――――ゾクゾクする。

夜を待つ必要も無く、昼でも既に女の一人歩きなど物騒であろう、貧民地区の一角。
細く枝分かれした裏路地を少し歩けば、背中に、腰に、胸元に、不埒な視線が絡みつく。
それらを感じれば僧衣の下の肌が粟立ち、けれど己にとって、それは素敵な感覚だった。

見知った場所では無いけれど、己が深みに嵌りつつあることは解る。
きっとどんどんひと気の無い方へ、あるいは袋小路へと向かっている。
背後から追って来るのは、遠目の視線ばかりではないかも知れず―――――

「……良いわ、……もっと、見て頂戴」

ヴェールの裾で口許を覆い、俯いて怯えた風を装いながら。
己は待っている、期待している。
此の身を絡め取り、強引に奪い去ろうとする誰かの腕を。
―――――ともすれば下腹がじわりと疼いて、早歩きの足許がふらつきそうなほどだった。

ローズマリー > ―――――ふわり、漆黒の僧衣の裾が揺らめいた。

明らかな袋小路へと消えて行く、己の背後に影が差す。
振り返ってしまえばきっと、笑み歪む口許に気付かれてしまう。
竦ませた細い肩に誰かの手が掛かる、其の瞬間までは、
か弱い獲物の体を崩さずにいよう、と――――――。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からローズマリーさんが去りました。