2019/09/11 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にカーレルさんが現れました。
■カーレル > 人気のない裏路地。倒壊しかかった建物の影で幾つもの足音が遠ざかっていくのを確認すれば、ふ、と短く息をつく
富裕層、中でも貴族の住まう一角から、薄絹の掛けられた鳥籠を抱えての全力疾走は流石に堪えるものがある
貴族の私兵が追手ともなれば、尚の事…それでも、師であったり、暴竜であったりに追われた事を思い出せば、
なんの事はないただの鬼ごっこのようなものであったが
「それじゃあ、さようなら、名も知らぬ小さき人」
貴族の邸宅より盗み出した鳥籠に掛けられた薄絹の取り払い、格子状の小窓の鍵を開く
中には蝶の羽を持つ小人が囚われていて、小窓を開けば、淡く光る燐光を漂わせながら飛んでいった
これまでこの街でも、この街の外でも、様々な仕事を請け負い熟してきたが妖精を救い出したのは
初めてのことであったし、それ自体、眼にすることも初めてであった
「…実在してたのか、お伽噺やら吟遊詩人の世迷い言だと思ってたわ」
やれやれ、と倒壊しかかった建物から出て、妖精が消えていった方へ視線を向ける
依頼は解き放つまでの事、この先、あの妖精がどうなるかは判らぬがとりあえずの仕事は終えた
身体に取り憑く精霊が頻りに『さわりたい』だの、『美味そう』だのと語りかけてきた気がしたが、
変なものを食うと腹を壊す、と宥めるのが大変だった
「世捨て人の自称、賢者が言うには昔はこの辺りにも幾らもいたって言ってたが眉唾だな…」
とっくに見えなくなってしまった妖精
最後にもう一度、消えていった方向を一瞥すれば、懐から煙草を取り出し火を灯す
未だにこの辺りを彷徨いているであろう貴族の私兵に気をつけながら通りに出れば紫煙を吐きつつ歩き始めた
■カーレル > こういう仕事をしていると希少な物を目の当たりにしたり、奇妙な体験をする事も時にある
思い出そうとして思い出せるようなものでもないけれど
通りに出て周囲を警戒するように伺いながら慎重に進んでいく
やがて、泥棒市の立ち並ぶ人通りの多い場所まで来れば、人々に紛れるようにして姿を消した
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からカーレルさんが去りました。