2019/07/12 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にロロさんが現れました。
■ロロ > (最初の仕事は、非常に簡単な物だった。)
――返して貰うよ?…これに懲りたら。手を出す相手は選ぶんだね。
(とある豪商から。スられた財布を取り返して欲しい、そんな頼み事。
幸い充分に臭いが残っていた為。犯人を直ぐに追い掛け、此処で追い付く事が出来た。
もう一つ運の良い事に。スリはあくまで、スリでしかなく。精々手先が器用で逃げ足が速いだけ。
…決して。危険極まりない、物騒な存在とも言えなかった。
斯くして、ちょいと刃物をちらつかせれば。腰を抜かし、財布を投げ出し、這々の体で逃げていく。
宙に放っぽられた財布をキャッチして。)
で? 金は良いから、証文と、印章だけは。取り返してこい……ね。
(商人からすれば。財布に入る程度の金銭など、正しく端金なのだろう。
現金は好きにして良いから、という破格の条件に、内心ほくほく。)
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にメイラ・ゼファーさんが現れました。
■メイラ・ゼファー > 「恐喝の現行犯、だなぁ?」
咎め立てるような言葉とは裏腹に、喜色の色濃い声。
人を追うだけの精度を持つ鼻ならば、鎧や剣に染みついた血の臭いを嗅ぎ取るだろう。
或いはその鎧に収めた身体が纏う、退廃と悪徳の――女の臭いまでも。
その女は警告すら無しに腰の長剣を抜き、大股に、足早に、ミレーの娘へと近づいて行く。
獣を迂闊に追い詰めれば手酷く噛まれるが世の常ではあるが、
まるでそういう憂いなど抱かぬように、歪んだ笑みすら唇に浮かべて。
「動くな。王国騎士団の者だ、抵抗するなよ。
……いや、抵抗してくれても構わねえか。ちょっと痛めつける箇所が増えるだけだ」
剣の切っ先を少女へ向けて、悪辣な口調にての脅迫。
■ロロ > ――何言ってんのさ。
(その声は、差程遠くない所からの物だった。
這々の体で逃げていく男とすれ違い、入れ違い。声の主なのだろう女が、此方に歩み寄ってくる。
振り向けば肩を竦めて。それはもう大袈裟に、嘆息を零してやれば。)
取り返したのはこっち。っていうか、持ち主に、返さなきゃだから。
何なら着いて来て、供述調書でも取ってくれる?犬の…おまわりさん?だっけ?
(公僕を、犬に例えるのはお約束だが。言っておいて少女自身、半分首を傾げていた。
何せ相手は。官憲をこそ名乗っているが、そんな臭いは欠片も感じない。
寧ろ取り締まられる側、捕まる側、其方を思わす……先日の不死者の女性とは異なる、比喩的な意味での腐臭を宿していた。
…その臭いが、鼻に付く、と。さも言いた気に鼻を鳴らして、次の瞬間。
身を翻して片脚が跳ね上がる。始めから遠慮の欠片も無い、顔面を狙う後ろ突き蹴りが。迫る女へと放たれるか。)
■メイラ・ゼファー > 「口の利き方がなってねぇメスガキだ。
いけねぇなぁ、大人に対する敬意ってもんが――」
平然と距離を詰め、平然と敵意を露わにする。
肩書きばかりは真実。ただし備わる心根は、騎士などという在り方とほど遠い箇所にある。
成程これが真実善良な人間ならば、少女の言う通り。
取り調べ、事実を明らかにし、誤認にて剣を向けた事を謝罪するのだろうが。
「――ごぉっ……!」
後ろ蹴りは案外に、容易に的を打った。
鼻っ柱を斜め下から押し潰すような角度で、十分な速度を以て。
並大抵の相手ならば尾骨を砕かれ、血で呼吸を詰まらせ蹲る。そういう類いの蹴りだった。
が。手応えがやけに浅いと、少女は知るだろう。
確かにその足は、女の鼻を捉えた。だが、十分に押し込むより先に、女の上体が後ろへ傾いていた。
故に与えた衝撃は、幾分か鼻を赤くさせ、数分ばかり続く傷みを与える程度。
そして、同時に――女は、手にしていた剣を、此方もまた躊躇無く振り上げていた。
狙いは踵の腱。自らの鼻を砕かんとしたその足を、切り落としはせぬように、
だが暫くは十全と動けぬ程度の手傷を負わさんと。
……女を狙う悪党は、〝楽しみ〟の為、あまり傷を負わさずに相手を捕えたがる者もいる。
この騎士を名乗る悪党はどうも、そういう手合いではないらしい。
■ロロ > メスもガキも否定しないけど――最後は、ね。
敬意?其奴は、歳だけで決められないって、の――!
(振り上げ、突き蹴り、だが舌打ちせざるを得ない。
爪先に感じる反動は、酷く軽い。上手い事後ろへと、重みも、威力も逃がされたか。
これなら先の男へ向けたと同様、刃を出しておくべきだったかと――)
っ、っ!?っぎ、 ぃぁ゛ぅ!?
(次の瞬間。否、寸毫の間すら無い侭に。痛みが弾けた。
此方が刃を抜いていなかったのに対し。女は端から抜剣済みであり。従って、直ぐ様にそれが振り上げられた。
仕込みの備わる重いブーツが、明らかに硬い感触、違和感じみた手応えを。その刃先へと伝えるのだろうが。
それでも…殺しきれる物ではない鋭さが。少女の足首に、浅くはない傷を刻み込んでいた。
断ち切れると迄はいかずも、傷付いた腱は、自重を支えるにも到らない。
蹴り脚が血を噴きながら落ちると同時。逆足もまた女を追い、横薙ぎに胴を払おうとするものの…
軸足が定まらない。蹌踉け、その場に崩れてしまう有様では。二撃目は届きもしないか…当たったとしても、胴鎧に弾かれるだけ。)
………… っ゛……! っつ、ぐ…ぅあ……
(その上。支えきれない自重を掛けられ、傷は更に大きく血を零す。
噛み締めきれない歯の根の隙間から、澱んだ悲鳴を滲ませつつ。その場に膝を着かざるを得なかった。)
■メイラ・ゼファー > 躊躇無く刃を振るう人間は、時に、どんな達人よりも恐ろしい。
ましてこの女は、その力量のみは肩書き相応であった。
切り落とさぬよう、と加減した分だけ刃は浅く、完全に脚の動きを奪うまでは至らぬ斬撃。
その手応えより、相手の仕込んだ武器の性質を理解。にやついた顔が少しばかり真剣なものに変わる。
次の、胴を狙う蹴り。体勢は崩れ、鎧を狙う不完全なもの。
それを油断することなく肘で打ち落とし、膝を着く少女へと肉薄。
「生意気抜かすんじゃねえぇっ!」
隠しもせぬ怒気と共に、右足が振るわれた。
固い鎧の爪先を鳩尾へと叩き込まんとする、野良の喧嘩の為の蹴り。
鍛えている相手と見たが故に、〝それでも〟動けなくなる程度には、体重と速度を乗せて。
腹筋の上から横隔膜を貫くような、容赦の無い一撃。
それでも動きが止まらぬなら、もう一度打つだろう。
それでもまだ動くならもう一度――
少女が自らの意志で身体を支えられぬようになるまで、その暴虐は止まず、降り続ける。